そんな世界に転生したら俺は神様にだって……39
しばらくすると、レオンが何かを持って中庭に戻ってきた。
「……申し訳ありません、ユウナ姫。こちらをご用意させていただきまして……」
「……? それって……楽器?」
レオンが携えてきたのは、ハープの様な見た目をした楽器である。サイズは一メートルもない程度の、持ち運びも容易な大きさである。こういうの、アイリッシュハープって言うんだっけ?
「……それ、レオンが弾いてくれるの?」
俺たちのために披露してくれるのかと問うと、レオンは少しだけ微笑んで楽器を構えた。
「僕も多少はできるけれどね……」
そういって、レオンは楽器に張られている弦をゆっくりと弾いた。
彼の奏でる音楽は、ゆったりとした曲調で、バラードというよりかは子守歌のような優しさを感じた。
どこかで聴いたことがある気もするが、この世界で聴いたのか、それとも前世の記憶なのかは断定できない。
それにしても、このような音楽の素養まであるのか。先日レオンの過去を聞いた際に言っていた、幼少期に受けた教育の賜物だろうか。
曲の主要メロディを弾いた辺りで、レオンは手を止めた。俺とユウナのささやかな拍手が中庭に舞う。
「……さて、僕の演奏はこのくらいにして。……ユウナ姫、もし宜しければ、彼に演奏を披露してみてはいかがでしょうか?」
「あら……、私に、そのような機会を与えてくださるのですか?」
レオンからハープを受け取ると、感触を確かめるように軽く弦を弾いた。突然の無茶振りにも笑顔で対応してくれる寛大さがすごいな。
「マルコ、ユウナ姫は音楽などの芸術に関して、他国からも高い評価を受けるほどの腕前なんだよ。王族の方だから、演奏を見ることが出来る人間も限られる、これはそれほどまでに貴重な機会なのさ」
「レオン様、他国からのそれは社交辞令もあることでしょう? ……ですが、今日はマルコ様にも楽しんでいただけるよう、誠意を込めて演奏いたしましょう」
軽く呼吸を置いて、ユウナの演奏が始まった。
曲調はレオンの演奏と似たようなゆったりとしたもので、彼女の演奏には、普段の会話から感じるたおやかさがある。
その曲調はそのままに、彼女の運指が徐々に早まっていく。テンポは変わらずに、小節内に重なる音が増えていくことで、伴奏が出来上がっていく。
…………ってか、たまりるの曲じゃん、これ! これはあれですね、1stE.P.収録曲「シンプル」で間違いないです。
いや待てよ、もしかしてさっきレオンが演奏したのも、この曲の簡易アレンジ版だった気がしてきたぞ。ユウナがここで披露するということは、格式高い場での披露にも相応しい曲としてこの世界に根付いている証、オタクの俺も鼻が高いよ。
俺の好きな楽曲であったのも大きいが、一つの楽器で表現されていることが不思議なくらい、厚みのある演奏に圧倒されてしまう。異世界のポール・ギルバートか?
そのままラスサビまで引き切ると、アウトロからは次第に運指が落ち着いていき、そのままゆっくりと演奏が終了した。
「…………ありがとうございました」
頭を下げたユウナに、俺とレオンは惜しみない拍手をした。
ユウナが顔を上げた時に見せた、どこか誇らしげに見えた笑顔に、俺は釘付けになってしまっていた。




