一話
「久しぶり、透真」
ある日、僕が起きると、よく知っている男が僕じゃない名前を呼んだ。僕は、この男の頭がおかしいんじゃないかと思った。だって、そいつの名前こそ…透真なんだから。僕の、昔馴染みで親友。
「透真…?」
また、透真は心底心配そうに自分自身の名前を呼ぶ。まるで僕の名を呼ぶように。苛立った。思わず、
「お前はなんで、お前の名前を何度も呼んでるんだよっ」
なんて言ってしまった。すると、透真は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、涙を流しはじめた。
「なんで…お前、泣いてんだ?」
「本当に…オレの名前が、透真だって言ってるのか…?君は…」
「ああ、そうだ。それがどうしたんだ?」
透真は少し考えるような顔をして、すぐに何かを自分の中で決めたような顔をした。
「じゃあ、君の名前はなんだか分かる?」
「僕は、鈴木しずむ。お前の幼馴染だ」
「そう…じゃあ、オレの名前は?」
こいつはさっきから何がしたいんだ。正直に答えていいものなのだろうか。いや、親友なんだ。信用しよう。
「お前は、佐藤透真。僕の…親友」
「そうか、分かったよ。君のこと」
「どういうこと…」
僕が問いかける前に、透真は「またね」なんて言って、病室から出ていった。なんだったんだ…。というか、なんで僕は病室なんかにいるんだろう。
ふと、枕元に何かがあるのが見えた。手に取ってみると、誰かの日記のようだった。僕は読んでみることにした。
僕は知ることになった。僕が、誰で、本当は透真が誰なのか。そして、病室にいる理由も。
いいね・ブックマークよろしくお願いします!