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迷子帰還

ジオラルドは柚子を抱えたまま石階段を上る

踊場を過ぎ木製に変わった階段を上ると武器を持った男達が険しい顔で待ち構えていた


「副団長!」

「こどもは!」


「良かった…見つかったんですね」

「なんで地下牢なんかに居たんだよ」

ジオラルドに抱えられた柚子を見た途端男達が凄い勢いで集まってくる


こっ怖い!

顔をジオラルドの胸に押し付け服を握りしめた


「急に近づくな!柚子が怖がっている

柚子が地下牢に逃げ込んだのもお前達が怖かったからだそうだ」

ジオラルドが柚子の頭を手で覆いため息をついた。


「そうだったのか…」

「嬢ちゃん、すまなかった」

「怖がらせるつもりじゃなかったんだがな」


男達の落ち込んだ声を聞き、ジオラルドの指の間から男達を見た

体格の良い厳つい男達が揃って肩を落としていた


「あっあの…」

明らかにシュンとしているの男達を見て、ジオラルドの手を顔から下ろし勇気を出して話しかけてみる

「迷惑かけて…ごめんなさい。

探してくれてありがとうございます」


男達の顔がパアッと嬉しそうに変化していく様子に思わず笑ってしまった

思っていたより怖くないかも

みんないい人そうだ

悪いことしちゃったな

そんな事を考えていると男達が柚子を見たまま固まっていることに気づく


なっなに!?


「笑ったぞ!」

「何!?俺も見たい」

「可愛い」

「ちっちゃいなぁ」

急に男達の勢いが増す


訂正

やっぱりちょっと怖い


「ところで嬢ちゃんは何で部屋を出てたんですか?宿舎に着いたときは寝てましたよね?」

男達の中では小柄で、短く刈り上げた金髪に人懐っこそうな茶色の目をした人がジオラルドに話しかける


「そういえば聞いていなかったな…何故部屋を出た?」

ジオラルドが柚子を覗き込む


「あっ…ごめんなさい。

…喉が乾いたから飲み物を探していたんです」

視線を落とす柚子の頭をジオラルドが撫でようとした時、再び男達が騒ぎだした


「大変だ!」

「お前ら!早く水を持ってこい!」

「はい!」

ドタドタと数人の男達が駆けていくのを見てジオラルドは呆れたようにため息をついた。

「もう謝る必要はない。私の配慮が足りなかった」

ふわりと柚子の頭を優しく撫でる


またドタドタと足音を立て、木製のビールジョッキの様なものをもった男が戻ってきた

「嬢ちゃんお待たせ!飲みな」

並々と水を注いできたのだろう、男の手と床が濡れていた


男達が期待に満ちた目で柚子を見ているのを感じ、手を伸ばす

ビールジョッキを受け取ろうとして気づく

重い!落としちゃう!


落ちそうになるビールジョッキを慌てて男が支えてくれた

そして恐る恐る柚子の口元に近づけて水を飲ませる


冷たくて美味しい

ほっと息をつく柚子を見て男達も安心した様子だ


「お水美味しかったです。ありがとう」

水を飲ませてくれた男にお礼を言うと

「お前だけずるい」とか「俺も水飲ませたかった」とか男達が喚いていたが、聞かなかったことにした



「そろそろ部屋に戻ろう」

ジオラルドがそう言うと柚子を抱え直し男達に部屋に戻るよう指示した


「嬢ちゃん、副団長お休みなさい」

「嬢ちゃんまた明日な!」


男達が名残惜しそうに去って行くのを見て気づく

そういえばこんなに良くしてくれたのに自己紹介もしてなかった!

今日からここにお世話になるのだ

ちゃんとしないと

「あのっ!私、小山内柚子と言います。これからよろしくお願いします」

ぺこっと頭を下げる


「おさない?」

「あぁ!幼いか!小さな柚子って事だな!」

「名前まで可愛いなぁ」


「あのっ違っ」

柚子の言葉を聞かずに男達は

「こちらこそよろしくなー」「ゆっくり休みな」

と手を振って行ってしまった


「戻るぞ」

男達に手を伸ばす柚子をちらりと見て、ジオラルドは階段を上る


ジオラルドは部屋に戻り柚子をベッドに下ろし

「朝まではまだ時間がある。朝になったら迎えにくるから少し休みなさい。」

と言って部屋を出ていった


「なんだか怒濤の一日だったな」

ゴロンと横になり手足を投げ出す


一度寝てたからもう眠れないかな、と思っていたのだが体力まで子どもになったのか目を閉じると直ぐに眠りに落ちた

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