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総師

浮遊感が消え、視界がはっきりしてきた


少し酔ったかも……

口元を抑え、周りを見渡す


幅5mくらいの正方形の部屋だ

左右には菫色を基調とした大きなステンドグラスがあり、部屋の中は明るく暖かい

中央には様々な色を使って描かれたメダリオン、その周りを同心円状に金色と銀色の蔓の紋様が複雑に編み込まれたステンドグラスと同じ菫色の絨毯が引かれている

奥には1m四方の魔方陣が描かれた扉が見えた


ジオラルドは扉の前まで進むと、魔方陣に手を当てた


「ジオさん、何をしてるんですか?」

口元に手を当てたまま尋ねると魔方陣が金色に光だす


「転送魔方陣に魔力を込めている。総師の元に転送するぞ」


また転送?酔ってるからちょっと待って!


またもや柚子が言葉を発する前に視界がぼやけ、浮遊感に襲われた


浮遊感はすぐに消え、視界がはっきりしてくる


気持ち悪い……

腹の中から酸っぱいものが込み上げてくるのを口元を両手で覆い、唾を飲み込んで必死に抑える

今度は涙で視界がぼやけてきた


「ジオラルド、待っておったぞ」

少ししわがれた低い声が聞こえてきたが、周りを見る余裕がない


「総師。御忙しいところ感謝します」

ジオラルドが応え歩き出す


待って!今動かないでー!!


「ジオラルド、ちょっと待て。転送酔いしているようだ」


ジオラルドが歩みを止める

「転送酔い?すまない柚子。気がつかなかった」

ジオラルドが眉間に皺を寄せ覗き込むが、それに応える余裕はない


「ほれ、これを飲みなさい」

小さな口の空いた瓶を手渡され、急いで口をつける


冷たい少し甘みのある水だった

こくんと少しずつ飲み込んでいくと、体が楽になる


「ありがとうございます。助かりました」

ほっと息をつき、声の主を見た


白い足首まであるローブを着た50代くらいの、背の高い体格の良い男性だ

フードは被っておらず、真っ白な髪を後ろで緩く結んでいる

ローブには魔方陣を複雑に絡み合わせた金色の刺繍が豪華に施され、中には揺ったりとした神官服を着ていた

皺の刻まれた優しげな顔、青い目を細め柚子を屈んで見ている


「もう大丈夫なようじゃな」

柚子から瓶を受け取り、腰についたポーチに仕舞った


「すまなかった。転送酔いなど経験したことがなかったので気が回らなかった。大丈夫か?」

眉間に皺を寄せたまま、ジオラルドが心配そうに顔を覗き込んでいる


「もう大丈夫です。ご心配おかけしました」

にこりと笑いジオラルドを見返すと、「そうか。次からは気を付ける」と頭を撫で顔を前に戻した


「柚子、この方が総師だ」


この人が! 偉い人って聞いてたから少し緊張してたけど優しそうな人で良かった

「初めまして。小山内柚子と申します」

ぺこっと頭を下げる


「幼いのにしっかりしておるのぉ。私はヘリオドールという。

言うのが遅くなったが、此度は召喚に巻き込んでしまってすまなかった。全責任は私にある。出来ることなら何でも協力しよう」

頭を深く下げ、拳を膝に当てている


この人が梨奈を召喚したんだ……

確かに怒りもあるし割りきれない

けどこんな見た目子どもな私にこれだけ真摯に謝られたら文句も言えないかな

諦めたようにため息をつき、首を振った

「一つ聞きたいんですが、私は本当に元の世界には戻れないんですか?」


「無理だ。すまない」

総師が頭を下げたまま首を振る


半ばダメ元で聞いたけどやっぱり無理なんだ……

ちょっと落ち込むな……


「わかりました。もういいです。頭を上げてください」


「本当にすまない」

総師は頭を上げるが、申し訳無さそうに顔を歪めたままだ


出来ないことを嘆いたって仕方がない

ついてないのは昔からだ!

よし!気持ち切り替えよう!

「それより協力してほしいことがあるんです」

笑顔を作って総師を見上げた


「私に出来ることなら何なりと」

ほっとしたように笑うと、ソファーに座るよう勧められる


改めて部屋を見てみると、装飾品はこちらの方が豪華だがジオラルドの執務室と似た作りになっている

三人掛けの皮張りのソファーが向かい合って2つあり、背の低い木のテーブルを挟んでいる

奥にはドラマ等でよく見る社長室にありそうな両側に引き出しの付いた木のテーブルと座り心地の良さそうな椅子がある

本が大量に並べられている本棚が壁一面にあり、もう一方の壁には柚子が先程貰った水の入った小さな瓶や何に使うかわらかない初めて見るものが乱雑に置かれていた


ジオラルドは柚子をソファーに下ろすと、柚子の隣に立ち総師に向き合う

「総師、後はお願いしてもよろしいでしょうか」


「かまわん。そなたも忙しいだろうから帰りは私が送ろう」


ジオさん行っちゃうの?

忙しいって言ってるし私また面倒かけてるのかな


無言で総師と話を続けているジオラルドを見上げる


柚子の視線に気づいたジオラルドは、膝をつき目線を柚子に合わせた

「長く宿舎を開けることは出来ないのだ。

大丈夫、総師は良い方だから安心しなさい」


「そうじゃなくて……私また迷惑かけてるなって思って……」

言葉にすると落ち込んできた


ジオラルドは視線を下げる柚子の頭を優しく撫で、「迷惑ではない。気にするな」と言い立ち上がる


「では総師。よろしくお願いいたします」


「ああ」


ジオラルドは敬礼し踵を返すと扉にある魔方陣に手を触れ、消えた

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