そんな世界に転生したら俺は神様にだって……51
次の日の朝は、朝食のテーブルでライラと同席することはなかった。
彼女が朝食の時間を故意に前後させたのか、はたまた偶然かは定かではないが、内心ホッとしている自分もいた。昨日の今日で、一体何を話せば良いのやら。
謝るのもなんか違うような……いやいや、こういうのは悪い事をしてなくても、相手に不快感を与えたことを謝る、それは決しておかしいことではない。
だが、彼女を探し出してまでするのはどうだろう。彼女も今は、俺の顔なぞ見たくないかも知れない。
「どうしたんだい、マルコ君? 何か……考え事かな?」
巨大な机と、それ相応の豪華な椅子に座るユージオ国王が、俺の顔を窺っていた。
「あっ、……すみません、少し別のことを……」
目の前に国王様がいてボーッとしてしまうとは、余程昨日のあれを、引きずっているんだな、と実感する。
朝食を終えた俺は、国王の部屋へと呼び出された。ユウナの呪いについて、報告を受けたいということだ。
通常の報告は、きっとレオンが必要に応じてしているはずだが、俺と二人で話せることもあると、そういった配慮がされているとみた。
目の前でこんな気の抜けた態度を取られていても、国王は何のお咎めもなく笑顔を浮かべていた。
「いやいや、ただでさえ君には色々と考えてもらっているからね。それに、こう見えて私は子供を持つ身、悩みがあるかくらいは分かるつもりだ」
そして、国王は少し身を乗り出すようにして、俺を見つめた。
「それで……どうだい? 私の娘に関して、何か分かったことはあるかい?」
「それが……まだ……」
俺の回答に国王は、「そうか……」と落胆した様子で、背もたれに寄りかかった。
『魔王神の一件については他言無用、ユージオ国王にも今は報告しないから、みんな頼んだよ?』
レオンからは口止めされていることもあり、何を話して良いかを判断し切れない俺はそう答えるしかなかった。
うう……、胃が痛い……。何も力になれていないことを痛感する……。
「……そ、そういえば、メイさんとライラさん、お二人は国木田鞠さんと、どのような関係だったんですか?」
国王に何かを続けられる前に、何か話し出したいと思った俺の口から、そんな質問が出てきてしまった。
以前、国王からこの話をされた時には、これを本人たちの知らないところで聞くのは不躾だと思っていた。
ただ、これがヒントになることも考えられる。何より、ライラに本当の事を伝えることの、判断材料にもなるかも知れないとも思った。
「そうだね……、これが何かのヒントになれば幸いだ。……まずメイ君だが、彼女は娘の学生時代の同級生だ」
同級生、やはり俺のようなアイドルとオタクでは比較にならないほど、たまりるとの関係性が強いな。
「娘と彼女は、中学校が同じでね。放課後も何度か遊んでいるのを、見た覚えがあるんだ。勉強が得意で、高校からは別々だったが……」
あのメイが、国木原たまりの同級生というのも、何とも不思議な話である。勉強が得意……魔術師としてヴァーレ国王軍にいるところとか、面影があったりするのかな?
しかし、たまりるについてのプライベートを知る術は無かったし、俺のオタク価値観的には、なるべく耳に入れたくない気もする。
「そしてライラ君は……彼女は、娘が保育園の時の先生なんだ」
「────ぶっ!!?」
思わず吹き出してしまった。
「……いやっ、ごめんなさい! 違います! そのっ、あまりにもイメージ通りだったと言いますか……!」
まだ何も言われていないが、それでも先に言い訳が出てしまった。
ロッカ村の聖職者として、村人全員から愛されるライラの保育士は、さすがに解釈一致過ぎる。
「確かに、彼女は村でも評判が良いらしいね。娘は……鞠は、小さい時は人見知りで、随分と手を焼いたよ。保育園では、彼女をとても気に入っていたんだ」
ライラも、メイと同様に、たまりるの人生に関わっているようだ。それにしても、親御さんから聞く推しの幼少期エピソード、濃度がエグすぎる。俺みたいな並のオタクでは受け止めきれないぞ。
それでも、国王はどこか嬉しそうに溢した。
「鞠の話をするのは、本当にいつぶりだろうか……」
何故かは分からないが、どうにもその一言が、俺の頭に残ってしまったのだった。




