ふわふわ
ふわふわの星空ドームの中、三人はそれぞれの“癒し”の時間へと導かれていく。
まず先に囲まれたのは、モグだった。
「わぁ~、オジしゃんだ~♡」
「おヒゲぴろ~ん♪」
「おヒゲって、引っ張るためにあるの~?」
小さな手に囲まれ、モグのご自慢のもじゃもじゃヒゲがわしゃわしゃと弄ばれる。
しかし、彼は怒るでも嫌がるでもなく、ふくふくとした笑みを浮かべて首をすくめた。
「おぉう、こらこら、乱暴すな……ひひっ、くすぐったいぞ……。まったく、おませさんな娘たちだ」
その手つきはどこか懐かしく、昔を思い出させる温かさだった。ふともものことが頭をよぎるも、目の前の無垢な小さな命を見て、モグはふっと真面目な顔で自分の思考を払う。
「いかんいかん、ワシもいい大人……今はこうして、癒される時間に身をゆだねるだけよ……」
パフミル娘の一人が、そんな彼の大きな背中にそっと乗ってくる。
「オジしゃん、いつもいっぱいがんばってるの~。だから、よいしょ、よいしょって、もみもみするの~」
小さな掌、やわらかな体重。それが優しく背中を押し、肩を叩く。
重すぎず、軽すぎず、絶妙な力加減。とろけるような温もりに包まれて、モグの瞼がふわりと落ちた。
「ふむぅ……これは……極楽じゃ……」
膝に乗った子がふくらんだ頬でむぎゅ、と頬ずりしてくる。甘い、ミルクと綿菓子のような香りに鼻腔がくすぐられた。
――一方、ティルはというと。
「おにいちゃん、おにいちゃん、なんか見せて~! まほう~!」
「ふふ、仕方ないなぁ……特別に一つ、お見せしよう」
ティルは得意げに指を鳴らすと、掌の上にひとつ、ふわんとシャボン玉のような光球を生み出した。
しかし、それはただのシャボン玉ではない。弾力を持ち、ぷにぷにと触れることができ、跳ねたり浮いたり、音色を響かせたりする魔法の玉。
「うわぁ~! ぷよんってなった~!」
「しゅごい、しゅごい! おにいちゃんのまほう、さいこう~!」
「もっと! もっとして~!」
パフミル娘たちは、きゃらきゃらと笑いながら跳ね回る。ティルの出す魔法玉に抱きついたり、二人羽織のように背中にのしかかったりして遊ぶ。
甘い匂いと、ほんのりとした体温、ぷにぷにとした肌の感触が次々とティルを包み込む。
「ふふ、さあ、今度は音が出るやつを……おぉ、見たまえこれを……!」
すっかり“先生”気分のティルは、子どもたちに囲まれながら、次々と新しい魔法を披露していく。
触れられるたび、「すご~い」「かっこいい~」「おにいちゃんだいすき~」と口々に褒められ、ティルの顔が緩んでいく。
「まったく……なんて罪深い子たちだ……。これは……自己肯定感が……爆上がりじゃないか……!」
彼の耳がほんのり赤く染まり、目尻も緩む。
「おにいちゃん、もういっこ! ぴかぴかするやつ~」
「ふふふ……いいだろう、見せてやろう……これが、エルフの底力だ……!」
甘い草のような香りに包まれながら、ティルの心はどんどん軽くなっていく。
二人はそれぞれに、パフミル娘たちからのたっぷりの愛情と癒しを受け、すっかり夢心地の中にいた。
その空間には、時間も、現実も、責任も、すべてがふんわりと溶けて、ただ柔らかな“ぬくもり”だけが残っていた。




