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異種族エンカウント ~王女の命令で始めたら、異種族娘が可愛くて文化になった~  作者: ある
第一章 ~この世界、接客の基本は触れ合いから~ スライム娘
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ぬめりと灯りの部屋

 夜の風に背を押されながら、俺たちは“ぬめりと灯りの部屋”へと向かっていた。


 通りは、異種族たちが営むさまざまな店の光で彩られている。花びらのような羽根を持つハーピーたちの喫茶店、筋骨隆々のリザードマンが運営する岩盤浴、酔い潰れるまで抱きしめてくれるケンタウロスの添い寝屋。

 どれも魅力的だが、今夜の目的地はただ一つ。


「ここだ」


 木製の引き戸を開けると、ふわりと甘い香りと湿気の混じった空気が鼻をくすぐった。店内は柔らかな光に包まれ、床や壁は水に強い素材でできている。中央の受付には、すでに待機していた数人のスライム娘たちが並んでいた。


 彼女たちはそれぞれ、淡い青、透き通る緑、鮮やかなピンク、紫陽花のような紫――

 色とりどりの姿で、同じ“スライム”という種族でもまるで印象が違う。


「「「いらっしゃいませぇ~♪」」」


 中央でのようなものを振っていたのは、俺のお気に入りのひとり――ミィナだった。透き通る青色の体に、内部でふわりと漂うコアが愛らしい。

 表情筋なんてないはずなのに、彼女は不思議と笑って見える。

 スライムのため、軟体な身体を変形しお客に合った姿を模す。今回は人型。


「やぁミィナ、今夜はこいつらを連れてきた。ふたりとも、初スライム体験ってやつだ」


「わぁぁ、紹介してくれるの? うれしい~!」


 ミィナはぴょんと跳ねるように弾んだ。俺は笑って、腰の袋からクッションを取り出す。


「それと、これ。差し入れってやつ。Type Sちゃん、今夜の主役に贈呈だ」


「きゃっ……! わぁ、すごい~! ちゃんとぬめり広がらない……あっ、座ってもぜんぜん冷たくない……っ!」


 クッションの上にちょこんと乗ったミィナは、とろけるように震えて感激していた。表面がきらきら光るほどの潤いで、「感情を水で表現してる」みたいな様子が、なんともスライムらしくて可愛い。


「……あれ、なんか他の娘たちもざわついてないか?」


 モグが小声で言う。見ると、他のスライム娘たちが壁のあたりからこちらをチラチラ見ていた。


「シンヤさ~ん、今度はわたしも選んでね~?」


「クッションほしい~っ! ってか私が相手したかったのに~!」


「……やだ、ミィナちゃんだけずるい……」


 その様子に、ティルが珍しく素で驚いた顔をしていた。


「……まさか、スライム娘たちの間でこんなに人気とは。お前、どれだけ通ったんだ?」


「そりゃあもう。通い詰めて、気配りして、たまに告白されて、振って、また通ってる」


「気持ち悪いのに……尊敬する……」


 モグのボソリに、俺は胸を張って「だろ?」とだけ返した。


「お部屋、準備してありますよ~! こちらへどうぞぉ~♪」


 ミィナに案内され、俺たちは光る粘液の道を渡り、個室へと向かっていく。


 扉をくぐると、そこはまるで水の中にいるような空間だった。淡い青の光に包まれ、床はふかふかの防水布。小さな噴水が部屋の中央にあり、ゆらゆらと揺れる光が壁に映っている。


 ミィナは既にクッションに座って待っていた。


「さぁさぁ、今夜はた~っぷり癒されてくださいねぇ~♪」


 俺は部屋に入ると、腰を落としながら言った。


「じゃ、始めようか。――“ぬめりと灯り”の至福な時間ってやつを」

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