ダウル村
翌朝目が覚めるとラリマーはもう起きているようで、テントの中にはいなかった
外からは隊員達の声が聞こえてくる
寝過ごしちゃったかな?
目を擦り起き上がると太ももの内側に違和感を覚えた
うわぁ筋肉痛だ
昨日1日馬に乗ってたからなぁ
テントを片付ける隊員達を尻目に朝食を急いで食べ、今日もジオラルドと一緒に馬に乗って移動する
歩いている隊員達と話をしながら昨日と同じように休憩と昼食を取り、ひたすら街道を進む
段々と荷物を乗せた馬車が増えてきているようだ
日が落ち始める頃、漸く村らしきものが見えてきた
馬車が五台程並んでいる
「あそこがダウル村だ」
村の前には櫓が建っており、村の入り口は兵士が両脇を固めている
どうやら検問を行っているようだ
隊員達は最後尾の馬車の後ろに並んだ
暫く待って検問を終え、村の中に入る
ジオラルドは馬からおり、手綱を引きながら柚子が落ちないようゆっくりと歩きだした
「うわぁ賑やかですね!」
村は馬車がすれ違っても余裕があるほど道が広く、左右には店や宿屋が多く並んでいる
店じまいをしているしようとしている所も多かったが、それでも人通りは多く賑やかだ
「ダウル村は商人だけでなく冒険者も多く立ち寄る村なんですよ」
ラリマーが馬を引きながら柚子に並び説明してくれた
「そうなんだ」
様々な店を通り過ぎながら街並みを眺めると、どうやら武器屋、薬屋など冒険者が必要としている物を取り扱っている店が多いようだ
「ダウル村は明後日発つので明日は色々見て回るといい」
「本当ですか!うわぁ!楽しみだな」
「私もお供いたしますね」
「ありがとう。宜しくねラリマー」
「はい」
「そろそろ宿屋に向かうぞ。今日はゆっくり休みなさい」
ラリマーと笑いあっていると、ジオラルドが切り出して再び歩きだす
村の奥にある3階建ての大きく綺麗な宿屋に入り、隊員達と1階の食堂で夕食を取り二日ぶりにシャワーを浴びて眠りについた
朝起きて着替えをして朝食を取る
昨日までは動きやすいゆったりとしたズボンを履いていたが、今日はスカートだ
隊員達はもう宿屋を出ているのか、食堂には柚子とラリマーしかいない
この村も食事の改革が進んできているようで、朝食は白パンとスープ、目玉焼きがでた
「この宿には冒険者さんはいないの?」
「ここは主に騎士達が利用する宿屋なんです。騎士が泊まっている間は冒険者は受け入れしていないようですよ」
「騎士達はよくこの村に来るの?」
「そうですね……年に数回利用しているようです。ここは宿屋の中でもグレードが高い方なので冒険者でも裕福な方が利用されるんですよ。安い宿屋だと部屋にお風呂はついていませんし、ベッドも硬いものが多いですね」
確かに設備は良く整っていて宿屋自体も豪華ではないものの凄く綺麗だ
ベッドもふかふかで寝心地が良かった
朝食を終え、いよいよ商店街を見て回る
1㎞程商店街は続いており、昨日見たときより人通りがかなり多い
「どこから見て回ろう……」
店の前に看板はあるのだが、大きなお店は武器屋、道具屋、薬屋などが目立つ
「先ずは魔道具を取り扱っているお店に向かいましょう。ジオラルド様から頼まれた物があるんです」
「わかった。案内よろしくね」
宿屋から出て、村の入り口方面にゆっくりと歩く
心地よい風が吹いていて歩いていて気持ちがいい
五分ほど歩いき、ラリマーが古びたこぢんまりとした店の前で立ち止まる
「ここですね。私も以前良く利用していた魔道具のお店です」
ラリマーが店の扉を開くと、カランカランとドアチャイムの音がした
そういえばラリマーの過去って聞いたことなかったな
と思いながら店に入ると、中は薄暗いが以外と広く魔道具であろう何かが棚の中に所狭しと陳列されている
棚を見ていると、カウンターの奥から背の曲がった老人男性が出てきた
「いらっしゃい」
老人は無愛想に言うと、カウンターの椅子に座る
「ファラムさん、お久しぶりです。覚えていますか?」
老人はファラムというらしく、ラリマーの顔を見て少し考え込んだ後驚いたように立ち上がった
「ラリマーか!久しぶりだな……元気そうで何よりだ」
「ファラムさんこそお元気そうで。お変わりなく安心しました」
「いやいや、もう歳には敵わんよ。今日はどうしたんだ?」
「お顔を見るついでに買い物を」
「そうか、ゆっくりと見ていってくれ。そこの嬢ちゃんは?」
ファラムが柚子を見る
先程の無愛想な顔はもうなく、優しそうな笑顔だ
「初めまして、柚子と言います。ラリマーにお世話になってます」
頭を下げて挨拶すると、ファラムはほぅと感心したような声を出した
「良くできた子だな。魔道具は壊さなければ手にとって見てくれてかまわない。ここにあるものは私が作っている物ばかりだから、何かあったら遠慮なく聞きなさい」
「柚子様、私はファラムさんと少し話をして参りますね。少々お待ちください」
「わかった」
ラリマーがカウンターに行き、ファラムと話をしだしたのを見て棚に視線を移す
初めて見るものばかりだ
双眼鏡やランタン、鏡のようなものから指輪、ネックレス等の装飾品、後は用途のわからないものなど品揃えは多岐にわたっている
棚の中に麻袋に入った緑の魔石を見つけた
あ、リーファンもあるんだ
何気なしに値段を見ると、その高さに驚愕した
1個金貨1枚!?
