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実食

ラリマーに紅茶を入れてもらい、皆で休憩だ

「柚子様、ジオラルド様に本日の夕食は皆様で取っていただけるように手配して頂いております。まだ時間がありますが一度お部屋に戻りますか?」


「いえ、明日の調理の事を話したいので残ります」

残りのスープストックの使い方等伝えたいことはまだまだある


「かしこまりました」


「もう明日の話し?柚子ちゃんは真面目だねぇ」

クレースが疲れた顔をして柚子の頭を撫でようとしたが、ラリマーから手を叩かれた

「えっ何で!?」


柚子も驚いてラリマーを見る

「柚子様が穢れてしまいますので」

にっこりと笑ってラリマーが答える


「アイドは撫でてるじゃん!」


「アイドさんは邪な心を持っていらっしゃいません」


「酷いこと言うなぁ。俺こんな子どもに何かするほど不自由してないから大丈夫だよ?」

わざとらしく傷ついた顔をしている


うわぁクレースさんて遊び人なんだ……

「その言動自態が邪だと言っているんです」


「二人ともそこまでにしといて下さいよ、嬢ちゃんが引いてますよ」

見かねたグナールが止めに入ってくれた


「柚子様、クレースが申し訳ございません」

「俺かー」

顔に手を当てて首を振るクレースを無視して話を進めることにした


「残りのスープストックなんですが、冷めてくると油が浮いてきます。その油は炒め物に使えるので何かの容器に入れておいて下さい」

野菜炒めをするときに使えば肉の旨味もでて美味しいのだ

「脂を取った後のスープは朝食と昼食、二回に分けて使います。一つは野菜と味噌を加えて作る味噌汁。味噌は沸騰させると風味が逃げてしまうので、最後に入れてください」

グナールが慌てて柚子を止める

「ちょっと待ってくれ!そんな一遍に言われても覚えられねぇよ!」


色々伝えておかなきゃと思って焦っちゃった

「ごめんなさい。メモ用紙とかありますか?」


「こちらをお使いください」

ラリマーが何処から取り出したのか、薄茶色の紙と鉛筆のような物をグナールに渡す

「助かる」

グナールが受け取るのを見て、もう一度最初からゆっくり説明した


「二つ目はトマトと醤油を加えて作るミネストローネです。今日シチューに使ったのと同じ野菜と刻んだトマトを煮込んで醤油で味を整えます」

今日食材を見に行った時に痛みかけのトマトを見つけたのだ

「どの料理にも共通することなんですが、大事なのは少しずつ調味料を入れて、味を見ながら足していくということです。味を濃くするのは簡単ですが、薄くするのは難しいので徹底してください」

グナールがメモを取れているか確認しながら話していく

ついでに干し肉を使ったスープストックと、野菜炒めの作り方を伝えた


思い付いたのはこれくらいか

食材が増えればもっと色々作れるんだけど……あと小麦粉は最優先で欲しい

そう考えながら過ごしていくと、そろそろ夕食の時間になる

「一度シチューを暖め直してから出しましょう」

焦げ付かないようクレースがシチューを暖めている間に、アイドが食器を、グナールが黒パンと干し肉を準備する

今日は干し肉は少なめだ

シチューがメインだからね!

一応おかわりできるくらいはあるけど、それでも足りない人は干し肉を食べてもらおう


食堂の長机に暖めたシチューと黒パン、干し肉を並べていると隊員達が続々と食堂へやってきた

「柚子ちゃーん、楽しみに待ってたよ!」

「早く飯食ってエール飲みたい」

「柚子ちゃんのエプロン姿……可愛い」

一気に食堂が賑やかになる

隊員達がある程度席についた所で、ジオラルドと総師が入ってきた

なんで総師まで!?

