世界を救うため、元最強勇者は神に「死」か「結婚」を迫られる

　転生後の人生が安寧だと誰が言った？
　数百年に及ぶ魔王による支配が続いた暗黒時代。勇者一行は魔王との決戦に臨み、結果、勇者の命と引き換えに魔王の封印に成功した。勇者が死に際に「次は普通の人生を」と願うと、神はその望み通りに、勇者を田舎町の町民へと転生させた。かくして元勇者は、家族に見守られ、友と出会い、生きがいとなる仕事に励む、普通の町民になった……わけではない。
　物語はそんな簡単には終わらない。次の人生では、前世では知り得なかった「世界の真実」と、神々との真の戦いが待っていたのだ。

　封印から約二十年、人々は平和を謳歌していたが、かつての勇者の仲間・魔法使いの元に魔王の復活を予見する神のお告げが届いた。魔法使いが封印の儀を行うため、代わりにその娘・ユラが、神のお告げを授けに元勇者を探す旅に出る。数ヵ月の旅の末、ようやく元勇者が住む町へと辿り着いたが……転生した勇者・コルトは不潔・贅肉・悪臭の三拍子が揃った引きこもり青年で、元勇者の威厳などどこにもなかった。しかも転生時に一般市民以下の雑魚ステータスを授けられており、コルトはすっかり勇者の威厳を損なっていた。
　ユラが絶望する一方、コルトもユラの来訪を迷惑がった。ユラが届けた神のお告げとは、「世界平和のために、今一度、死ぬか、結婚して子どもをつくれ」という、とんでもない内容だったからだ。コルトはへそを曲げて、旅に出ることを断固拒否してしまう。

　生まれたときから「勇者業」を負わされ、品行方正かつ謹厳実直に振る舞っていた前世から打って変わって、普通の人生ですっかり人間臭く、卑屈な感情を抱える町民・コルト。かつての仲間で同じく転生した僧侶ハンや、双子の弟パール、無礼千万なユラ、そして花嫁候補たちと共に成長しながら、今世でも世界を救えるのだろうか。そもそも家から出て、旅に出られるのだろうか。