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短編集 女魔道士の正義  作者: 黒機鶴太
ビターホワイト
9/18

 私は虚無になれぬままよどみにいる。なにも存在しない。闇が底に溜まるだけ。私はここで永遠の時を過ごす。永久に悔恨を抱えたまま。


 誰かが私を訪ねてきた。おどおどとしながら、私に手を差し伸べる。この男は見覚えがある。



 一年前に妻を亡くした私は、長期出張のため娘を預かってもらうため、彼女の実家に向かうところだった。四歳の娘はすやすや寝ていた。私はいろいろなことに追いつめられながら、チャイルドシートがついたままの妻の車を運転していた。夜の高速道路を必要以上に荒い運転をしながら。


――やめましょうよ


 幻聴がした。


――人を傷つけますよ


 私はさとす声に怒りを覚えた。車を更に飛ばして、緩いカーブで制御できずに……、あの声に逆恨みした。

 お前のせいでさらに自暴自棄になり、娘までもと……。



「ごめんなさい。僕のせいですよね。黙っていたら事故は起きませんでした」


 男は言う。私は首を横に振る。すべては私のせいだ。

 ふいに男は強い眼差しになる。


「行きましょう。待っていますよ」


 男の向こうに白い光が見えた。娘を抱っこした妻が笑っている。

 私は男の手を借りて澱みから出る。私さえも赦された。男は去っていく。


「おじちゃんにチョコもらったの。でもお酒が入っているからパパにあげる」


 娘ごと妻を抱きしめながら、白い光に包まれる。



              終

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