その理由は
ベリルの言葉が一瞬理解出来なかった
新鮮な食材を食べられるのが王族だけ?
意味が分からない
「なんなのよそれ!!」
バン!と机を叩き、怒りに体が震えだす
「柚子、行儀が悪いぞ」
今は行儀なんて気にしている場合じゃない!
すでに食事を終えて柚子を見守っていた他の隊員達も驚いた顔をして柚子に近づいてきた
「どうしたんだ?」
「柚子ちゃん、手大丈夫か?」
心配してくれている隊員達の言葉も今は耳に入らない
「どういうことですか?王族だけが美味しい食事を食べてるなんて…どんだけ腐った国なんですか!!」
「王族が悪いわけではない。王族達は安全性を第一に考えねばならぬから食材は全て新鮮なものを使っているというだけだ。現王は民の意見も真摯に受け止めてくださるお方だ。悪く言うものではない」
真摯に受け止める?
じゃあなんでこんな悲惨な現状をこのままにしているのよ!
というか新鮮な食材が手に入らないってどういう状況?
ふと冷静になって考えてみる
この国は輸入に頼っていて食材がなかなか手に入らないとか?
多分車とかもないだろうから他の国から運ばれてくる間に劣化してるとか…いや、王族は新鮮なものを食べているというからそれはないか
もしくは収穫したものが一度全て王族の元に集められて、それから卸しているとか?
それでも腐りかける程時間がたつとは思えない
「どうして新鮮な食材が手に入らないんですか?」
考えて分からないなら聞いてみろ!だ
「手に入らないわけではない。全ての食材は一度全て保管し、古いものから食べるという法になっているのだ」
益々意味が分からない
「なんでそんなことを?」
「飢饉や急な災害等に備えて王族以外のものには全ての食料の保管を義務付けられている
もちろん王城に卸される食料も王族が食すもの以外は全て保管され、古くなった食材は王城で働くもの達の食事となっているのだ」
「備えることは大切ですが…なんで全ての食材なんですか?日持ちのする保存食だけを保管しておいても良くないですか?」
私も元の世界では水や缶詰めなどをいざというときの為に備えていた
「そこら辺は俺らに言われても困るよ。法律で決まってるから従ってるだけだからね」
ベリルが肩を竦めて困ったように笑った
「詳しくはわからないが前聖女が立てた政策だと聞いたことがある。
この政策がなされる以前には大規模な災害があり、深刻な食料不足に陥ったことが何度かあったと文献に記してあったな」
「理屈はわかりました。だけど方法が悪すぎる!
全ての食材を悪くなる寸前まで保管してから食べるだなんて生産者の方への、全ての命への冒涜です!食べるとは命をいただくという事なんです!
命に感謝し美味しく食事をとるということは生きていく上でとても大切なことなんです!」
鼻息荒くまくし立てる柚子を呆然と見ている隊員達
「柚子ちゃんの言いたいことはわかったよ。だけど法律で定められている以上どうしようもないんだ」
ベリルが子どもをあやすかのように柚子の頭を撫でた
そんな理由納得できない
「法律を作っているのは誰ですか」
「王だね」
ベリルが答える
「じゃあ法律を変えられるのは?」
「王……だね」
嫌な予感がして柚子から目を反らす
「王様に直談判しに行きます!」
椅子から飛び降りる柚子をベリルが慌てて捕まえる
「ちょっと待って!王にはそんな簡単に会えるもんじゃないんだよ」
ばたばたと暴れる柚子を傷つけないようお腹に腕をまわす
「……どうやったら会えるんですか?」
ベリルの言葉に少し冷静になった柚子はジオラルドに訪ねた
「まずは文で王に謁見の申し立てをし、許可がおりて初めて王と謁見ができる」
眉間に手をあて、ため息をつきつつ教えてくれる
「じゃあ今すぐ申し立てしてください」
どうあっても柚子は引かないと判断し、また大きなため息をついた
「……わかった。だがすぐには無理だぞ。少なくとも2日はかかると考えなさい」
「わかりました。よろしくお願いします」
漸く収まった柚子を見て、ベリルがジオラルドに近づいて耳打ちする
「大丈夫なんですか?」
「仕方あるまい。王からも便宜を図らえと言われているからな」
二人は柚子を見てため息をついた




