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リーン


リ―――ン


……鈴の音?


え!?

目を開けると一面闇の世界だった


リーン

と澄んだ音が規則的に聞こえる


慌てて立ち上がろうとするが、足元も真っ暗で床がない


ここどこ?

回りを見渡しても闇一色で広さすらわからない

リーン


不安からか肌寒さを感じて、体を抱き締める


リーン


鈴の音はどこからしてるんだろう

回りは闇一色で何も見えない為、耳を凝らす


リーン


リーン

段々と音が大きくなり、近付いてきているようだ


リーンリーン

大きくなる音に合わせて数も増えてくる


うるさい!


リーンリーンリーン

あまりの音量に思わず耳を塞ぎ、顔を膝に埋めて目を瞑った




リーン


急に音が小さくなり、今度は心地よい風が吹いてきた


ん?風?

ゆっくりと目を開けると先程までいた景色とは全く異なり、広大な草原が広がっている


どういうこと?さっきまで真っ暗だったのに

鈴の音もいつの間にか消えていた


さらさらと流れる風が呆然と草原を見つめる柚子の髪を巻き上げる


「あら、随分小さなお客様ね」


「ひゃっ」

後から急に声が聞こえてきた


恐る恐る振り替えると、真っ白なレースの天蓋に覆われた空間があった

天蓋の上には無数の鈴がついている

風は吹いているのだが鈴は全くなっておらず、柱もないその空間は異様に浮いていた


天蓋の下からは女性と思われる裸足の細い足が奥の方に見えている

(ここは何処?)

と聞こうと思ったのだが声が出ない


声が!どういうこと?

喉を押さえて口をはくはくと動かす


「あら?あなた……」

女性は音をたてずに天蓋へ歩いてくる

レースに透けて女性のシルエットが見えてきた

150cm位の華奢な女性だ

緩くウェーブする黒髪がお尻まで伸びている


「声が出ないのね?……あなたはまだここに来るには幼すぎるわ。もう少し成長してからまたいらっしゃい」


幼すぎるってどういうこと?ここは何なの?あなたは誰?

頭の中に疑問は無数に浮かぶのだが、声が出ないので聞くことは出来ない


せめて女性の顔を見ようと天蓋へ手を伸ばすと、何かに阻まれるようにパチリと指先に電気が流れた

痛い!


痛みはそこまで酷くなかったのだが、急な衝撃に手を引いた


「あらあら、おいたしちゃ駄目よ?」

クスクスと面白そうに女性は笑っている


「さぁ、もう戻りなさい」


……あれ、急に眠気が

瞼を開けていられない程の強烈な眠気が襲う

眠気に逆らえず目を閉ると意識が薄れていった


「ふふっまたいつか会いましょう。その時はあなたの声を聞かせてね」

耳障りの良い優しい声が聞こえた気がした




「……んっ」

目を開けると柚子の部屋だった

どうやらベッドで眠っていたらしい


いつベッドに入ったのかな?


