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3「最後の目覚め」
冷たい空気が肺を満たした。私は目を開けた。
そこは見知らぬ白い部屋。
壁も天井も、まるで霧のようにぼんやりしている。
誰もいない。静寂だけが響いている。
「これが最後だ」声が聞こえた。振り返ると、ぼんやりとした影が立っていた。
私は何も答えられなかった。
「最後の目覚め。もう迷わなくていい」
影は私に手を差し伸べた。
触れた瞬間、身体が軽くなる。
過去も未来も記憶もすべて溶けて消えていくような感覚。
でも私は、それを感じることさえできなかった。
ただ、目を閉じて、もう一度目を開けるだけだった。
そして、また新しい“今”が始まった。