第26章
四大要素の中にあって特殊なあり方をしているのが「地」である。
現実的に考えてみたい。地で起こることは一言で言えば精錬である。地とかけて血で考えてみればわかることである。純血というものである。彼らは異常に澄んでいることにこだわっている。ユダヤ人などがそうである。もちろん日本人もまた日本人であることにこだわっている。彼らは異民族との混血を望まない。このように血は血自身が精錬されることを望んでいるかのようにオートマチックに極になる。
地はこのようにも考えられる。
それが知である。知識と呼ばれるそれは高めれば高めるほど中毒といってもいいほどそれにこだわり始める。血と同様普段目にはつかないものであるがそれ自身が望んでいるかのように高みへと登り始める。
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シロンという少年の顔は子供じみている。声もまた高く澄み切っていて不思議に思えてくる。
プラチスでの生活はこのシロンと始まった。金は渡してはいない。ただシロンがアレフの技術を盗もうと弟子入りのような形でついてきているだけだ。
アレフはリチアのことを考える。しかし今のところ心配事はなかった。一人置いてきて出発したものの特段彼女の様子はおかしいところはなかった。カーバンクルも出発した日気持ちよさそうに昼寝をしていたぐらいだ。
シロンの素性はわかなかったがたぶん悪いやつではなさそうだ。
プラチスは発展している都市だ。そして入り組んでいる。海の上に突起した花崗岩が土地を作り内陸に行けば川もある。この川では砂金が取れるとして有名でアレフも少し興味があった。とりあえず情報は旅のしおりを現地で買い情報収集を始めた。探すのは蛮族BBという組織の情報だったが一切合切そんな情報はどこにも載っていなかった。試しにシロンにも聞いてみたところ知らないと真顔で言われてやはりこの組織は空の上の霧のように隠れていると認めざるを得なかった。
アレフは旅というものに憧れていた。まるで主人公のように知らない街を訪ね経験を重ねていく。オーガッツにいたことからそうだった。その時父親のガーゴンが教えてくれたのだが旅をするとその土地にいる種族は旅人のことを旅人だとすぐわかるというものだと言った。視線や雰囲気から現地の人ではないとすぐにわかるそうだ。
プラチスの内陸にある川までやってきた。シロンが案内してくれた。アレフはとりあえず川の性質を調べた上で水を汲み飲んでみた。まずくはない。この川はアタラシス川と呼ばれているらしい。実際に川に入ってまたどんな温度、どんな感触かと確かめようとしようとしたら大きな拡声器で女性の声がした。振り向くと人々が一点に集まり盛り上がっている。どうやら水上ショーらしい。
人々の熱気が高まりアレフも押されて水へと入ってしまった。
壇上に立っているのはヒューマン種の普通の人だった。しかし水上ショーで働かせられているのはアクア属のヒューマンとの混血だった。ガイドブックによればこの地ではアクア属というヒューマンとの混血がまるで奴隷のように従っているとある。シロンもそのことを知っていたようで誰でも知ってますよ、関わらないほうが良いですよと念押しして警告してきたぐらいである。しかしアレフは見逃さなかった。出演中のアクア属の子供が失敗して壇上から落ちてしまった。その際調教師ともおぼしき人が鞭を入れて怖がらせていた。いや痛めつけていた。たまたま近くいたものだからその時その子供の恨み節を聞いてしまった。「蛮族BBのせいだ」
その子供のアクア属は確かに言った。
アレフはその情景を頭に焼いてやはりこのプラチスという街では蛮族BBという存在がタブー視されているということに直感として気付いたのだった。
都市伝説的な存在だった蛮族BBという存在がアレフの中で確かに存在する現実の組織であることを確かめられた1日となった。
この組織がリチアを狙いどういうわけか何かに利用しようとしている。そして市民や住民はその組織のことをまるで知らないふりをしている。特殊な構造がそこにはあった。
確信したはいいもののアレフはこれからは迂闊に蛮族BBというワードをこの土地の住民に聞いて回るのをやめるべきだと理解した。タブーであるものをわざわざ聞きに行ったら向こうからこちらの正体を狙ってくれと教えているようなものだからだ。いずれにせよこの組織は誘拐じみたことをする。それから奴隷労働的なことをする側面もおそらくある。
今日この日が終わる直前、太陽が西日に指した頃シロンがいなくなった。弟子入りしたいと向こうから懇願してきたのにいきなりいなくなるなんて少しばかり失礼だ、とも思ったが人生一期一会そんなこともあると思い就寝したのだった。




