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召還の儀

召還の儀は日が落ちてから行われる。

それまでは食事も取りながら増え続ける書類をどんどん片付けていく。

もう一人ぐらい書類仕事が出来るものが増えてほしい…だが第2騎士団は脳ミソが筋肉でできているような者が多く期待は出来ないか…そんな事を考えているとドアをノックする音が響く。

第2騎士団の隊員は基本的にノックせずいきなり入ってくる者が多い。

何度注意してもノックしてから入室するという事が出来ないのだ。


「…どうぞ」

この忙しい時にと舌打ちしそうになるのを我慢して入室の許可を出す。


ドアを開けたのは第1騎士団団長モーリッツ・ペトリ・ファイドウッド。

代々続く騎士の家系でファイドウッド家の当主だ。

茶色がかった金の髪をいつもピッチリと七三分けに硬め、切れ長の青い目はいつも機嫌が悪そうに細められおり、背は190を越えているが筋肉が付きづらいらしく騎士にしてはほっそりとしている。

口数は少ないが情に厚い男だと聞いたことがある。

48歳という年齢を感じさせない顔付きは、以前団長があいつは20歳から全く変わってなくて怖いと話していた。


「モーリッツ騎士団長、どうされましたか」

執務机に書類を置き、立ち上がる。


「召喚の儀がもうすぐ始まるから呼びに来た」


まだ日は暮れていない。

あと一時間はあると思ったのだが…


「総師と魔術師長の勘が言っているそうだ」


「なるほど、分かりました。ご足労いただきありがとうございます。すぐに向かいます」


高い魔力を持つ総師と魔術師長は時々勘が言っているといって急に行動し、周りを巻き込むのだが不思議とその勘が必ずよい結果を生んでいるのだ。

結果を伴っている二人の行動を咎める事が出来るものはいない。王でさえ好きにさせよと放任している。


執務机の横にかけてある剣を腰につけ、第2騎士団の証明でもある藍色の短いマントを羽織る。

ちなみに第1騎士団のマントは赤色だ。

執務室の鍵をかけ、通りがかった隊員に大聖堂に行く旨を告げ足早に宿舎の玄関に向かった。

教会は王城を挟んで向かい側にあるため馬車で移動した方が早い。


すでに乗り込んでいるモーリッツ団長の斜め前の座席についたと同時に馬車が出発した。

馬車の中は正面に座ると膝がぶつかってしまうほど狭いし低い。

座席に座っていてもロードライトなどの大柄の男は頭がぶつかりそうになっていたぐらいだ。

舗装された道でもガタガタと振動が直接伝わってくる。

ちなみにこれは速度重視の短距離用馬車だ。

遠征等の長距離用の馬車は広いしここまで揺れもひどくない。


5分くらいで教会に到着した。

馬車を降り、20段ほど白い階段を上ると教会の入り口だ。

4m程の両開きの入り口は夜以外基本的に開いており、学校に行けない貧しい子どもに読み書きを教えたり怪我や病気をした者が治癒魔法をかけてもらいにくる。

そして大聖堂では春が来ると毎年成人の儀を行っている。

教会は下町で暮らす平民にとっても身近な存在なのだ。


大聖堂の祭壇の奥に扉がある。壁と同じ模様、色で分かり面いのも理由の1つだが普段はタペストリーで隠されている為扉の存在を知るものはあまりいない。

いつもは鍵がかかっている扉だが今日は左右に警備騎士が立っており開け放たれている。

警備騎士はモーリッツとジオラルドの顔をちらりと見ると頭を下げた。


男二人が並んでギリギリ通れるくらいの扉の先には装飾の施された柱が左右対称に並んだ廊下が続き、床には青を基調とした金色の刺繍があしらわれた絨毯がひいてある。10m程歩くと天井が高く真っ白な長方形の空間が広がっていた。

窓はないはずなのに明るく、中心には3mの複雑な模様が絡み合い淡く青い光を放つ魔方陣。そして魔方陣の回りにはシンプルだが存在感のある柱が5本立っている。


魔方陣の正面には総師と白いローブの治癒師が20人ならび、両膝を床につけ魔方陣に魔力を注いでいた。


モーリッツは小声で部屋にいた第1騎士団10名に指示を出し、入れ替わるときに邪魔にならない位置に配備した。


皆が魔方陣の正面に並んでいるのを見て、ジオラルドは一人魔方陣の左側に立つ。

30分おきに治癒師と魔術師が一人ずつ入れ替わり、魔力が注がれ続けた。


もうそろそろ二時間になるがまだ変化はない。魔術師長が立ち上がり、入れ違うように総師が魔力を注ぐ。


廊下の方で小さな話し声が聞こえてきたので視線をやると、どうやら王と王子が到着したらしい。


もうすぐ二時間半…そろそろ交代か。

総師が立ち上がろうとした時、淡い光を放ち続けていた魔方陣が急に白い光を放つ。

あまりの眩しさに魔方陣から視線を反らす。

再度魔方陣に目を向けると、お尻をさする明らかにサイズのあっていない服を着た幼い少女が座っていた。

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