そして、また終わりがやってきます
「ん?」
それを最初に感知したのはテネリでした。
「博士。
ここに人が来るよ」
「なんだって?
どんな人ですか!?」
テネリの報告を聞いて、博士は椅子から立ち上がります。
「えーとね、人数は15人ぐらいかな。
動物の背に乗ってる人が3人。
あとは荷物を背負ってるかな。
剣も持ってるよ」
「……彼らは、いまどのあたりに?」
「あっちの山の麓だね」
「……ついに、来てしまいましたか」
テネリは博士の協力もあって、その感知機能がかなり戻ってきていました。
見渡す限りの熱源反応を感知できるようになったのです。
本来は食糧となる動物を狩るために博士がつけた機能ですが、それが、終わりの訪れを知らせる鐘となったようです。
「明日の午後には来てしまうでしょう」
博士は覚悟を決めた表情をしていました。
「テネリ。
計画の最終段階です。
明日の早朝。
この島を飛ばします」
「わかった」
「ウィン。
よく聞いてください」
博士は花壇に水をやっていたウィンを呼び、椅子に座らせました。
テネリは2人の話を聞きながら、装置の最終調整をしています。
「まもなく、私が逃げ出してきた街の者たちがここに来ます。
そして、彼らは私とテネリを連れ戻そうとするでしょう」
「え?
それって、どうなるの?」
ウィンはあまり理解はしていなくても、それが良くないことだということは分かっているようで、不安そうな顔をしていました。
「おそらく、私は街の研究所で人を傷付ける武器を作り続けることになるでしょう」
「そんな!
じゃあ、テネリは?」
「おそらく、必要なことを聞き出したら、分解されて調べられるか、強力な武器として、他の街を襲う道具にされるでしょう」
「僕はもうそんなことはしないよ」
テネリが会話に入ってきました。
「……たとえば、私やウィンにナイフを突き付けて、私たちを殺されたくなければ他の街を壊せと言われたら?」
テネリは少ししてから答えます。
「それは、壊すね。
たぶん、他の街も、その街も、博士たちにそんなことをする人たちも」
「そんなのダメだよ!」
ウィンがテネリに叫びます。
「……ウィンがそう言うなら、しない」
「そう。
良くも悪くも、テネリはそういう感情を理解してしまった。
そこを利用されたら、いくら強い力を持っていても意味がないのです」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
ウィンはすがるように博士にしがみつきます。
「逃げます」
「どこに?」
博士は天井を指差しました。
「空へ」