あっかる~いデスゲーム
真面目に不真面目。
徹頭徹尾真面目に見られないデスゲーム。
悲惨さ皆無の、全力デスゲームです。
この時代のゲームはフルダイブ式ゲームが主で、以前のHMDでは味わえない、実際に自身がゲーム内で動いている感覚。
それを応用して、医療の補助器具としての価値も見出だされた。
そんな要因から中々に好評で、今までゲームに良い感情を持っていなかった層にも波及、ゲーム業界はそこそこに好景気となった。
そんな業界で、ひとつのイカレた事件が起きる。
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本日はとあるゲームの正式サービス開始日。
そのゲームをプレイする者達は様々な思いを胸に、ログインを開始する。
この日の開始時刻に合わせ、全てのプレイヤーは時間を作った。 そうしないとこのゲームに参加できないと言われているので。
キャラクターメイキングを完了させて、ゲーム開始と同時にほぼ全ての者は周囲を見渡し、精緻なフィールドグラフィックに感心してから動き出す。
目的地は目の前に見える、大きな街。
その街にあるとても大きいイベント会場には、全プレイヤーが集結していた。
落ち着きなく辺りを見回し続ける者、リアルで付き合いのある人間で固まり喋る者、会場のすみでただひたすらじっとしている者、フライングして目の前に浮かぶシステムウィンドウを確認して騒ぐ者等。
みなそれぞれのやり方で時間を潰し、その時を今か今かと待っている。
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「待たせたな、参加者3万人のお前らぁ!!」
どこかそわそわしている空気を切り裂く、とても陽気な男の声。
そこ声と同時に会場真ん中の空中へ、唐突に現れたのは線が細い黒スーツ男。 大きく真っ黒なサングラスで、表情もあまり判らない。
しかしこんな怪しい者だとしても、集まっている者からすればそんな事はどうでもいい。
『わあああぁぁぁぁあああ!!!』
今まで各自で思い思いの行動をしていた者達が、彼の者が発した一言でたちまち一つにまとまり、大歓声をあげた。
そう。 ようやく、ついに、待ちに待った時が来たのだから。
「このゲームはよくあるファンタジー系RPGの世界! ……って、言われなくとも雰囲気とかで分かるよな?」
失笑がこぼれる会場。
「お前らこんなゲームに参加するなんて、本当に物好きだなあ?」
黒スーツが軽口を言えば、プレイヤーからは小さな笑いが漏れ、お調子者に至っては「お前はこんなゲーム作るなんて、本当に物好きだなあ?」と大声で返し、少し笑うプレイヤーが増える。
思いがけない返しに、スーツ男もつい肩を揺らす。
「ははは、こんな元気があるなら問題ないな」
大袈裟な動きで何度も頷いたスーツ男が、話しを続ける。
「では皆様お待ちかね! デスゲームのはじまりだああっ!!」
握り拳の右手を天高く挙げ、高らかに宣言を行うスーツ男。
普通はこんな事を言われてしまえば、混乱、困惑、茫然自失、阿鼻叫喚。 みなまともな思考ではいられなくなるはずなのだが、プレイヤーは違った。
『わあああぁぁぁぁあああ!!!』
プレイヤーもプレイヤーだった。
全員が全員、元々まともな思考ではなかったのだ。
「死んだら死にっぱなしの死に戻り無し! 死んだら地獄だからな? 生き残れよ~?」
『当たり前だーーーっ!!』
『死にたくねーーーっ!!』
『生き延びてやるーーーっ!!』
死への恐怖を煽りたてる黒スーツだが、プレイヤーだって死んでやる気なぞ当然無い。
叫べる者は各々思いの丈を叫び、意思を表明していく。
これを嬉しそうに何度も頷いたスーツ男だが、ある程度まで聞くと流れを切り捨てた。
「よし、お前ら死ぬなよ? ゲームの開始だっ!!」
『わあああぁぁぁぁあああ!!!』
最後の〆にもう一度宣言し、黒スーツは消え、開幕イベントは終了となった。
それと同時、全プレイヤーへ一通のメッセージが届く。
《全プレイヤーの皆様、デスゲームへの参加誠に有難うございます。
本ゲームは攻略までゲーム内時間でおよそ2年半(30ヵ月)、リアル時間では3ヵ月を想定しております。
皆様のご都合の為にも、どうか想定通りの期間生き残り、クリアを目指してください。》
こんなメッセージを寄越すなぞ、運営はなんと悪辣か。
勝手にゲーム世界へ閉じ込めておいて、死にやすい環境を作っておいて、死ぬな? ふざけるな!
