目覚める終わりを訪ねるのは
世界は一度、終わりました。
発展しすぎた科学文明は、やがて奪い合い、破壊し合い、そして、消えたのです。
その最大の要因は、ある国が開発した人型大量破壊兵器でした。
身の丈50メートルを超える彼らは、50体ほど投入され、世界各地に散りました。
彼らは大気からエネルギーを吸収し、なおかつ、消費したエネルギーを自己回収することが出来、ほぼ永続的な稼働を可能としていました。
彼らに下された命令は1つだけ。
『悪意を向けてくる者と、その創造物を壊せ』
機械兵たちはその命令に従い、わずか7日間で世界を灰塵に帰しました。
彼らを作った者たちは、世界が我が物になったと歓喜するとともに、彼らを恐れました。
彼らがいずれ、創造主たる自分たちにも牙を向くのではないかと。
そして、創造主たちは彼らを壊すべきだと考えました。
そう。
彼らに、敵意を向けたのです。
そうして、彼らは世界を終わらせました。
終わらせたあとも、彼らはそこに在り続けました。
壊すもののない世界で、彼らはそこに立ち続けました。
そしてやがて、血と灰と粉塵で濁った大気から、彼らはエネルギーを生成できなくなりました。
1体、また1体と、彼らは動かなくなっていきます。
その頃、わずかに生き残った生き物たちが活動を始めます。
そこには人間も含まれていました。
そう。
世界は完全には終わっていなかったのです。
機械兵に怯えて、奥地に隠れ、潜んでいた、ほんのわずかな人間と、動植物。
その者たちは本当にひっそりと暮らしていました。
そして、ほとんどの機械兵たちがその動きを止めた頃、大気はようやくかつての美しさを取り戻し始めました。
それから長い長い年月が経ち、世界は少しずつ緑が増え、動物たちも増えてきました。
人々もまた、少しずつその数を増やしていったのです。
ですが、かつて栄華を極めた科学文明は見る影もなく、人々は木製の柵で集落の周りを囲って暮らす、原始的な生活を送っていました。
かつての悲劇を知る人々はそれを後世に伝え、必要以上の発展を禁じていたのです。
さらに時が経ち、人々はようやく高い石壁で街を囲う程度の文明を取り戻しました。
そして、そういった街が、世界中に少しずつ増えていったのです。
ですが、人々はそれ以上、無下に街を広げることはしませんでした。
街の外には自然が広がり、動物たちが躍動しました。
人々がそれ以上、文明を進歩させないことで、世界は平和を手に入れたのです。
そして、さらに時が経ち、人々が機械兵の存在を忘れた頃、誰も知らない場所で、密かにそれが起動しました。
49体の仲間が完全に機能停止した中、たった1人だけ、世界の果ての奥地で小さく呼吸をしていた彼。
ぼろぼろの彼が歩き始めた時。
世界は平和でした。
彼が目覚めた時、彼が存在する理由はありませんでした。
そして、その地をとある博士が訪れたのです。