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アランドルの悪戯と聖女の書

いつもより寝たのが遅かったからか、朝はラリマーに声を掛けられるまで目覚めなかった

まだ眠い目をごしごしと擦り、ベッドから起き上がる

「お早うございます、柚子様」

ラリマーがカーテンを開けると、眩しい日射しが入ってくる


「お早うラリマー」

時計を見ると10時を過ぎていた


寝坊しても誰からも怒られない

なんて贅沢な暮らしなんだろう


顔を洗い服を着替える

「今日の朝食はこちらにお持ち致しました」


昨日食べ過ぎたからあんまりお腹空いてないな

「ありがと」

椅子によじ登り机を見るといつもより少な目のスープと黒パンが少し乗っていた


流石ラリマー

これぐらいなら食べられそうだ


朝食を食べ終わり、執務室へ向かった

執務室を開けるとナックスとアミューがソファに座り仕事をしており、執務机にはアランドルが座っていた

「おー、柚子おはよう。ジオならいないぞ」


ジオさんが執務室にいないなんて珍しい

「おはようございます。何処に行ったんですか?」


「王城だよ。法の改正の会議だと。多分夕方まで戻らないと思うぞ」

あいつも忙しいよなーと椅子に背を預けて背伸びしている

アランドルが仕事をしている様子はないようだ


会議か……この先私が出来ることはこの国にはない料理を教えること位かな

昨日は興奮していて気が付かなかったが、パスタやパイ、調理パンが全くなかったのだ

兎も角、会議が良い方向に進んでいますように!


「そうなんですね。私は今日何をしましょう」

また本でも読もうかな?この国の事ももう少し詳しく知りたい


「あーそうだな……訓練でも見に来るか?」


予想外の提案に思わず聞き返す

「訓練……ですか?」


「今丁度第1遠征隊と第2遠征隊が合同訓練やってんだよ。俺も暇だし行くか」

そう言うなり立ち上がって柚子へ近づき、荷物を持つかのように柚子を小脇に抱えた

「わっ」

急に体が浮き上がり驚く


アランドルがそのまま執務室を出ようとするとラリマーが立ち塞がった

「アランドル団長その抱き方はお止めください」


「え?なんでだ?」


「柚子様は荷物ではないんですよ。ジオラルド様を見習ってください」


アランドルは少し考え込み、困ったように頭を掻く

「ジオみたいに抱いたら俺頬ずりするの我慢できねぇよ?」


え、それは嫌だ

ラリマーを見上げ、首を振る

「……私が柚子様をお連れしますのでアランドル団長は先に向かっていて下さい」


「まぁ今日はこのままで良いじゃん。とりあえず行くぞ」

ラリマーをするりと避け走り出した


「あ!お待ちください!アランドル団長!」

ラリマーが慌てて追いかけてくる


私歩けるんだけどな……

と思いつつ口を挟むのも面倒になり体を預けた


おー早い!

アランドルが階段をかけ降りて行く

どんどん過ぎ去る景色に少し楽しくなってきた


後ろを見てみるとはラリマーがお待ちください!と叫びながら追いかけてきている

あっという間に1階に降り医務室と武器庫を通りすぎた先、訓練場へ繋がる扉が開け放たれていた

訓練場は広く屋外になっており、鎧を着た騎士達が遠くで剣や盾を持って訓練している

アランドルは扉を通り抜けると、急いで扉とかんぬきを閉めた

えっ!?ラリマーが来てるのに

これでは入れない


「ふーっ。ラリマーは相変わらずお堅いなぁ」

額を袖で拭いながら数歩歩いた所で後からバキバキッと大きな音が聞こえた


振り向くと、扉は大破しており破片が燃えている

えっ……!?何が起こったの?

