そんな世界に転生したら俺は神様にだって……40
俺が呆然とひたすらに拍手する中、レオンはその手を止めた。
「……本当に素晴らしい演奏でした。一国の姫故、その世界の最前に立てないことが非常に惜しまれますね」
「レオン様に褒められると、本当にその気になってしまいそうです。……マルコ様は、如何でしたか?」
満更でもなさそうなユウナの視線が、俺に向けられる。
「いや、すごい演奏でした、本当に……」
圧倒されてしまい、マトモな褒め言葉も出ない俺に、ユウナは笑顔で答える。
「そう言っていただけただけでも嬉しいです。ありがとうございました」
いや、こんな素敵な演奏を披露してもらって、お礼を言うのはこちら側ではないだろうか?
すると、レオンは立ち上がって、ユウナの持っていたハープを回収した。
「ありがとうございました、ユウナ姫。それと……そろそろお時間の方が……」
レオンが耳打ちすると、ユウナは頬を膨らませてそっぽをむいた。
「……まだ大丈夫ですよ。……心配性なんですから、全く……」
「申し訳ございません、我々も国王様からの命令ですから……」
珍しく不機嫌を表しているユウナを見ていると、彼女は息を吹いて再び笑顔を作った。
「……マルコ様、本日はありがとうございました。最近は父からの制限で、自室外の活動を抑えるようにと言われているんです」
ユウナは両手を上げて「こんなに元気なのにですよー?」とおちゃらけて見せた。これには横のレオンも苦笑いである。
「マルコ様、昨日に引き続きお時間をいただきまして、ありがとうございました。またお時間がございましたら、またお会いしていただけますでしょうか?」
「……っ! もちろん! ぜひ!」
あまりにも当たり前過ぎる質問に、一瞬詰まるも返事ができた。昨日、というのは一昨日の言い間違いかな? 敢えて訂正するほどでもないか。
「……それではユウナ姫、お部屋までご一緒します。……マルコはここで待っててくれ、僕も戻ってくるから」
よほど国王から厳密に言われているのか、レオンは急かすかのようにユウナを自室へ促した。
ユウナとの会談を終えて、俺はレオンと二人で話す機会が設けられた。
「連日こうして呼びつけることになって、本当に申し訳ない。それと、来てくれて俺も嬉しいよ」
昨日に引き続き、レオンの時間を奪ってしまって申し訳ないと思いつつ、俺にそんな時間割いてて大丈夫? という疑問もある。
「今の僕が一番優先すべきは、ユウナ姫の呪いを解くことだ。その任務において、今最も重要な要素であるマルコに重きを置くのは、至極当然だろう?」
レオンの期待を孕んだ視線に、俺の胃が少しだけ痛くなってくる。
昨日の今日だから、ということもあるが、ユウナの呪いについては未だに情報が増えていないのだ。
「……実は、マルコにも知っておいてもらいたいことがあるんだ」
そんな中で、随分と神妙な面持ちで、レオンが口を開いた。
「さっきのユウナ姫との会話、ちょっとおかしいところがなかったかい?」
「さっきの会話で? ……えっ、何だろ……」
俺は、直前の会話を思い出す。ユウナのことは詳しく知らないし、話したのも一昨年と今日くらいで、違和感を覚えるほど人柄を知らない。
更に言えば、俺は「聡明な読者はお気付きかと思うが……」に気付かないタイプなのだ。そんな俺に気付けるような異変か?
「マルコは、昨日ユウナ姫と会って話したかい?」
「いや、昨日は会ってないよ。……って、それのことか。あれは一昨日の言い間違いじゃない?」
俺が考えもなしに返事をすると、レオンは首を縦には振らなかった。
「……あれは言い間違いではないよ。ユウナ姫は、昨日、マルコと話をしたと思っているんだ」
その言葉の意味を問うまでもなく、レオンが言葉を続ける。
「……ユウナ姫は、一昨日から今日まで、丸一日以上眠っていたことになる」




