目覚め
迷子の行方を修正しています
大まかな流れは変わっていませんが、柚子の心情を変えています
「…ず……柚子」
誰かの声が聞こえる
「柚子、そろそろ起きなさい」
低く優しい声だ
でもまだ目を開けたくない
「もうちょっと」
そう言って頭まで布団に潜り込んだ
「…そろそろ昼だ。隊員達と昼食をとるぞ」
隊員達?昼食?
覚醒してガバリと起き上がる
そうだった!ここは異世界だった!
昼食って私そんなに眠ってたの!?
横に視線を向けるとジオラルドが無表情で見下ろしていた
「ごっごめんなさい!寝過ごしました」
頭を下げる
寝顔見られた!恥ずかしい!
ジオラルドは柚子の頭をくしゃりと撫で
「顔を洗ってから来なさい」と言い部屋から出ていった
慌てて洗面台に行き、思い出す
届かないんだった!
どうしようか悩んだ挙げ句、ジオラルドに椅子を持ってきて貰おうと思い廊下に続く扉をそっと開けると、白いパリッとしたシャツに黒い皮のベスト、紺のすらりとしたズボンに膝下丈の茶色のブーツを見事に着こなすジオラルドが待っていてくれている
「早かったな。行こう」
歩きだそうとするジオラルドのベストの裾を慌てて掴んだ
「待って!…ください。あのっ…」
届かないなんて恥ずかしくて言いたくない
でも顔は洗いたい!
覚悟を決めて話す
「洗面台に届かなくて顔が洗えません」
ちらりとジオラルドの顔を見ると無表情で眉間に皺が寄っていた
「ごめんなさい」
怒ってる!申し訳なくなり俯く
言わなきゃよかった
「怒っているわけではない。自分の考えのいたらなさに呆れたのだ」
そう言うとしゃがみこんで「すまなかった」と小さく言い柚子を抱き上げた
ジオラルドはそのまま部屋に戻り、洗面台の前に立つとそのまま固まった
「どうしたものか…」
きょとんと見上げると
「椅子を持ってくる」と言い柚子を下ろす
椅子を持ってきてくれたジオラルドにお礼を言うと椅子によじ登り鏡を見た
本当に小さい…子どもの顔だ
さらりとした黒髪に大きな眼、唇は小さく頬がぷっくりとしている
そして眼鏡を掛けていないことに今更気づく
視力がよくなってる!
鏡の中の顔がにやけている
はっとジオラルドを待たせているのを思い出し顔を洗おうとしたのだが蛇口が見当たらない
小さな青い宝石の様なものをが壁に埋め込まれてあり、その下に穴が開いているだけだ
うーん、と考え込んでいると
「どうかしたのか?」
と見かねたジオラルドが声をかけてくれる
「蛇口がないんですけど、どうやって水を出すんですか?」
「じゃぐち?魔石に魔力を流し込めば水は出てくるが?」
柚子の横に立っていたジオラルドが当然といった様子で青い宝石を指差す
「魔力を…流す…」
魔力って凄いファンタジーだな
私にも魔力なんてあるのかな
そう思いながらとりあえず人差し指で魔石に触れてみる
指がほんのり温かくなったのを感じたと同時に穴から水がでてきた
おお!ファンタジー!
感動しつつ顔を洗い、備え付けてあったタオルで拭いた
タオルを元に戻しスッキリとした顔でジオラルドを見上げる
「お待たせしました」
「君は魔石を初めて見たのか?」
柚子の反応を見て気付いたのだろう
「はい。私のいた世界では魔石も魔力もありませんから」
「そうか…ならどうやって生活をして…
いや、今は先に移動だ」
無表情のまま、また柚子を抱き上げた
「あのっ!自分で歩けます!」
見た目は子どもでも中身は大人なのだ
流石に恥ずかしい
しかもジオさんむちゃくちゃ格好いいし
もう何回か抱き上げられているのは忘れることにしよう
そう思ったのだがジオラルドは「こっちの方が早い」と訴えを退けた
そのまま何事もなかったかのように歩きだすジオラルドに何も言えず項垂れた
「今から食堂に向かう」
廊下を歩きながら行き先を教えてくれた
「食堂ですか」
勤め先の社員食堂を思い浮かべる
食券を買ってカウンターで食事を受けとるオーソドックスな社員食堂
どれも美味しかったが、柚子は日替わり定食をいつも頼んでいた
毎日何が出てくるか楽しみにしていたものだ
思い出したらお腹がすいてきた
異世界のご飯ってどんなのだろう
楽しみだ
「隊員達がどうしても君と食事を取りたいそうだ。皆もう待っているだろう」
ジオラルドはそう言って足早に階段を下りていった