ラリマーを見ると体が赤い光に包まれている


「やべぇやり過ぎた」

アランドルが焦って柚子をおろし、驚いてこちらを見ている騎士の方へ走り去っていった

「柚子様大丈夫ですか?」

ラリマーが柚子の様子を確認すると、アランドルへ視線を移す


「私は大丈夫。えっと……ラリマー?」


「少し下がっていて下さいね」

柚子を背に庇うようにラリマーが前に出た


ラリマーの顔が怖い

唇は弧を描いて笑っているが、目には怒りを孕んでいる


「アランドル団長?どういうおつもりですか?」


「いや、これはその……」

アランドルが騎士の後ろに隠れている


「アランドル団長?往生際の悪い……覚悟は宜しいですね?」

ラリマーの纏っている赤い光が大きさを増していく

爆炎アオス・ブルフ

ラリマーが言葉を発した瞬間騎士の近くで爆音と共に爆発が起こった


「えっ!?ラリマー!?やり過ぎじゃ……」

おろおろとする柚子に纏う光を消したラリマーがいつもの優しい顔で笑いかける

「この程度で怪我する方ではないので問題ありませんよ」


土埃が収まり騎士達の声が聞こえてきた

「団長のせいで俺達まで巻き込まれたじゃないですか!」

「早く謝ってくださいよ!」

騎士に押されてアランドルが前に出てくる

怪我人はいないようだ

「その……悪ふざけが過ぎました。悪かったです」

手を合わせて頭を下げるアランドル

髪が少し焦げていた


「わかって頂けて良かったです。参りましょう柚子様」


「うっうん……」

ちらりと視線をアランドルに移すと騎士達に説教されて体を小さくしていた


ラリマーは怒らせないようにしよう

と心に決め昼食までは読書をして大人しく過ごした



昼食を取っていると総師からリーファンが届いた

内容は見せたいものがあるから昼食後王城へくるようにとの事だ


ラリマーに伝え、昼食を取った後馬車で王城に向かい総師の部屋へ行った

「柚子急に呼び出してすまんかったのぉ」

少し疲れた様子で総師は柚子を出迎える


「いえ大丈夫です。会議で何かありました?」


「いや、会議は順調に進んでおるぞ。後は細かい事を決めるだけになったから儂は抜けてきたのじゃ」


良かった

これで少し肩の荷が降りた

「じゃあ他に何か?……あっ!魔法の授業ですか?」


「まぁ似たようなものじゃな。ちと柚子に見せたいものがあるのだ」

総師は柚子を抱えて魔方陣へ近付く


「柚子、それとラリマー。これから行くところは本来そなたらは入ることはできん。他言無用で頼むぞ」

ニヤリと総師が笑う


「そんな所になんでわざわざ?」


「ちと儂の勘がいっておるのじゃ」


「勘って……」

「柚子様、ここは総師に従いましょう」

ラリマーはいつもの優しい笑みを浮かべている


ラリマーがそう言うのだったら……

「わかりました」

柚子が頷くと総師が魔方陣に魔力を流し転送した


転送した先は真っ白な小さな廊下だった

窓もないのに明るく、装飾が一切なされていないシンプルな廊下が5m程続き、奥には扉があった

総師は扉の前まで進み、ラリマーを見る

「ここから先は儂と柚子のみで行く。ラリマーはここで待っていなさい」


「承知しました」


この先に何があるんだろう?

少し緊張してきた

総師は扉に向き直ると柚子を抱えたまま歩きだす


えっ!?

扉にぶつかる!と思わず目を瞑ったが、衝撃はこない

恐る恐る目を開けてみるとそこは召喚された場所に似た部屋だった

小さめの作りにはなっているが真っ白な長方形の部屋だ

こちらも窓はないのに明るく、中心には淡い光を放つ魔方陣とその回りには5本の細い柱が立っている


あれは、本?

魔方陣の上、丁度総師の胸辺りの高さに本が開いた状態で浮いていた

本の回りには円上に淡い光が灯っている

本は誰も触れていないにも関わらず絶えず何も書かれていない真っ白なページがめくられ続けているが左右の厚さが変わることはない


「総師これは?」


「ここは聖女の間。儂と魔術師長の許可を得たもののみが入ることができるのじゃ。そしてあの本は聖女の書と呼ばれておる」


「聖女の書……真っ白ですよ?」


「そうじゃな。聖女の書は聖女の認めた者のみ内容がわかると言われているのじゃ」


聖女の認めた者のみ?

聖女は梨奈なのに総師はなんでここへ私を連れてきたの?


総師は書の近くまで歩みを進める

「柚子、聖女の書に触れてみるのじゃ」


「え?でも……」


「魔術師長の許可も得ているので問題ないぞ」


そういう事を聞いてるんじゃないんだけど……

まぁいっか

そっと聖女の書へ手を伸ばす

光を通りすぎ、恐る恐る書へ触れた瞬間


何!?

読み取ることの出来ない大量の文字が頭に流れ込んでくる

頭痛い!

耐え難い頭痛に頭を押さえた


「柚子!?どうしたのじゃ!?」

総師の言葉に答える余裕はない

頭痛を伴って尚流れ込んでくる文字列に短い悲鳴を上げた


どれ程たったのか、目を瞑り頭を押さえて耐えていると漸く頭痛から解放されると同時に気を失った

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫さん、誤字ってる誤字ってる!! それ、第2騎士団員の人が知ったら闇討ちされるヤツ! というかこの前、自分で誤字連絡してたよね!?
[一言] これは性女認定確定かな? 活動報告でも書きましたが無理する必要は無いですからマイペースに投稿して下さい。
2020/02/11 14:22 退会済み
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