34.レイラの胸中
《前回のあらすじ》
石川が設計したBOXに、凶悪集団ウルフの一人を拘置した。その後、ウルフのリーダーからメッセージが送られてくる。警視庁でリーダーの女を待ち構えるが……。
生駒部長をはじめとするVamp捜査課のメンバー全員が、石川の発明した暗示防御シールを張り、薬入りの銃を構えて警視庁本部庁舎の正面入り口に立った。
間もなくして、ウルフの主導者レイラが、護衛を数名引き連れ、警視庁に現れた。
「出迎えありがとう。私は争いに来たのではない。銃を向けられていたのでは話ができない。」
レイラは銃を構えている人々を見渡しながら言った。彼女のスマートな振舞いからは、品格をも感じられる。
——確かに、報復しに来たのであれば、ウルフたちが既に襲い掛かっているはず……。生駒部長は銃を下ろすように高橋たちに合図をすると、緊張した様子でレイラに言った。
「話とは何だ?」
「お前たちの関係性に興味を持ったのだ。日本の警察が我々ウルフに立ち向かえたのは、Vampと人間が手を組んだからだ。——なぜVampと人間が手を組める。なぜお互いを信用できるのだ。
……私は多くの仲間を人間に殺された。人間は自分たちでvampを作っておきながら、Vampは敵だとみなす。Vampも元々は人間だ。人間が人間を攻撃していることに他ならない。——Vampは全て、人間の敵なのか……。Vampと人間が手を組み共に生きる世界、それが私の理想だ。」
レイラが、Vamp捜査課のメンバーに向かって静かな口調で語った
レイラの話を聞いていた護衛のVampが、寝耳に水だ……といような表情を浮かべ、彼女を見た。
「あなたの考えは危険です。人間はVampの敵です。私達の仲間は、こいつらに殺されました。」
護衛のVampたちが顔を見合わせた直後、物凄いスピードで襲い掛かってきた。標的は警視庁の人間、そしてレイラだった。生駒部長、高橋、利沙、本田が薬入りの銃を発砲した。マットはすかさずレイラを守った。——前々からウルフに属するVampたちは、レイラに不信感を抱いていた。彼女からリーダーの地位を剥奪しようと考えていたのだ。それが今まさに明るみに出た。
今まで仲間たちに自分の思いを明かせなかったレイラを、マットは十分に理解できた。ジョージやルナと共に暮らしていたときの、かつての自分がそうだったからだ。
マットは利沙に、レイラを例のBOXに入れるように頼むと、銃弾を逃れVampの姿を露わにしている護衛の背後に回り、首を一捻りした。生駒部長と高橋、本田は、薬が効き人間に戻ったウルフたちのとどめを刺した。警視庁に来たウルフのメンバーは、レイラを除き全て抹殺された。
「やはり、争うことになったか。」
生駒部長がウルフたちの死体を見て呟いた。その時、
「キャー!」
紗綾の悲鳴が聞こえてきた。
みんながラボに向かうと、紗綾の視線がBOXに向かないようにと、利沙がBOXに背を向け、彼女を抱きかかえていた。いつも冷静な石川も驚きを隠せない様子だ。
利沙がレイラをBOXに入れた直後、彼女が元々そこにいた仲間のVampを襲ったのだ。血に染まったBOXの中で、レイラが仲間のVampの心臓を手にし、立ち尽くしていた。
「お前も、私とは意見が合わない。どちらかが死ぬ運命だ。」
そう言い放ったレイラではあったが、心臓を持つ手が僅かに震えていた。
時が止まったかのように、高橋が話し出すまで、そこにいる誰もが呆然とレイラを見つめていた。
「……マット、暫くレイラさんを預かってくれないか? 彼女が平常心を取り戻すには、時間がかかるだろう。」
「また俺が? この前、本田を預かったばかりだろう。しかも、今回は女……。」
マットは、厄介事は御免だというように不満そうな顔をした。
「仕方ないだろう。本田は新婚で、まだ奥さんに自分がVampだと明かしていないようだし、俺と利沙は涼介と一緒に暮らしているんだから……。身軽なのはお前しかいないんだ。」
「……分かったよ。しかし、この女を四六時中見張っているわけにはいかないからな。」
マットがそう言うと、
「私が、時々マットさんの家に手伝いに行くわ。困ったことがあったら、私に言ってください。」
利沙が動揺しているレイラを見つめて言った。
石川はレイラに嘘発見器を使い、報復を企んでいないことや誰とも争う意思がないこと、今後ウルフのメンバーと連絡を取らないことなどを確認した。そして、レイラをBOXから出し、マットに渡した。
「ウルフの残党はまだ世界中に散らばっています。危険なことには変わりません。十分気をつけてください。」
「……慣れっこだよ。」
マットはそう言うと、苦笑いを浮かべた。
《次回》
マットの屋敷にレイラの姿。マットがレイラに秘密を打ち明ける……。
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次回エピソード《35話》は明日投稿します。お楽しみに!




