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4「始まりの終わり」
あの丘に集まったのは、十度目だった。
十回の“セツナ”との別れ――いや、出会い。
私たちにとっては別れでも、セツナにとってはいつも最初の出会いだった。
セツナは記憶を持たない。
時間を飛び越えて現れても、前のことを何ひとつ覚えていない。
だから、どんな結末も、セツナにとってはただの“今”になる。
私たちは何年もかけて、この永遠の循環を終わらせる方法を探してきた。
そして今日、ようやく最後の条件を満たした。
セツナをこれ以上跳ばせないための、最後の儀式。
夕焼けの中、きょとんとした目で私たちを見ていた。
その目には、安堵も感謝も宿っていない。
ただ、初めて世界を見た子供のようなまっさらな光だけがあった。
あの瞬間、私は気づいた。
私たちはおわりにたどり着いたけれど、セツナは始まりに立っているのだと。
――きっと、あの日のセツナも同じ顔をしていた。
そう、きみが最初に出会ったあの日の、セツナと同じ顔を。