「柚子様!?お目覚めになりましたか!何処か痛いところなど御座いませんか?」

ラリマーが慌てた様子で柚子に駆け寄る


「ラリマー?どうしたの?」

どうして慌てているんだろう


「先日の事を覚えていらっしゃいますか?」

柚子の体を支え、座らせる


「先日の事?」

ぼやける頭を振り、記憶を辿る

確か総師に連れられて真っ白な部屋に行って

本を触って……

そこから先の記憶がなかった

何か夢を見ていた気がするのだが、思い出せない


「総師が倒れた柚子様を抱えて出てきたときは心臓が止まるかと思いました。無事で良かった……」

目に涙を浮かべてほっとしたようにラリマーが笑う


「私、倒れていたの?」

全く記憶にない


「ええ。柚子様は2日間眠ったままだったのですよ」


ラリマーから水を貰い、少し口につける

2日!?信じられない……


「柚子!」

ジオラルドがノックもせずに部屋へ入ってきた


「ジオさん」

焦った様子のジオラルドにまた迷惑を掛けてしまった、と申し訳なくなる


「目が覚めたのだな。良かった……大体の話は総師から聞いているが何があったのだ」


「ご迷惑おかけしてすみません。私もよく覚えていないんです。本に触った時までは記憶があるんですけど……」

しゅんとして頭を下げる


「そうか。まぁ柚子が無事ならそれで良い」

ジオラルドはほっと息を吐きながら柚子の頭を優しく撫でてくれた


「2日も眠ってたって本当なんですか?」


「ああ。総師に看てもらったのだが、何処にも異常は見つからなかったので直ぐに目覚めるだろうと言われていたのだが」


「そうなんですね」

ラリマーと総師にも迷惑掛けちゃったな、と落ち込んでいるとお腹から蛙の鳴き声のような低い音が響いた


お腹なっちゃった!恥ずかしい

顔を布団で隠すとジオラルドが小さく笑う

「腹が減っているならもう大丈夫そうだな。ラリマーすぐに食事を」


「かしこまりました」


ジオさんが笑うなんて珍しい

顔を見ようと布団を下ろしたのだが、ジオラルドはいつもの無表情に戻っていた


残念。笑った顔見たかったな


「総師ももうすぐ到着するだろう。念のため看てもらうように」


「わかりました」


ラリマーは消化に良いようにと薄味のスープを持ってきてくれた

「ラリマーありがとう」

ベッドに座ってゆっくりとスープを飲みながら時計を見ると、12時を過ぎている


スープを飲み終わり、ちょっと足りなかったなと思っているとラリマーが夕食は早目に取りましょうねと言ってくれた

流石ラリマーだ


暫くするとコンコンとドアをノックして総師が入ってきた

「おお!柚子、良かった。心配しておったぞ」


「総師ご迷惑おかけしました」

頭を下げると総師は謝るのは儂の方じゃとベッドの横に座る


「今まで儂の勘が外れた事はなかったのだがの……慢心していたようじゃ。すまなかった」


総師が頭を下げるのを見て慌てた

「顔を上げてください!私は大丈夫です!」


「危険な目に合わせるつもりはなかったのだ」


尚も顔を上げない総師を覗き込んで、笑顔で大丈夫ですよと伝える


「ありがとう。柚子は優しい良い子じゃの」

柚子の笑顔を見て漸く総師にも笑顔が戻った


「倒れた時の事を聞いても良いか?」


「はい……といっても本に触れてからの記憶はないんですけど」


「何も覚えておらんのか?」


「うーん……あっ!なんだか夢を見ていた気がします」


「夢?どんな夢じゃ?」


「それが覚えてないんです」

夢を見たということは覚えているのに内容が思い出せずモヤモヤする


「そうか………まぁ良い。大丈夫そうだが一応体を看てみようかの」


「お願いします」

総師の指に青い光が灯り柚子の頭、首、腹、足と順に触れていく

不快感は全くなく、見た目とは違い光は少し暖かかった


「ふむ、異常はないな。念のため今日はこのまま部屋で過ごすように」


「食堂へ行くのも駄目ですか?」

なんだか体が鈍ったような気がするので少しは動きたい


「食堂ぐらいなら良いじゃろう。だが無理はせぬようにな。後、呉々も聖女の間に行って倒れたとは言わぬように」

総師は最後にもう一度すまなかったと謝り、部屋を出ていった


「私も執務室に戻る。夕食は共に取ろう」

静かに見守っていたジオラルドも総師の後を追う


夕食までは言われた通り本を読んで大人しく過ごした


夕食の時間になり、執務室に寄りジオラルドに抱えられて食堂へ向かう

自分で歩くと言ったのだが断られてしまったのだ


食堂へ入ると食事を取っていた隊員達が柚子の元へ駆け寄ってきた

「柚子ちゃん!元気そうで良かった」

「急に倒れたって聞いて心配したよ!」

「柚子ちゃんを見るとやっぱり癒されるな」


皆心配してくれてたんだ……

嬉しそうな隊員達の顔を見て申し訳なさと嬉しさが込み上げてくる

「皆さん心配かけてごめんなさい。ありがとうございます」

笑顔で応える隊員達と話をしながらゆっくりと食事を取り、部屋へ戻った


ラリマーに体を拭いて貰い、またベッドに入る

シャワーを浴びたいと訴えたのだが今日は我慢して下さいと押しきられた


記憶はないけど流石に2日も寝てたからまだ眠たくない

読みかけだった本を取り、うつ伏せになって続きを読んでいく

読んでいるのは聖女に纏わるお伽噺だ

魔物に苦しめられていた民衆を救い、荒れた土地を癒して旅をする聖女

聖女は旅の途中で恋をし、国を癒し終わると全ての民に祝福されて結婚し幸せに暮らしたという話だった

本を読み終え、明かりを消して目を瞑る


梨奈が民衆を救う旅なんて出来るのかな

若返った梨奈を思い出すとなんだか嫌な予感がする

あの王子も国王になるには性格がちょっとな……


そういえば会議がどうなったか聞くのを忘れていた

明日ジオさんに聞いてみよう


まだ眠くないと思っていたのだが、考え事をしているといつの間にか眠りについていた

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