小説3巻発売記念★特別番外編 新妻ラブラブクッキング
祝\( 'ω')/ 小説3巻 \( 'ω')/祝
各・電子書籍配信サイトにて2月10日配信開始です。
この凸凹カップルのエピソードが書籍化!ということでショートコント会話劇。
ご笑納ください。
「アナスタジア謹製、人妻お料理クッキング〜〜〜!!」
「タイトルから重文になってるあたりホントに『出来ない人』ってかんじで、とってもフックでキャッチーだね。なんでまた急に? 君そういうキャラじゃなくないかい」
「いやただ単に家計の助けに。三食ほとんどテイクアウトじゃやっぱり結構な額になってるのよね。ちょっとは節約ってものを心がけてみようかと」
「……表通りのレストランならともかく、屋台飯は大量生産大量消費だから自炊するより安上がりだよ。このへんの職人はみんな、毎食外食でしょ」
「へ? あ―ああ、そうなの?」
「ていうか君の夫は第三王子で騎士団長ね。国一番の大富豪ほどじゃないけど、さすがに食費に困るってことはないし、女房子供を飢えさせるくらいなら農夫でもやるよ」
「うっ……うるさいっ! 黙って食卓に座って待ってなさいっ!」
「いやなんか心配だからそばにいるよ。だって君、今まで料理どころかロクに火を使ったこともないだろう」
「それは大丈夫よ、マリーからレシピのメモをもらってるもの。ノーマンが入院するときに、万が一お姉様が料理をしようっていう気分になったらコレをって。ロバでも出来る超簡単料理だそうよ」
「ほんとにシッカリした妹さんだねえ。どれどれ…ハンバーグとトマトポトフか。確かに簡単で美味しそうだ」
「えーとまずは玉ねぎを……切るのね。よし。せーの……とりゃあ!」
「おおすごい、まな板まで一刀両断。格好いいよアナスタジア」
「うるさいっ! で、これを包丁でみじん切りか……。カンナ使ったほうが早くない?」
「さすが、発想がクリエイティブ」
「だってなんだかすごく面倒くさそうだもん。文句言うならルイフォンがやってよ」
「文句言ってないよ。まあ手伝うのは良いけど」
「げっ。わりと上手いじゃん」
「げってなんだよ。僕も料理なんかできないけど、刃物の扱いは慣れてるよ」
「……あっそう。じゃあそれを、きつね色になるまでフライパンで炒め……きつね? きつねって何色?」
「え? ……以前、雪山で見かけたのは白銀色だったけど」
「生のままでも白いわよ」
「外皮が茶色いから、ちゃんと剥いて白くしろってこと……かな」
「なるほど。じゃあこのまま肉に混ぜればいいのね」
「待って、それステーキ肉だよね。ハンバーグって挽き肉から作るんじゃなかったっけ」
「ひきにく? ああローラーで」
「轢いてどうする。うーん包丁で細かく切るのかな…」
「よし、任せた」
「はーい」
「じゃあその間にポトフを作ろっと。こっちは本当にすごく簡単なのよ。ソーセージと野菜を鍋で煮るだけ、味も塩気も具材からちゃんと出るから調味すらいらないって」
「一応、一口サイズに切れと書いてあるね」
「一口ね。はいルイフォン、あーんして♡」
「あー…んがっ!?」
「なんだ、切らなくても入るじゃん」
「たぶん一口サイズってそういう、成人男子の顎関節可動域の限界を言うわけじゃないと思う」
「えーと芋はまるごと、玉ねぎは半分、ニンジンは縦なら丸ごといけるわね」
「いちいち僕の口に一回つっこむのやめなさい。あとできれば泥くらい落として」
「きつね色とは書いてないから、皮ごとでいいのかしら。これで蓋をして煮込むだけ、と。やー本当に簡単だわ! あとはハンバーグを焼くだけね!」
「この家、コンロが一つしかないよ、ポトフ中断するの?」
「あ。……じゃあ、ポトフと一緒に煮ちゃうか」
「それは二品とも別物に変えてしまわないかい?」
「なんで?」
「なんでと言われても。僕も説明はできないけど。こう、概念的に」
「なにわけの分からないことを言ってるの。これでよし! できた!!」
「待って待って待ってなんだか早すぎるだろ、ちゃんと煮えてるのか!?」
「見てのとおり、煮てたでしょ」
「一瞬でも煮たら既成事実を得られるもんなのかい」
「よくわかんないわね。とにかく完成!」
「うん、はい、おめでとう。じゃあ僕はこのへんで」
「待てぃ帰るなっ! はいコレお皿、持って、食卓へ」
「……へ?」
「いいから座って。……まあ、なんだ。ちょうどゴハン時刻でしょ。あたしの手料理、一回くらい食べていきなさいよ」
「……あ……アナスタジア。………………あの……ごめん肉に火が通ってるかどうかだけ確認してもイイ?」
☆★☆★☆★
「あれっ? 不味っ!?」
「はっはっは、不味いねえ」
「ええ~なんでぇ? ちゃんとレシピ通りに作れば、絶対間違いなく美味しくなるはずだったのに。おっかしぃなあ……」
「ふふふ、まあいいじゃないか。とりあえず食べられるだけ食べて、それから市場に出よう。僕も料理は出来ないけど、君を連れていきたい店があるんだ」




