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ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される  作者: とびらの
カラッポ姫と嘘つき王子

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126/320

閑話 「さすがの観察眼でございます」

本日、2話分を同時更新。こちらは2本目です。前話、「カラッポ姫に紅を引け①」から先にお読み下さい。

 

「なぜ、職人に化粧紅を贈ったのですか? レイミア様」


 王宮への帰り道。揺れる馬車の中で、侍女がそう尋ねてきた。質問の意味がわからなくて、わたくしは首をかしげる。


「なぜって? 先ほど言ったとおりだわ。先日、社交界でいただいたけどわたくしには赤すぎて使えなかったの、あの方になら似合うと思って」

「ああいった化粧紅は女性用です」


 言われて笑う。そんなこと、世間知らずのわたくしだって分かっています。

 その反応をじっと見つめる侍女に、わたくしは笑いながら言った。


「マオも、マリーと同じく誤解していたのね、彼女の性別を。確かにぶっきらぼうな話し方だし、髪型も服装も男の子みたいだったけど、あの方は女性よ。それもわたくしよりずっと年上で、美しい顔立ちの」

「…………そうでしたか。よくおわかりになりましたね」

「そりゃあもう、至近距離でまじまじとお顔を見させていただきましたもの。マオだってすぐそばにいたのに気付かないなんて、まだまだねっ」

「レイミア様におかれましては、さすがの観察眼でございます」


 わたくしはふふんと鼻を鳴らす。侍女――マオのセリフに、わたくしは気分が良くなった。


 この侍女は、わたくしの知る中で最も有能な侍従だ。つい先日、王宮に就職してきたばかりの新人メイドだったけど、同僚達の推薦で王女専属の侍女に格上げされたのである。実際、彼女の働きはたいへんなものだった。日常の煩雑な業務は目にもとまらぬ早さで完了し、わたくしの望むものがなんだって的確に、ベストタイミングで用意される。特にお茶の淹れ方が絶妙で、わたくしはもう彼女のお茶でなければ、朝目覚めることができないくらい。愛嬌は無いけど、出しゃばらないので邪魔にならず、この頃は常に側に置いている。


 そんな彼女に褒めそやされたら、ふんぞり返らずにはいられない。だってこのマオったら、あまりに出来過ぎているんだもの。ちょっとくらい、ドジな所も見せて欲しいじゃない?


 そう思った瞬間、馬車が揺れた。その拍子にマオの体も大きく揺れて、長い前髪と眼鏡がズレた。一瞬だけ水色の瞳が露出して、すぐに隠される。

 わたくしは上機嫌のまま言った。


「マオももう少し、お洒落を楽しむ気概を持つべきですわ。その野暮ったい眼鏡とモッサリした髪型はどうにかなりませんの? ほとんど顔が見えないじゃない」

「本望です」

「なぜですの? 王女レイミアの侍女としてそばに仕えるのだから、もっと華やかに。紅のひとつも引いてもらわないと」

「お化粧ならしておりますよ。それはそれは、原型が見えないほどに厚塗りで」

「嘘でしょう、そんな風には見えないわ」

「変装用メイクとはそういうものです」


 珍しくマオは冗談を言った。わたくしがクスクス笑うと、彼女もニッコリ、朗らかな笑顔になる。


「申し訳ありません、私は目立つのが苦手で。どうかレイミア様の引き立て役でいさせてください」


 やれやれ……仕方がないですわ。わたくしは肩をすくめ、にやつく口元を隠した。

 仕事は出来るけど、とにかく地味で控えめで、主君にひたすら追従するだけのつまらない女。あの凜々しい男装服が届いたら、真っ先にコイツを美しく飾り立ててやろう、などと画策しながら。


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― 新着の感想 ―
この回の構成が今までの話で一番驚きました 閑話にその後の王女様と〇オさんの潜入の両方を綺麗にまとめていましたね 素晴らしい手腕です
[一言] おやっ( ̄▽ ̄)ニヤリッ
[一言] 流石にミオの変装(厚化粧)は見破れないかw
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