そんな世界に転生したら俺は神様にだって……46
メイは、一つ目の魔物を見るや否や、即座に詠唱を始めた。
「白魔法────光包支糸っ!」
暗闇から発現した輝くリボンのようなものが、一つ目の魔物をその場に縛り付けた。
「…………っ!!」
「っ大丈夫です! まだ祓いませんっ!」
俺の反応を感じ取り、メイはすぐさま俺に告げる。言いたいことは分かっている、と。
「まだ祓いません、が…………国王やユウナ様に近付き過ぎています。もしも何か危害を加えようとした時に、どこまで対応できるのか……」
メイが緊迫感を持つのも無理はない。ここは完全にヴァーレ城の敷地内、そこに魔王神マキラの使いの魔物が現れているのだ。
俺とマキラが戦い終えた時には、ヴァーレ城を模倣して作られた魔王城は大破し、完全に瓦礫となっていた。
今、目の前にマキラが現れたとしたら……? 考えただけで寒気がする。
一つ目の魔物が空に拘束され、俺たち二人が様子を窺っていると、
「…………なんだ、意外と消極的ではないか?」
聞き覚えのある声が、一つ目の魔物から発せられた。俺も、メイも知っている、今一番聞きたくなかった声だ。
動揺した俺たちであったが、それでもメイの方が先に平常心を取り戻した。
「……一介の魔術師が、貴女の使い魔を掴んでいる。そう考えると、非常に好戦的であると、そうは思いませんか、…………魔王神のマキラ様?」
メイの軽妙な返しに、姿の見えないマキラが笑い声で返す。
「くははっ……! お主、魔王城にも来ていた魔術師だな? 我の使い魔を派手に壊しておいて、何が一介の魔術師だ……!?」
言い返すマキラに、メイは続けなかった。それは、マキラと楽しく談笑するつもりはない、ということなのか。
「まぁ、それはいい。そして…………マルコ、久しぶりだなぁ? 元気にしてたか?」
マキラの興味が、メイから俺に移る。
「相変わらず見守ってくれていたようで……おかげさまで、元気ですよ」
神様は、いつも人間を見守っておられる。まさに今日、書庫で学んだことだ。マキラのこれは、見守っておられるというより、監視しておられるの方が相応しいけれど。
「そうかそうか、それは良かったよ! 何せ、我としっかり遊んでくれる存在は少なくてなぁ……!」
まるで体のいい友人のような扱いであるが、こちらは一切遊んでいるつもりはないので、認識は改めていただきたい。
「それにしても……二人とも、我に聞きたい事がありそうじゃのう?」
「……その言い振りですと、何かを教えてくれるんでしょうか? それでしたら、話は早いんですけどね……」
メイの言う通り、何が目的だ!? なんて聞いたところで、回答されないのがこのシチュエーションの定番である。
「そうだな……とは言っても、我はまどろっこしいのは嫌いだが、焦らすのはめっぽう好きなんだ。心して聞くがいい」
前回会った時よりも、鬱陶しさが増している気がする。せめて、相手の機嫌が良さそうなこの状況を、上手く活かしたいところである。




