王城へ
「総師って誰ですか?」
抱っこで移動が普通になってきたな……と思いながらジオラルドを見上げた
ジオラルドは無表情で階段を下りながらちらりと柚子を見る
「魔術師教会と治癒師教会を束ねる方だ。君が召喚された時にもいたぞ。白いローブを着た一番前にいた方がそうだ」
あの時は混乱してたから白いローブの人がいっぱいいたとしか記憶していない
「その総師?って人の所には何しに行くんですか?」
「君が法律と王のことに詳しい人に会いたいと言っただろう。総師に対応をお願いしたのだ」
先程のリーファンは私の事を話していたのか
1階につき、食堂とは反対の右側の廊下を進む
宿舎の廊下の絨毯は全て茶色で統一されていたのだが、右側の廊下だけは藍色に光沢のあるクリーム色のペイズリー柄が編み込まれている肌触りの良さそうな絨毯が引かれている
建物自体も大理石のような艶やかな石造りとなっている
廊下の右側には艶のある木に彫刻の施された両開きの扉が二部屋あり、会議や接待等に使っているらしい
その奥には外に続く大きな扉がある
ジオラルドは重そうな扉を軽く片手で開け、外に出た
「うわぁ!」
そこには見事な庭園があった
左右に分かれた石畳の10m幅くらいの広い道、両端には丁寧に整えられたジオラルドの腰くらいの高さの生垣が続き、その奥には色とりどりの花が心地よい風に揺れている
さらに奥には高さの揃えられた青々とした背の小さめの木が等間隔に並んでおり、その先には花に囲まれた噴水が見えた
「宿舎の外はこんな風になっていたんですね。凄く綺麗!」
目を輝かせて庭園を見る柚子の様子にジオラルドは小さく笑った
「こちらは貴族も使う王城へ続く道だからな。王都の中で一番整えられた場所だ。庭園は広いので一人では行かないように」
どうやら迷子の心配をされているようだ
「わかりました」
頷きながらも庭園を眺めた
あそこでサンドイッチとか食べたら最高だろうな
ピクニックしたくなってきちゃった
歩きながらジオラルドは王城について説明をしてくれた
王城は3つの建物に別れていて、中央では王族達が生活している他、宰相や大臣といった国の運営に携わる役職の人たちが仕事をしている
西側は第1騎士団の宿舎、東側は総師等の教会関係者と魔術具師という人達がいるらしい
魔術具師とはその名の通り魔術具を研究・作成している人の事で、魔術具とは魔石や魔力を使用して使うことの出来る道具のことを指し、洗面台やリーファン等がそれにあたる
5分くらい歩いた頃、右側に高さ10mぐらい石造りの城壁が見えてきた
障壁の周りには水を張った堀がある
城壁は緩く楕円形を描いて城の周りを囲っているそうだ
城壁に沿って歩いていると後ろからガタガタと音が聞こえてきた
ジオラルドは道の端に寄って後ろをちらりと振り替える
柚子が覗き込むと、音の正体は馬車だった
2頭の黒い馬の手綱を御者が操っており、屋根付きの底の丸い小さな船のような形をした4輪の黒い馬車がゆっくりと進んでいく
「ランドーか」
ジオラルドが呟いて柚子を腕のなかに隠し、馬車に頭を下げた
馬車はゆっくりと柚子達の前を通りすぎる
馬車が通りすぎると、ほっと息をついて頭を上げ再度歩き出す
「ジオさん、ランドーって?」
「上流貴族の馬車だ。底が丸くなっているのがランドー、箱形がブロアムだ。ブロアムは下流貴族用だな。
ランドーが通る時は面倒事を避けるために頭を下げている」
以前何かあったのか、眉間に皺がよっている
深く聞くのは止めておこう
また漸く行くと、城壁より背の高い塔が2つ繋がっており、間に城門があった
城門は狭く、二人並んで通れるくらいの幅しかない
鎧を来て腰に剣を差している騎士が二人城門の前に並んでいる
「第2騎士団副団長ジオラルド・ヴァン・ルベライトだ。
総師に用がある。東棟へ転送を」
二人の騎士がジオラルドと柚子をちらりと見、見事に揃って敬礼する
「お疲れ様です!どうぞ」
騎士が左右に別れ城門を開けてくれたのだが、城門の内側には床に魔方陣のようなものが描かれている小さな空間があるだけで、それ以外は靄がかかっていて見えない
「ジオさん、お城が見えないんですけど……」
「転送魔方陣に乗って城に入るのだ。悪意のあるものは弾かれるようになっている」
ジオラルドはそう言うと魔方陣の上に立つ
ちょっと待って!心の準備が出来てない!お城に向かうのに転送魔方って何で?
柚子が言葉を発する前に魔方陣から光が溢れだし、視界が真っ白になって浮遊感に襲われた




