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2「森の欠片」
目が覚めると、また知らない場所だった。
今回は、薄暗い森の中。足元には落ち葉が積もっている。
「お帰り」と声がした。振り向くと、見知らぬ女性が微笑んでいた。
でも、私には彼女もここも、まったく記憶がない。
「ここは安全だよ。もう大丈夫」その言葉に安心したのか、私はただ頷いた。
森を歩くと、遠くに光が見えた。
走り出そうとした瞬間、心がざわつく。
どこかで見た光景のはずなのに、それが何かは思い出せない。
突然、背後で声がした。「君は何度もここに来ている。でも覚えていない」振り返ると、また別の男性が立っていた。
「なぜ、私は覚えられないんだ?」問いかけても、
彼は答えない。
森の奥から、時計の音が聞こえた。
カチ、カチ、カチ…時間が進む音。
でも、私はただ、ここにいるだけだった。