表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/53

08.Vamp同士の絆

 《前回のあらすじ》

 【2032年 過去】

 大量虐殺犯であるジョージと同居するマット。そのマットが、遊園地であった利沙と警察官の高橋を探ろうと動き出した。

 マットは、まず警視庁本部庁舎に向かった。遊園地で会った警察官とVampの女を探すためだ。マットが二人を見つけるのに、それほど時間はかからなかった。


   ☆


 利沙の家の前で佇むマット。利沙の姿を見つけるや否やほくそ笑んだ。

「ヨッ! 前にも会ったな。」


 利沙は素早く逃げようとしたが、すぐに追いつかれてしまった。利沙の前に立ち塞がったマットは、魔物に変貌した利沙の姿を見て困ったような表情を浮かべた。


「そんなに怖がらなくてもいいだろう。俺は何もしないぜ。」

マットは両手を広げ、この通りというジェスチャーをした。利沙は金色に光った目でマットを睨みつけが、マットは怯む様子もなく話しを続けた。


「遊園地に一緒にいた奴、あいつ警察だろう。」

「知らないわ。あの日たまたま会って話しただけよ。」

「そうか? あの親子と仲良さそうだったけどな……。それにお前、警視庁で何をしてるんだ? 警察に協力してVamp狩りを手伝っているとかじゃないよな。そんなこと他のVampに知れたら、痛い目に合うぞ。」

「そんなことするわけがないでしょう。」

「人間とは距離を置け。あの親子のためにも……。」

利沙は驚いた。Vampの口からそんな言葉が出てくると思わなかったからだ。


「遊園地であった親子とは何の関係もないわ。これ以上私に構わないで!」 

「なんか危なっかしくて、放っておけなかったんだ……。これからは、もっと気をつけて行動しろ。」

「私がどんな思いで暮らしているか……、あなたには理解できないわ。人間とは関わりを持たない方がいい……。そんなこと言われなくても分かっているわよ!」

「お前はVampだ。人間とは住む世界が違う。」


「……私は人間と関りを持ってはいけないの? Vampはもう人間ではないということなの?」

利沙はむきになって言い返していた。それは利沙の胸中に常にある思いでもあった。


 マットは利沙を見てニヤリと笑った。

「素直でいいな。気に入った! ——俺はマット、君は? 名前くらい教えてくれよ。」

警視庁に出入りしている自分を攻撃してくるのでは……、と思っていた利沙だったが、マットの言葉に唖然とした。利沙は何時しか魔物の姿から、いつもの美しい姿に戻っていた。


「……利沙。」

利沙は小さく呟いた。

「利沙か……。またな、利沙。」

マットは名前を聞くと、会話を続けようともせずに去って行った。マットの姿はあっという間に見えなり、利沙は突然の出来事に呆然と立ち尽くしていた。


 すると再び、利沙の前にもう一人のVampが現れた。

「彼は私や他のVampと違って、優しいの。人間の心を持ったままっていうか……。」

話しかけてきたのはマットの同居人の女だ。

「彼にちょっかい出さないでよね!」

と言うと、利沙に何も言う間を与えず、彼女もすぐに立ち去った。——利沙にはその女の顔に見覚えがあった。


 身を隠し、女のVampが利沙から離れるのを待っていたマットが、その女の腕を掴んだ。マットは利沙の元を去ったあとも、Vampの気配に気づき様子を窺っていたのだ。

「ルナ、後をつけてきたのか? 俺の監視はするな! そして、彼女に手を出すなよ! 絶対に!」

と強い口調で言い放ち、マットは姿を消した。ルナは悔しそうな顔でマットの後ろ姿を見ていた。


   ☆


 翌日、部長室で生駒部長、高橋、本田の三人が話し合っていた。


 人間の殺人犯なら一刻も早く捕まえに行くのだが、相手が複数のVampとなると話が違う。捕らえる前に皆殺しにあっては元もこうもない。殺人犯のVampは捕まえない、——葬るのだ。


「あの屋敷には三人のVampが住んでいる。一人はジョージ、これは確実だ。もう一人は、おそらくルナという名のVamp。そして、あとの一人は殺人には関わっていないであろうVampだ。」

屋敷を訪問したとき、高橋と本田はジョージの顔を見ているが、他の二人は確認できていない。


「あの屋敷にルナがいることを確認してからVamp狩りをするか。それとも、このまま三人とも抹殺してしまうか。」

「三人とも抹殺するのが現実的だろう。Vampを一人でも見逃したら、必ず仕返しがある。そんなリスクは負えない。」

「Vampは本物のヴァンパイアと違い、杭がなくても頭か心臓を撃ち抜けば死ぬ。昼間、あの屋敷を狙い、Vampの動きを封じましょう。」

「屋敷の情報が欲しいな。」

「近くの不動産会社なら屋敷の詳細が分かるはず。」

「Vampに怪しまれないように、気をつけろよ。」


生駒部長の言葉を最後に、高橋と本田は部長室を出た。

《次回》

いよいよジョージ、ルナ、マットに警察の手が伸びる!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これから始まるvamp狩りに緊張する。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