あんたのために作った弁当よ。ありがたく受け取りなさいよ。
ありえないことが起きたわ。
快晴なのに、私に車道を走っている車が水たまりを豪快にかけていくなんて。
こういうのって泣き寝入りするしかないの?
まじ、ついてない。
お気に入りのコートなのに。
こがらしの風が濡れた手に冷たいわ。
でもよかった。
鞄は濡れてないみたい。
あっ。
また車が走ってきた。
同じ轍は踏まないんだから。
歩道の端っこに寄れば問題ないでしょ?
「きゃっ」
コンクリートのひびが入ったところにつまずいたじゃない。
てか、思わず鞄投げちゃった。
やっちゃったな。
彼のために弁当作ってきたのに。
中を確かめなくちゃ。
よかった。
中身は無事だわ。
安心したら、足が痛み出したわね。
うわっ、擦り傷ができてるじゃない。
なんで私だけこんな目に合わなきゃならないのよ。
むかつく。
もう、授業に集中なんてできないわ。
早く昼になってくれないからしら。
え?教科書の続きを私が読めって?
この教師いっつも私を当てるから嫌いだわ。
私のこと狙ってるのかしら。
気持ち悪い。
すでに思い人がいるのよ。
「ここから読めばいいの?ありがとう。助かるわ」
持つべきものは友達ね。
委員長ちゃんが助けてくれたわ。
あとでマニキュア貸してあげよう。
きっとピンク色が似合うはずだわ。
やっと終わった。
大樹君はどこにいるかしら。
あれ?委員長と話してる。
むかつく。
やっぱりマニキュア貸してあげない。
ぶりっこって嫌いなんだよね。
ほら、邪魔よ。
強引に割って入ってやったわ。
私の弁当受け取りなさいよ。
あっ。
やだっ、手が滑っておかずが床に落ちちゃった。
終わったわ。
私の人生終わった。
なんで委員長がしゃがんでおかず拾い集めてるのよ。
あなたのために作ったものじゃないのよ。
もう、私の背中をさすらないでよ。
いい子ちゃんぶっちゃって。
あっ、大樹君。
床に落ちた卵焼きを食べちゃった。
「めっちゃうまい!お前、きっといい母親になるよ」
あれ、おかしいな。
涙が出て止まらないわ。
こんなはずじゃなかったのに。
「なんで泣いてるんだ?俺まずいこと言っちゃったか?ごめん、それなら謝るよ。ほら、これで涙拭けよ」
なんなの?そのくすんだ色のハンカチは。
ちゃんと洗ってるのかしら。
まじ、絶対家事とかできないタイプだわ、こいつ。
これだから男って嫌だわ。
え?委員長が貸してくれるの?
花柄の高そうな生地ね。
やっぱり、持つべきものは友達だわ。
もう私たち親友よね。
「グビィィィィ」
「うわっ、鼻をかみやがった。きたねえ」
「うるさい」