そう言われてもおかしくないと言うのに、プレイヤー達はそんな事なぞ一言も口にしない。
口にしないどころか、会場内で盛り上がった連中で勝手に円陣を組み、気合いを入れる様があちこちで起きる。
「絶対に生き残るぞ!」
『おおおおぉぉぉおっ!!』
そんな掛け声が会場の退去を促されるまで、止むことは無かった。
~~~~~~
「HPがヤバい!」
「そら、回復しとけ!」
「すまん助かる!」
「ラスカル」
『ぶはっ!!』
「強ェ! こんなのにやられてたまるかぁっ!!」
「生き残るぞ!」
『おおっ!!』
「助けてくれぇ!! 俺はまだ死にたくないんだぁぁぁああっ!!!」
「……すまん。 だがオレもその内地獄へ行く、先に地獄で待っててくれっ!!」
「嫌だああぁぁああっ!!!」
「PKが出た!?」
「僕がそのPKだよ!」
「お前は本気で言ってるのか?」
「その為に参加したからね?」
「何だと!? お前は運営の味方なのか!?」
「……どうしてそうなるの?」
「生き残りを少しでも減らしたいんだろ!?」
「いや、僕の願望」
「いやいや、なんでそんなのがこのゲームに参加してるんだよ!?」
『( ゜∀゜)o彡゜○っ○○!○っ○○!(都合により音声カット)』
『( ゜∀゜)o彡゜○っ○○!○っ○○!(都合により音声カット)』
「俺、ゲームに参加して良かった……」
『( ゜∀゜)o彡゜○っ○○!○っ○○!(都合により音声カット)』
「ああ、おれもだ」
『( ゜∀゜)o彡゜○っ○○!○っ○○!(都合により音声カット)』
「なっ!!? スカートの中は黒塗り不可視だ……と…………!?」
「そう言うゲームじゃないからな」
「くそぅっ!! そのくらい良いじゃないかぁ!!(漢泣き)」
「うわぁ……」
「今回のフルレイドボス戦、気合い入ってるなぁ。 良くも悪くもトップギルドの、更に実力者ばかり来てるぜ」
「アレ見ろよ。 【主軸・SSS連合】だぜ?」
「【シノハラ重工兵団】もいるな」
「【にのいち あのいずみ】が来てやがる」
「化け物揃いって噂の【13番目の廃棄物】だ……」
「……なんで【内海☆王と愉快な仲間達】までいるんだよ」
「【みんなで幸せになろうよ】とか言う最強のエンジョイ勢も参加か」
「ん? なぜ【量産型はバネがフニャフニャ】なんてのが居るんだ? あいつらは死にに行くのか?」
「うわ……こっそり最強ソロとか言われてる“究極超人”のえ~るが紛れてる」
「両手に扇子で、いつも優雅だなぁ、あいつ」
「今回の討伐支援は【土浦ラボラトリ】と【整備班】の共同? なにそれ、豪華すぎねぇか?」
「…………参加者が元気過ぎて、頭痛ぇわ」
「同感」
「これからボス戦だ! 誰ひとり脱落するなよぉ!!」
『おうっ!!!』
彼等の戦いは、総人員1/4の犠牲が出てクリアされるまで、続く。
デスゲームを監視している部署。
「あいつらゲームの中で、本気で生きてるな」
「まあ、死にたくないからな」
「死ぬっても、事前の契約通りゲーム強制終了で、現実へもどるだけだぞ? 奴ら必死過ぎるって」
「だからだろ」
「あん?」
「想定で3ヵ月、現実に居たくないんだよ。 連中は」
「そうなのか?」
「それぞれ理由が有るからな」
「どんな?」
「恋人や家族と喧嘩して顔を合わせたくないとか、遠洋漁業者並の参加報酬目当てとか、ただただデスゲームを楽しみたいとか」
「なんかどれも、しょーもねー」
「本人達にとっては重要な問題だよ」
「そんなモンかねぇ」
「そんなモンだよ」
「へえ」
「それでも、生命維持は限界が有る。 何年もゲームに居座られたら、現実の体が死ぬ。 それを防ぐために、拘束期間に対する最大報酬額を決めた訳だからな」
「まあ当然だな」
「だらだらされても困るだけだ」
《( ゜∀゜)o彡゜○っ○○!○っ○○!(都合により音声カット)》
『ぶふぉっ!』
「何が起きてる、確認しろ!?」
「…………確認! 海の砂浜エリアで、馬鹿達が水着装備の女性を見て、ただ騒いでるだけです!」
「OH……」
〈なっ!!? スカートの中は黒塗り不可視だ……と…………!?〉
『…………』
「彼等で集めた異常環境下での、集団行動データ。 国公認の実験ですが、何かに使えるんでしょうか?」
「……知らんっ!」




