32.ウルフの主導者
《前回のあらすじ》
生駒部長の娘の紗綾が、石川の助手としてVamp捜査課に加入する。
警視庁の監視カメラを睨みつけるVampが徐々に増えていく……。本田が凶悪集団ウルフへの潜入を試みるが……。
都会のど真ん中だとは思えないほど寂れた場所に、一棟のビルが建っている。そのビルから放たれる魔力により、辺り一帯に不気味さが漂い、生命が持つ温かさなど微塵も感じられない。
そのビルの一室に本田がいた。凶悪集団ウルフのリーダーと思われる女が大きめの椅子に腰掛け、正面にいる本田を冷酷な目つきで見つめている。本田は恐怖を感じつつも、その女のスーツ姿に、上品な身なりの魅力的な女性であると認識していた。以前、高橋たちがウルフの集団を襲撃したときには、その女の姿はなかった。
本田は数名の護衛に監視され、その威圧感に押しつぶされそうになっていた。
「あなたたちの噂は聞いています。無敵だと……。僕は最近、Vampになったばかりで、どうしたらいいのか……ずっと悩んでいました。……私を仲間に入れてください。」
と、かろうじて言葉を発した。
「簡単に、仲間になれるとでも思っているのか?」
女は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「手ぶらで来たわけではありません。」
本田はズボンの中に片手を入れた。その動作に護衛のVampたちが身構えた。悪いことはしません……というように、本田はもう片方の手を頭の髙さまで上げた。そして、護衛たちの顔を見ながら、下着の中に隠してあった拳銃を取り出した。——万が一、身体検査をされも拳銃を取られないように、下着の中に入れておいたのだ。裸にされたら無意味だが、一か八かだった。Vamp相手にはこの一か八かが多すぎる。
本田はウルフたちの視線を感じながら、下着の中から取り出した拳銃を、服の裾でできるだけ丁寧に拭いた。そして、その銃を女の前に置いた。
「これは、日本国内でVamp相手に使っている銃です。銃弾の中にはVampの能力を奪う薬が入っています。欲しいとは思いませんか?」
本田の言葉を聞くや否や、女はその拳銃を手に取り、彼の目の前で発砲した。銃弾は本田の後ろにいる護衛のVampに命中し、その護衛がほんの僅かよろめいた。
「これがそんなに重要なものか? それよりこれをどこで手に入れた。お前は何者だ。」
女は拳銃をもてあそびながらそう言い放ったあと、首を少し傾け護衛のVampに合図をした。Vampが本田の身体を調べると、下着の中から、もう一丁の銃とナイフが出てきた。本田は恐ろしさのあまり、ありったけの武器を下着に入れていたのだ。
「普通、Vampはこんなものを持ち歩かない。」
女はあざ笑い、呆れた様子で本田を見た。本田は危険を感じ、外で待機している高橋、利沙、マットに信号を送った。石川に頼んで作ってもらった時計型の通信機にSOSのスイッチが付いていたのだ。それはプランAからプランBへの変更の合図でもあった。
☆
「プランBへ変更! 早すぎるだろう!」
マットの驚いた声が響き、外の敷地で待機していた三人は顔を見合わせた。
「仕方がない!」
一刻を争う状況だ。
高橋の合図をきっかけに、マットが力ずくでビルの扉を破壊した。建物に侵入した三人は敵のVampを見るや否や、薬入りの銃弾を何発も放った。マットは護衛一人を連れ出し、薬が効いている間に、以前本田を監禁するために購入した頑丈な鎖でそのVampを縛った。——プランBは、ウルフの生け捕りだ。
ウルフのメンバーを一人捕まえ、三人は後先構わず車に走った。本田もVampの端くれだ。三人の侵入でウルフたちが気を取られている隙に、どさくさに紛れて脱出していた。本田を含めた高橋、利沙、マットの四人は捕らえたVampを車に乗せ、警視庁に向かった。
護衛のVampが高橋たちのあとを追おうとしたが、女が止めた。ウルフのリーダーと思われる女は、ビルの窓から慌てて走り去っていく車を見つめていた。仲間を一人連れ去られたにも関わらず、動じる様子は全くなかった。
《次回》
高橋たちは捕らえたVampを警視庁に連行するが……。
次回エピソード《33話》は今日中に投稿します。お楽しみに!




