そんな世界に転生したら俺は神様にだって……57
「……分かりました。僕も、可能な限り協力します」
渋々口から出した俺の返事に、マキラも納得した様子だ。
「そうだろうなぁ。お主らは、もう手がかりがないから、我にも縋る思いでここにいるんだろう?」
こちらの足元を見るマキラの発言に、改めて立場の弱さを感じる。
ふと、隣に座るユウナに視線を向けると、彼女もそれに気づいたようで、優しい笑顔を浮かべて目を合わせてきた。
「マルコ様……これは『でえと』というものですよね?」
「……ぶっ!!」
予期せぬ発言に思わず吹き出してしまった。ユウナさん、まさかそんな呑気なことを考えてらっしゃったの……?
これにはマキラも、体を震わせて笑いを堪えている。
「そ、そうか……。いや、確かにその通りだぞ……! それにしても、横の男は人の身でありながら、我よりも乙女心が疎いと見えるな……!」
ユウナのマイペース発言に乗っかって、俺を小馬鹿にしてくるマキラ。魔王神にまで乙女心への理解を揶揄されてしまうと、俺は男として相当低いところに位置しているみたいだ。
だが、今のユウナには、それくらい気楽に過ごして欲しい。自分の命がかかっているとか、それを国王を始めとしたヴァーレ国のみんなで助けようとしてるとか、重く考えて欲しくないと思った。
「……よし、それではあの男を呼んでも良いぞ」
ある程度話がまとまったと思ったのか、マキラはレオンの入室を許可した。
俺は部屋の扉を開け、近くに控えているであろうレオンに声をかけようとした。
思った通り、レオンはメイと一緒に、部屋側の壁に沿うようにして待機していた。
「……楽しそうな談笑が聞こえてきたよ。話は終わったのかな?」
レオンの爽やかな笑顔は、それを決して皮肉だと捉えさせることはなかった。部屋を出る際の苦い表情は、既に消えている。
「……うん。マキラが、部屋に入っても良いって」
「そうか、ありがとう。……メイは引き続き、外に待機していてくれ」
メイの気合いが入った返事も聞いていたのか、すぐさまレオンは部屋に戻った。
俺とレオンが部屋に戻ると、マキラが何かをユウナに伝えているようだった。
「ユウナ姫、お待たせいたしました。……お体、大丈夫でしょうか?」
部屋を出てから、そして今、俺が目を離した隙に、マキラに何かされていないかを確認する。
するとマキラは、少し不満そうに呟く。
「我は何もしとらん。……それにしても、随分と早く戻ってきたな。姫君と二人で談笑しようと思っておったのに……」
「気分を害されてしまったら申し訳ございません。姫に何かありましたら、私の首も無事では済みませんから」
レオンが言うと、マキラも納得してくれたのか、それ以上は無礼を指摘しなかった。
「レオン、実はさっき────」
「マルコ、それを口にしてはならんぞ」
先ほどの話をさらっと報告してしまおうと、さり気なく話を振ろうとしたところ、マキラに牽制されてしまった。
「せっかくそこの二人だけに話したというのに、お前という奴はとことん野暮だのぅ。そんなんだから女子に嫌われるんじゃ、この唐変木がっ!」
あまりにも強い指摘に、俺は膝から崩れ落ちそうになる。
「……彼は仲間思いの良い奴なんですよ。今のも、私を仲間外れにしないようにという気遣いです。淑女の扱いについては……仰る通りですがね」
レオンがフォローしてくれるも、助けてくれたのか、後ろから殴ってきてるのか分からない。
「そうだのぅ……ただし、先ほどの話をお主に伝える訳にはいかん。……我の見ていないところで、などと考えるでないぞ? 我の見ていないところなど、この世界には無いのだからな……」
それでも、マキラは最後までレオンへの報告に、これでもかと釘を刺してきた。
廊下でさっさと話してしまえば良かった、なんて思ったが、それはそれでマキラの怒りを強く買っていたかもしれない。
結局のところ、俺はユウナと二人で、誰にもバレずに神穴へ向かわなくてはならないのだ。




