第21章
プラチスはとても大きな街だった。都市と言ってもいい。大きさはかつてあった城塞都市をそのまま現代まで活用した都市で莫大な面積を誇っている。東部は森で囲われており西部に街が集中している。近くの街の種族にはよくこんな問いかけが発生する。プラチスはどこからどこがプラチスなのだろうか。それは当然で実際プラチスの住民にもそれはわからない。とにかく大きいからアレフも最初は迷った。しかし来てみると納得できる。プラチスは非常に広い意味を持つ固有名詞でありそれは人々の生活にまでも息づいているのである。だから簡潔に都市の名前には留まらず人びちの暮らしの道徳、哲学にまでもその用語が使われるのだ。ライフという小人が来たのはプラチスという都市の城門までだった。アレフは謝礼としてすこしばかり金を払うとライフはさっさと消えてしまった。
取り分け可笑しい風に見える街である。住んでいるのはヒューマン種が主でありあとは奴隷のドワーフやその他が暮らしている。
アレフは街の中心まで来た。ネオンライトが光っておりその広告には「AI来たり」と書いてあってさながら城郭都市にはふさわしくないようである。いかにも最新を謳った街といった感じであるがそのAIも一般人には縁のないものだった。この世界にAIが登場したのはここ数年だが一部の富裕層がその利益を独占しているのは有名な話だった。
街角まできてやることがなくなったので一息付くことにした。
周囲を見ると人だかりが出来ていた。大きなホールがあった。そこにみんなが入っていた。何があるのだろう。不思議に思ったアレフは人々の後についていくことにした。中に入ると騒然だった。テレビカメラマンが何台も入っていてステージでは何かの発表をしているようだった。アレフはテレビを見たことは当然あるがカメラマンがいるのを見たのは初めてだった。気分が向上して何が行われているのか見学することにした。
女のヒューマン種が司会者から紹介されて何かを口にしているところだった。
女性が飛び上がった。
「おいしいっっ」
客席もその反応に驚いている。
普通現代の食べ物なら一通り趣味嗜好を満たしているはずなのでここまでの反応にはならないはずだ。演技ではなさそうと思った。とても演技には見えない。司会者が言った。
「この食べ物はAIの登場により一般の化学実験では得られない反応を応用して出来ています。一般的に3体反応は稀にしか起きませんがAIのおかげで3体反応4体反応と様々な可能性が見えてきたのです。ここにあるまだ名前のないこの食べ物は3体反応を示したシュミレーションによって予想された分子が現実になったものなのです。」
みるからにパスタのように思える。しかし穴がいくつもいくつもまるで軽石のように出来ている。パスタではない。先程の女性のヒューマン種が全部食べてしまったようだ。
最後まで見てわかった。司会者が言っていたことだがこの食べ物はその含む空間により(軽石のようなボコボコした穴のことだ)少量でも満足できる分子構造となっているようだ。そして司会者が最後に言っていた言葉が頭に残った。
「この現代の食べ物はこころの満足を目指して作られた食物です」
しかし不思議だった。この都市の文化的学問的レベルは高い。異邦人であるアレフにとってはとても新鮮に映った。番組が終わりカメラマンが引き上げていった。アレフもこのまま帰ろうかと思っていたら司会者がまた登場した。
「ありがとうございます。今日の番組はいかがでしたでしょうか?BBファウンデーションはあなたから寄付が必要です」
司会者がそう言うと観客が次々と押し寄せ寄付が始まった。プロトはまさかとは思った。
BBファウンデーション、蛮族BBのことか。
BBファウンデーションとしてこの都市で通っているこの組織は他国では蛮族BBとして悪名高い。BBと名前が付くわけだから偶然ではない。と思案していたらやはり確信に変わった。支援者が持っている旗には(今まで気づかなかったのは不思議だ)見たことのあるロゴがあった。キューブ上の中にBBの文字がある。これはみたことが当然ある。蛮族BBで決まりだ。
しかしリチアを誘拐しようとする側面を持ちながらこんな技術の披露会、しかもテレビでというのはなんとも納得できない。一体全体どういう組織なのだろうか。大企業には裏の顔がある、そんな単純な話なのだろうか。
外に出てきて当面暮らすところを決める必要があったがアレフはずっと考え事をしていた。何もかも手がつかないようだった。そんな中歩いているとぶつかった相手がシロンという男だった。この街で協力することになる重要な人物である。




