男と女、協力関係になる
引き戸の方を見るとあきからに酔っ払った女の子とそれをなんとか支えてる女の子
「えーっと、すみません店の前でオープン前って貼り紙見たんですけど友達が開けちゃって…迷惑ですよね、すぐ出ていくので、失礼しました!」
彼女はそう言って出ようとしているがここはタクシーを呼ぶにも微妙に不便な場所だ
こんな時間に女の子2人で、しかも1人はかなり酔っぱらってる
そんな状態で
はい、さようならと言えるほど俺も鬼じゃない
「あー、ちょっとちょっと待って、その子かなり酔ってるみたいだけど大丈夫なのか? 休むくらいなら奥の座敷に横にさせてあげられるよ」
カルタも寝てるけどいきなり起きて女の子襲うほど獣じゃないだろ、もしそうならぶん殴ってやるそんなこと思いながら声をかけると
彼女は少し迷った様子で
「えっと……すみません、じゃあお願いしてもいいでしょうか……?」
「あいよ、んじゃその子運ぶの手伝うよ」
そう言いながら彼女の友達に肩を貸してやる
「んえ~? れーちゃんこの人誰ぇ? れーちゃんの彼氏?」
「はいはい、違いますよ俺はここの店主です」
「す……すみませんほんと……」
俯きながら彼女が謝ってくる、少し耳が赤くなっている、まあ昔からこの手の酔っぱらいはよく相手にしていたし気にならない、まだ可愛いほうだ
「あはは、酔っぱらいの相手は慣れてるんで大丈夫ですよっと、はい、ちょっとここで座っててくれポカエリ冷やしてあるから」
そう言いながら彼女の友達を座敷に座らせ、厨房の冷蔵庫に冷してあるポカエリアスを持ってくる、カルタは俺と飲むと次の日の朝には大体二日酔いになっているので今回も買ってこさせていた、明日のカルタには悪いが明日も休みらしいし我慢してもらおう
ついでにグラスに水を注ぎ持っていく
「はい、どうぞ、飲ませてあげて、お姉さんは水で大丈夫か?」
「え、私の分まで?ありがとうございます! ほら、ともちゃんポカエリだよ~飲んで飲んで」
「ん~ポカエリじゃなくておしゃけ~」
「はいはい、これがお酒だよ~飲んでねぇ」
「わーい、おしゃけ~」
そんな微笑ましい? 光景を見ながら
「そんなお礼言われるほどのものじゃないよ、スポーツドリンクはそこで寝てる俺の友達のもんだし水はサービス、そもそもオープンすらしてない店なんだから困ったときはお互い様だろ?」
「本当にありがとうございます、なにかお礼とかできたら良いんですけど……」
お礼か
店がオープンしたら来てくださいってテンプレ気味な返事をしても良いんだが、男2人で作ったメニューばかりの居酒屋だどうせならメニュー開発に付き合ってもらって意見でももらうか
「じゃあ、少し協力してもらおうかな?」
「え、協力……ですか? な、なにするんですか…?」
あ、ちょっとまずいかも
警戒されてる気がするぞ……誤解を解かねば……
「その、協力ってあれな、お姉さんでも出来る簡単な事、別に如何わしい事じゃないぞちょっとメニュー開発に協力してほしいんだ」
「はぁ……メニュー開発ですか? 私、そんな料理の知識はないですよ?そもそも料理出来ないですし」
「ん、そこは大丈夫だ、一緒に作ってくれとかじゃなくてただ料理の意見が欲しくてな? メニュー作るのは良いんだがそこで寝てるカルタ、ああ俺の友達な、そいつと2人であーだこーだ言いながら組んだメニューばっかりだから女の子の意見が欲しいと思ってたんだ」
カルタは肉、肉、肉、とにかく肉推しだ、俺も気をつけてバラけるようにはしているが味が濃いものに寄ってしてしまう
これでは女性客はリピートしにくいだろう
「どうだろ? 意見がもらえるならお姉さんの好きな料理、オープンするまでの期間、材料次第なんだけど作れる限り作るよ、もちろんお代とかは取らない」
「え! ほんとですか! じゃあ……やります!」
「よし、決まりだ、これからオープンまでの期間よろしく!!」
手を差し出し熱い握手をかわす
「はい! よろしくお願いします!」
ガッチリと握手を交わし彼女との協力関係が始まるのであった
「肉ぅ~」
「おしゃけ~」