顔合わせ
夕食が終わり、お酒を飲みだす隊員達に見送られながら部屋に戻った
疲れた……
だけど充実した1日だったな
明日は朝から王城へ行き、総師達と法律を変えるための作戦を立てるのだ
ラリマーに手伝ってもらい湯浴みを済ませ、ベッドに入るとすぐに眠りについた
翌朝、味噌汁と黒パンという微妙な組み合わせだが味は美味しい朝食を取り、執務室へ向かう
ジオラルドは既に朝食を済ませており、仕事をしている
ラリマーがドアをノックしてから執務室へ入る
「ジオさんおはようございます」
「ああ、おはよう」
書類から顔を上げ、柚子の顔をみてからまた書類に視線を落とす
「もうすぐ切りが尽くから暫く座って待っていなさい」
今日も忙しそうだ
「王城にはラリマーと二人で行きましょうか?」
「いや、私も協力すると言ったからな。遠慮する必要はない」
また迷惑掛けてる気がするんだけど……
まぁジオさんが言うならいっか。正直一緒にいてくれた方が心強い
「わかりました。お願いします」
ソファに座り、ラリマーが入れた紅茶を飲んでいるとジオラルドの仕事が一段落したようで、今日もジオラルドに抱き抱えられてラリマーと共に王城へ向かう
もう一度仕事は大丈夫なのかと聞いてみたら、後はベリルに簡単な仕事を任せているので心配ないと言われた
「第2騎士団副団長ジオラルド・ヴァン・ルベライトだ。総師に用がある。東棟へ転送を」
警備騎士に城門を開けてもらい、転送魔方陣に乗る
一瞬の浮遊感の後、見覚えのある空間についた
菫色の豪華なステンドグラスと、絨毯の引いてある正方形の部屋だ
奥には総師の部屋に続く魔方陣がある
やっぱり少し気持ち悪い……
「柚子様、転送酔いですか?」
ラリマーが心配そうに顔を覗き込む
「大丈夫です」
「無理はするな。もう一度転送したらポーションを飲みなさい」
笑顔を作って答えたつもりだったのだが、上手く出来ていなかったようでジオラルドから小さな瓶を手渡される
「ありがとうございます」
瓶を両手で握りしめると、もう一度転送した
この前より多少はましになったけど……やっぱりきつい
ポーションをちびちび飲んでいると、体が楽になっていく
「よく来たな。転送酔いは大丈夫か?」
総師が柚子の顔色を見ながら近づいてくる
頷きながら部屋を見る
あれ?この前と違う部屋だ
てっきり総師の部屋につくものだと思っていたがここは会議室のようで長机がコの字型に並んでおり、一人掛けのソファに見覚えのない人が3人座っていた
ソファは全部で8個あるから後二人来るのかな?
「顔色は良さそうじゃな。とりあえず掛けなさい」
「失礼します」
ジオラルドと右側のソファに隣同士で座る
直ぐに総師の侍女が紅茶を入れてくれた
「紹介しよう。左から魔術師長、商業ギルド長のセドニー殿、宮廷料理人のプレセリブだ」
「初めまして。柚子と言います。宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げた
魔術師長は総師のローブと同じような、複雑な魔方陣が銀色の刺繍で描かれた黒の長いローブを着ており、癖の強い青みがかったグレーの髪が肩の長さまで伸びている
歳も総師と同じ50代くらいだろう
薄い茶色の目は力強く、醸し出される威厳に圧倒される
セドニーは肌触りの良さそうな白いシャツに深緑のベスト、茶色の細身のズボンに黒のブーツを履いており、人の良さそうな笑顔を浮かべている
歳は40前半ぐらいだろうか、茶色の短い髪をオールバックにしている
プレセリブはジオラルドと同じ20歳くらいで、ピンクに近い茶髪を短く刈り上げ、コックコートに黒のスラックスを履いている気の弱そうな男だ
「魔術師長もいらっしゃったのですか。聖女の教育で忙しくなさっているのではないですか?」
ジオラルドの言葉に魔術師長が不機嫌そうな顔をする
「フィガロ王子が聖女の教育は来月からと言って聞かぬ」
魔術師長の言葉にジオラルドが立ち上がった
「来月から!?何を悠長な事を……」
「何度も進言しておるのだ。だが聖女は異世界に来たばかりで無理は出来ないと頑なだ」
「儂も先程魔術師長の話を聞いて驚愕したぞ。フィガロ王子は国が危機に瀕していることを分かっとらんようじゃな」
はぁーっと3人が深いため息をつく
聖女って梨奈の事だよね
国の危機ってどういうことだろう
前に総師が言っていた聖女の力が関係するんだろうけど……
「聖女様が召喚された事は下町でも噂になっていますよ。早く動いて頂かないと民の不満も溜まる一方なのですが……」
セドニーが困ったように笑う
「肝心の聖女の様子はどうなのじゃ?何か聞いてはおらんか?」
皆の視線がプレセリブに集まった
プレセリブはおろおろと視線をさ迷わせ、下を向く
「僕は下っぱなので詳しい事はわかりませんが、侍女の話によるとフィガロ王子が常に付き添って豪華なドレスや宝石を与えているので、大変満足そうにしていると聞きました」
再度皆が深いため息を吐くと、誰かが転送してきた
「おはよー皆揃ってるー?」
水色の緩く巻いた長い髪をざっくりと一つに纏め、深い青の目を悪戯っ子のように細めて手を上げている30代前半と思われる女性
その後ろには淡い菫色の髪と目をした優しげな面立ちの同じく30代前半の男性が立っていた
二人とも菫色の長い白衣を着ており、飾り気のないシンプルな白いシャツに下は黒のスラックスを履いている
「全員揃ったな」
総師が先程の空気を払うように咳払いをして紅茶を飲む
「あなたが異世界から来たっていう子どもね!本当に珍しい髪と目の色をしてるのね~」
ぐいっと女性が柚子に近づいてきて、あまりの素早さに驚いた
「わっ!えっと、初めまして。柚子と言います」
「すごーい!ちゃんとしてるね!偉い偉い。私はリフィアンよ」
ニコニコと笑いながら頭を撫でられた
「リフィー、子どもが驚いているぞ。柚子君、うちの師長がすまないね。私はロベルディだ。宜しく頼む」
どうやらリフィアンが魔術具師長のようだ
ロベルディさんはリフィアンさんの助手かな?
リフィアンはロベルディにエスコートされ、空いている席に座った
二人は親密な関係なのかな?ちょっと聞いてみたい
それとリフィアンって何処かで聞いたことある気がするんだけど……何だったかな?
リフィアンを見つめていると、目が合った
「どしたの?そんなに見つめて」
猫のようなくりくりとした目を面白そうに細めて頬杖をつく
「あっすみません。リフィアンさんのお名前に聞き覚えがある気がして……」
柚子の疑問に答えたのはロベルディだ
「聞き覚えがあって当然かもね。リーファンを開発したのはリフィーだから」
「そうだったんですか!凄いですね」
頭の中に文章を思い浮かべるだけで相手に手紙として届く、便利な緑の小さな魔石を思い出す
「そうよ!私こう見えて結構凄いの。自分で作った魔術具に自分の名前をつけるのが子供の頃からの夢だったからねー」
ふふっと嬉しそうに笑うリフィアンが可愛らしく思えた
「さて、紹介もすんだところで、そろそろ本題に入るかの」
リフィアンとロベルディの前に紅茶が置かれるのを確認して、総師が切り出した




