表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される  作者: とびらの
生命の分水嶺 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

282/326

魔法使いは勘付いている


 静かな森のなかに佇む、一軒の屋敷。


 そんな一種の閉鎖空間で、エラと共にいることは正直不安だった。屋敷は立派ではあったけど、グラナド城とは比べ物にならない一般家屋である。一つ屋根の下で暮らしていれば、どうしても生活圏は重なってくる。


 それでも案外、平和な時間が続いた。さすがに気まずかったのか、エラは出来るだけ一つの部屋にこもり、気配を消すようにしているらしい。食事もわたし達とは時間や場所をずらしているらしく、一日でエラの姿を見かけるのはせいぜい一度か二度、会話は全くしなかった。

 それでいて、エラは夜のうちに家事を済ませてくれていた。頼んだわけではなかったけど、朝起きてくると食卓には朝食が並び、厨房の鍋には一日分の料理がこさえてあった。ダリオ侯爵に毒見――もとい味見として先に食べてもらい安全を確かめてから、わたし達もいただく。

 エラの料理は、はっきり言って、美味しかった。わたし達に姿を視られないようにしつつ、これだけの料理を作り上げるのは本当にすごいと思う。


 わたしは彼女の家事に感謝をした。そしてけなげに思う。


 なんというか……彼女はやっぱり、悪い人じゃないのでは、とか。ほんの小さなすれ違いがあるだけで、仲良くなれるんじゃないかって、思ってしまう。

 わたしがもっと歩み寄れば……彼女の気持ちを汲んであげられていれば……って。

 夜、髪を梳ってくれるチュニカにそう話すと、チュニカは肩を竦めた。


「あまい、あまい、あまい。マリー様は甘々でいらっしゃいますわぁ」

「そ、そう?」

「そうですとも。だって嫌な感じでしたよぉ。今日の食事だって、牛肉の巻き煮込み(リンダールラーデン)だったし。やってることはイヤミな姑じゃないですか」


 ……あ。そう言えば以前も、わたしが作ったパエーリャを吐き出した翌日に、完璧なパエーリャを作っていたっけ。チュニカの言うようにわざとのイヤミなのか、全くの善意なのかは分からないけど。

 グラナド城では、エラとチュニカはあまり接点が無かった。今、こうして一つ屋根の下で暮らしていて、なにか思うところがあるのだろうか。


「チュニカは、エラが悪い人だと思う?」


 意見を求めてみたけれど、チュニカは「んー」とあいまいな声だけ漏らし、返事をくれなかった。それよりも、と明るく続ける。 


「このお屋敷には、あと二、三日は滞在するんですよねえ? アルフレッド公爵様のミュージアム計画完成まで」

「ええ、そうなるでしょうね」

「だったら、黙ってまぁす」


 チュニカは自分の口元に指をあて、にやりと目だけで笑って見せた。 

 確かにチュニカの言う通り、無事に済むならそれに越したことは無いわよね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