悲劇のジャミラ
私はよく、「ジャミラじゃん。」と言う。これは、相手を小馬鹿にしたい時のセリフである。相手が弱々しく、アホで、自爆した際、言ってあげるのである。
ジャミラとは、あの有名なウルトラマンに出てくる敵のうちの一匹だ。実は、私は、ジャミラを一回も観たことがない。ウルトラマンなんていう、暴力的な怖い番組、観たくない。てゆうか、世代違うから、放送されてもないし、再放送されてもない。
知り合いが「まじで弱いやつ。」と教えてくれた。そこから、相手を小馬鹿にしたい時には、「うわ、ジャミラ〜。」と言うようになっただけなのだ。エセである。
だが、私の記憶力も、いつの間にか限界が来ていたようだ。私はジャミラは、「坂から転げ落ちて勝手に死ぬ弱いヤツ」だと認識していた。これが、誤認だったのだ。
ある日、夫のチンさんに、
「ジャミラって何?」
と聞かれた。私は、
「坂から転がって死ぬ、世界最弱の子。赤い色の子。」
と口早に答えた。すると、
「…あのさ、ジャミラ、灰色なんだけど。そのジャミラ、ジャミラじゃなくない?」
と返されたのだ。
(は?何言ってんだ?ジャミラはジャミラだよ。よく知らないのに、勝手言いやがって。このチンヤロー。)
そう思った自分が、なんと間違っていたとは…!私がジャミラだと思っていたのは、『ピグモン』という、全然違う怪獣だった…!ジャミラ、ごめん…!!
弱いことは合ってた。ジャミラもピグモンも、倒される。お水で死ぬのがジャミラ。坂から転げ落ちて自爆するのがピグモン。
チンさんがリサーチしたところ、どっちも、視聴者からは、
「トラウマになった。」
「もう二度と観たくない。」
「かわいそうすぎる。」
などのコメントが寄せられたらしい。つまり、悲劇の怪獣であることが判明した。
私は、今までずっと、転んだり、自爆したり、弱ったやつを、「ジャミラじゃん。」と言ってきた。言われた方は、まじで頭ん中ハテナだっただろう。
ちなみに、ジャミラは、宇宙を冒険してた人間。お水がない星で遭難した。SOS出したのに、助けてもらえなかった。色々あって、怪獣になった。しかも、なぜか、お水を欲するあまりに、逆にお水が苦手な怪獣になった。そして、ウルトラマンたちに、水責めにあってデッドした。
視聴者の間で物議をかもすことになったのは、最後のセリフらしい。
「お水欲しかったんだから、お水で倒されてよかったね。」
「地球に帰りたかったんだから、地球の一部になれてよかったね。」
いやいやいや。んなわけねーだろ。
もはや、私にとっては、「まじジャミラ。」が定番のツッコミだ。今更変えられない。「このジャミラめ!」と言われたら、「なんで自分から坂転げ落ちて死んでんの!バカなの?!」的な意味だと思ってほしい。
亡くなってもなお、その個性すら認知してもらえないジャミラ。まじで悲劇の怪獣である。チンさんは、
「いつかジャミラファンから殺されるよ。」
とボソっていた。ジャミラ、ごめん。(笑)