確か平民の平均月収が大銀貨8枚だったよね……
ジオさんもラリマーも簡単に使ってるからもっと安い物だと思ってたよ
「何か気になるものでもありましたか?」
いつの間にか話を終えたラリマーが隣に来ていた
「リーファンがこんなに高価だったんだと思って見てたの」
「そうですね。あまり一般には出回っていませんから。私達が使っているものは国から支給された物なんですよ」
「そうだったんだ……お話は終わったの?」
「はい、お待たせ致しました。これを柚子様に」
ラリマーが小さな腰につけるタイプのポシェットを差し出した
ポシェットは淡いピンク色で10cm程のシンプルな物だ
「これは?」
「ジオラルド様から頼まれていたんです。柚子様用のマジックバッグですよ」
ラリマーが柚子の腰のベルトにポシェットをつける
「私の!?わぁ可愛い!いいの?」
「はい。大きな物は入りませんが、容量はたっぷりですよ。お気に召しましたか?」
「うん!後でジオさんにお礼言わないとだね」
「そうですね。柚子様が喜んでくださるとジオラルド様も嬉しいはずです。私の用事は終わったので他のお店も回ってみましょう」
ファラムにお礼を言って店を出てまた商店街をぶらぶら歩いていると、ジャムを売っている小さな店を発見した
「ラリマー、ここ!行ってみたい」
「ここはジャムや蜂蜜を取り扱っているお店です。気に入った物があったら遠慮なく言って下さいね」
蔦と小さな花で可愛く装飾されたお店に入ると、果物や蜂蜜の甘い匂いが広がっている
小さな店内には様々な種類のジャムが小さな可愛らしい瓶に入れて並んであり、奥には蜂蜜があった
「いらっしゃい。おや、初めてみるお嬢ちゃんだね」
恰幅のいい40代の女性が笑顔で出迎えてくれた
「凄くいい匂い」
棚に並ぶジャムを見ているとおばさんが自慢気に笑い、柚子の隣へ来た
「新緑の森で採れた果物を使ったジャムだよ。どれも日持ちするし美味しいよ」
「おすすめはありますか?」
「そうだねぇ、私が好きなのはこれとこれと……あとはこれだね」
おばさんが鮮やかな赤、紫、黄色のジャムを指差す
「じゃあそれを……って私お金持ってない!」
「柚子様、大丈夫ですよ。ジオラルド様から預かっている分で購入しますので」
今更気づいた事にショックを受ける柚子を見てラリマーが笑いながらお金を取り出した
「え、でも……」
人のお金を使うことにはやはり抵抗がある
でもジャムは欲しい
「良いんですよ。その為に預かってきたのですから。店員さん、おすすめの三種類と後2つ何か別の物を。それと蜂蜜も全て3つずつお願いします」
葛藤しているとラリマーが素早く支払いを済ませ、柚子を呼ぶ
「折角ですし柚子様のマジックバッグに入れておきましょう。ジオラルド様達にもお土産に渡してはいかがですか?」
「ありがとう。でもこんな小さなバッグに全部入るの?」
「これぐらい全く問題ありません」
ラリマーの言葉を信じてマジックバッグにジャムを詰めていく
「本当に全部入った……」
しかも重さを全く感じない
なんて便利なバッグ!
「お嬢ちゃん良いところの子かい?マジックバッグなんて高価なもの持ってるなんて」
声を掛けられて顔をあげると、おばさんが柚子のバッグをまじまじと見ている
「いえ、違いますけど……これってそんな高価なんですか?」
「普通のマジックバッグでも庶民には中々手が出せないんだよ。それ特注品だろ?かなりの値がするはずだよ」
そうなの?
ラリマーを見上げると、笑って誤魔化された
そんな高価な物だとは思わなかった
大切に使おう
ジャム屋を出て暫く商店街を探索し、宿屋へ戻った




