いわし雲は羽ばたいていた
空を見ていた。
青い空に
まばらな雲があったから。
いわし雲だね、と
君に話してみるんだ。
鳥に見えると君は言った
名前と全く異なる比喩だ。
あれが体で、あれが翼
だとしたら、なんて大きい翼だろうね。
嗚呼、僕も見たいな
青空に飛ぶ大きな鳥を、その翼を。
とても見たくて仕方ない
君が見たのだから。
君が隣からいなくなった時
もう一度空を見て。
嗚呼
確かにそこにいた。
いわし雲は羽ばたいていた
でもね、君がいなければ。
これはただの雲なんだよ
君が羽ばたきを見なければ
ここに鳥などいなかった。
君を愛する僕がいなければ
ここに鳥などいなかった。