そんな世界に転生したら俺は神様にだって……42
日を改めて、俺は書庫にライラと足を運んでいた。
「……そうですか、ユウナ様はそのような状態で……」
ユウナの容体をかいつまんで説明すると、ライラの表情にも翳りが見える。
「俺も力になってあげたいんですけど、自力では本の閲覧に限界がありまして……」
「そういうことでしたら、是非私も協力したいと思いますが、先ずは……何かございますか?」
何を手伝えばいいのか、という問いに、俺は腕を組んでしまう。
俺としても、何から取り掛かれば良いのかを悩んでいるところであった。しかし、俺が思うに、ライラはかなり仕事が出来る側の人間である。
俺が細かく指示を出すより、彼女自身に考えてもらいながら作業してもらった方が、俺の求めている成果を出してもらえそうな気がする。
「そーですねぇ、……とりあえずはライラさんの感覚で良いんで、神信力に関する本があれば教えて欲しいです」
すると、ライラは顎に手を当てて、本棚を吟味し始めた。
昨日の俺も同様、参考になりそうな本を探してみた。神信力の本には恐らく、ティマリール神が描かれているはず。たまりるのイラストを、この俺が見間違えるはずがない。
そう思って本をパラパラと捲ってみたものの、どうもそれらしいものが見つからない。
「ティマリール教の本であれば、それなりに見つかりますが……神信力となると限られますよね。……これなんかはどうでしょう?」
頭の上にあった本を、ライラはちょいと背伸びして取り出す。
そのまま本を開いて中を眺めると、申し訳程度の挿絵のみで、俺には文字かどうかも分からない何かの羅列ばかりだ。
ライラさんは、文字の読み書きをオスマン村長から教えてもらっているらしく、この世界の学校は、幼少期に誰しもが通うものではない。実際、俺も基本的には農業の手伝いと教会通いばかりであった。
しばらく目を通すと、目当ての内容ではなかったのか、その本を閉じて元の場所に戻した。
「神信力は、ティマリール教である我々には身近な存在ですが、一般の方からすれば眉唾物ですからね」
ライラは少し移動して、別の本棚から本を取り出す。
「逆に、ティマリール教に関する資料はたくさんありますよ。ティマリール教の生まれや宗派の違い、歴史などがありますので」
彼女が次の本を開くと、先ほどよりもイラストが多い本であった。
どうやら神様らしいものを表現しているようであったが、たまりるとは似ても似つかないものばかりである。
「これも……ティマリール神の絵なんですか?」
「そうですよ? ……ああ、マルコさんが教会などで見かける物とは大きく違いますよね。記録されている時代で、描かれる姿が異なるんですよ」
さも当然のように話すライラに、俺は内心驚いていた。
もしかして、生まれる時代が違っていたら、俺は再びたまりると出会えていなかったのか。いや、それは元の世界でも同じことか。ならば、俺はその奇跡を二度も起こしていることになる。そうか、やはり俺は選ばれた存在であったのか……。ありがとう神様、ありがとうティマリール神。
「……ん? これも……ティマリール神なんですか?」
ライラが捲っていくページを共に眺めていると稀に、人々に崇拝される神様とは思えない、邪神のような絵が現れることがあった。
それを見ると、ライラは少し苦笑いを浮かべて、指を指した。
「こちら……ですよね。いや、こちらは────魔王神が描かれたものですね」