驚いて見つめていると、いい笑顔で柚子に手を降っている

「ジオさん!総師も、来てくださったんですね!」

パタパタとジオラルドの前の柚子の席に向かう

「そなたが夕食を作ると小耳に挟んでな。気になったので来てみたのじゃ」

総師は期待しているぞと言いジオラルドの隣に座った

いつもは各自でそれぞれ自由に料理を取っているのだが、今日は配膳をクレース達にお願いした

隊員がシチューの肉ばかり取るのを防ぐためだ

クレース達が手分けして配膳して回っていると、ベリルが来た

「よかったー間に合った。副団長、総師お疲れ様です」

敬礼をして柚子の隣の席につく

柚子達の前にラリマーが料理を置く

「初めて見る料理だな」

ジオラルドが興味深そうにシチューを見ている

「良い匂いがするな」

総師は匂いを確認していた

「柚子ちゃんの言う美味しい食事がどんなものか、お手並み拝見、だね」

ベリルは柚子の頭を撫でてニコニコしている


皆に食事が行き渡るのを確認し、クレース達も席についた


柚子は椅子の上に立ち、皆を見回す

「皆さん、今日の夕食はシチューです。お口に合うかわかりませんが、召し上がってみてください。では、いただきます!」

手を合わせる柚子を見て、皆が不思議そうに首を傾げながらも手を合わせてシチューを恐る恐る口にする


なんか緊張する……

クレース達も緊張した面持ちで、隊員達を見ている


一瞬の静寂の後、隊員達が一斉に凄い勢いでシチューを食べ始めた

「なんだこれ!うめぇぞ!」

「こんな美味いもんこの世にあったのか!」

「俺おかわり」「俺も俺も!」

競い合うように食べている隊員達に安堵する


良かった……

「皆さん、おかわりもありますので次は黒パンを浸して食べてみてくださいね!」

そう言って席に座り直した

ジオラルド達は柚子が座るのを待って、シチューを一口食べる


「どう……ですか?」

隊員達には好評みたいだけど、ジオさん達はどうだろう


「……美味いな」

「肉の臭みがなくまろやかで深い味わいじゃの。複雑な味だがきちんと纏まっていて、まるで芸術作品のようじゃ」

「美味い……なんだこれ、美味い。柚子ちゃんすげー」

皆の反応に笑みが溢れる

「お口に合うようで良かったです」

ほっと息をついて、柚子も食事を始める


美味しい……

野菜と肉の旨味、そしてバターのコク深い味わいが合わさって食欲をそそる

骨から削ぎ落とした肉もホロホロと柔らかだ

黒パンをベリルにスライスしてもらい、シチュー浸して食べてみる

合う!やっぱりこの組み合わせは間違いない!

暫く夢中で食べていき、お腹が満たされてきた所で賑やかな食堂を見回した


皆が笑顔で美味しいと言いながら笑顔で食事を取っている

隊員達の幸せそうな顔を見て、自分のやってる事は間違いじゃないと改めて認識した


「ジオさん、総師、美味しい食事の有用性わかってもらえますか?」


「そうだな。美味しい食事というのは人を明るくさせる効果があるようだ。隊員達の顔つきがいつもとは違う。私もこの料理を食べていると不思議と疲れが軽くなる気がしてくる」

シチューを上品に食べながら、ジオラルドの顔つきが柔らかくなる


「今まで食事というのは生きるために仕方のない行為だと思っていたのだがのぉ。この料理には考え方を根本的に覆す力があるようじゃ」

黒パンをシチューに浸して食べるのが気に入ったようで、黒パンの減りが早い


「それに、隊員達のモチベーションも上がりますよ!厳しい訓練の後には美味しい食事が待ってるってね。柚子ちゃん、これからは俺も協力するよ」

おかわりしたシチューを食べながら笑顔で柚子みるベリル


ちゃんと伝わってる。皆の言葉が嬉しい

ここでもう一押しだ!

「そうなんです!美味しい食事というのは凄い力を持っているんですよ。使える食材が増えればもっと色々な物を作れますし、新鮮な物が食べられるとその分栄養も沢山とれて、良いこと尽くめなんです!」


「えいよう、とはなんじゃ?」


「栄養とは、食事を摂ることによって体を維持したり、身体機能を向上させることを言います。食事を摂らないと力が出なかったりするでしょう?食事を摂るということは栄養を摂るということなんです」

「身体機能向上だと?」

ジオラルドが食い付いた!

「はい。バランス良くしっかりと栄養を摂ることで怪我や病気をしにくくなったり、筋肉がつきやすくなったり様々な効果があるんです」


「成る程な。じゃが、栄養と新鮮な食材はどう関係するのだ?わざわざ新鮮な物を食べなくとも食材の種類を増やせば良いだけのようにも思えるのじゃが」


その質問を待ってました!流石総師!

「一概には言えませんが、新鮮さが損なわれることで栄養も少なくなってしまう物が多いんです。折角食べていても、栄養が少なくなった後では効果も減少してしまいます」


「ふむ。そなたが新鮮さに拘る理由はそれか」

漸く納得したように総師が頷く


「単純に新鮮な方が美味しいという理由もあるんですけどね」

正直、こちらの方が理由として大きいのは内緒だ


美味しい食事の有用性を説いた所で、皆の食事がおわったようだ

「柚子ちゃん、美味しかったよ!」

「お袋にも食べさせてあげたいよ」

「ありがとなー!」


皆の言葉を聞き、笑顔でまた椅子に立ち上がる

「確かに指示を出したのは私ですが、実際に手間をかけて作ってくれたのは料理人の方々です。お礼を言うならクレースさん達にお願いします」


隊員達が拍手しながらクレース達にお礼を言っている

クレース達は照れ臭そうに、だが嬉しそうに笑っていた

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