第三十四話 姉のことが、好きな人
第三十四話 姉のことが、好きな人
あ。──これ、死んだ。……かな。
その瞬間に、不思議と不知火の心境は冷静だった。
迫る乗用車のボンネットが、横目に見えた。
車道に出たのはこちらのほうだ。車を責められない。だいたい、無茶な運転をして走り去った自転車が原因なんだから──不知火の目には状況があまりに、客観的に見えてしまっていて。
運転手の表情が、切迫していた。
ダメだ。間に合わない。そう、理解をした。
こちらからも、避けられない。突っ込んできた自転車を避けることで精いっぱいで、完全に体勢なんて崩れきっている。ここから更に逃れるなんて、無理だ。
そう、思った。瞬間、ゆきの顔が脳裏に浮かんだ。先に逝った、兄夫婦の姿も。
ごめん、ゆき。小雨さん。兄さん。
走馬燈のように流れていくそれらの映像も含めて、陳腐は実感したけれど、心の中で呟いたのはそんな言葉だった。
「──え」
それは諦めと断じられれば、否定することはできなかったろう。
けれど否定をされたのは思考ではなく、──現実。降りかかろうとしている、災厄のほうだった。
衝撃が、予測よりひと足はやくやってくる。
迫りくる、脅威とは異なる方向から。
その衝撃は、不知火を包み、跳ね飛ばし。ともに地面を転げていく。
人肌の体温と。腕力の圧が自身を護ってくれているのを、不知火は認識する。
それは身体。少年の、大柄な。
「っつ……っ」
夕矢くん。気付いたその状況に、不知火は思わず目を見開く。
彼が飛び出して、不知火の細身を浚っていく。激突は、回避される。
地面を転がる、そして着衣や肌を擦過し傷つけていく痛みこそあれ、それが不知火たちから命を奪うことはない。
けたたましい、ブレーキ音。タイヤの摩耗音とともに、ふたりのすぐ脇を抜けて自動車は停止する。
ひどく静かな沈黙が、その先に訪れる。
「──不知火さん」
彼の両腕が、不知火を護ってくれている。
「大丈夫、不知火さん」
「え──ええ、うん」
擦りむいた、痛みはある。どうしたって避けられないその類のダメージ──したたかに地面に打ちつけた背中とか。そういうのはたしかに、あるけれど。
直接事故に遭うものと比べたら、間違いなく今の状態は「大丈夫」ということができる。
頭は打っていない。彼の両腕が抱き寄せて、押し倒しながらもぶつけてしまわぬように、衝撃から守ってくれた。
「よかった」
だからまず、不知火の側から、ありがとうを伝えるべきだった。けれど、彼のほうがほんの少し、早かった。
「無事で、いてくれて。不知火さんになにかあったら、俺がしんどい」
「夕矢、くん?」
視界の外側で、ばたばたと、自動車のドアを乱暴に開閉する音が、そして慌ただしい、おそらくその車を運転をしていた持ち主のものだろう足音が下りてくるのが聞こえた。
けれど意識の中にあるのは、覆いかぶさった彼の声。
「不知火さんが傷つくのも、しんどいし。雪姉に対しても、しんどいよ」
雪姉を大切に思ってくれていて。雪姉が大切に思っている人でもあるから。
その人が傷つくのは、万が一が起こるというのは。雪姉がまた傷つく、ということでもあるから。
「俺だって、雪姉にはもう、傷ついてほしくないから」
不知火さんにも、雪姉にも。よかった。
言って、夕矢くんは不知火を抱き寄せる両腕に力を込めた。
ぽつり、無意識に。不知火は小声に、彼の名を呼んだ。
自分を好きだと言ってくれた少年が、自分の愛する妹を、想い慮ってくれたことが、嬉しかったのだと思う。
その背に回した腕で、彼の体躯を──命の恩人となった彼を、その吐露とともに抱きしめ返して、いた。
* * *
なんの前触れもなく喫茶『白夜』を訪れたその人は、注文したコーヒーを静かに、その口に運ぶ。
「あ。おいしい」
「……そりゃ、どうも」
これ、淹れたの。妹さん? ハーフアップの髪の先輩はこちらに首を傾ける。
妹さん、ね。まあ、そういう認識か。ひっかかりを憶えつつ、雪羽は目の前の、年上の人物に対し頭を振る。
今日のコーヒーは、彩夜が担当で淹れたものだ。悔しいけど、何度やっても彩夜の淹れるコーヒーにはかなわない。家業が喫茶店という、やはり年季や環境の差だろうか。
とはいっても、これで彩夜は彩夜で逆に、「雪羽ちゃんのコーヒーのほうがわたしは好き」なんて日ごろから言ってるのだから、味覚や好みというものは人それぞれ違うものだ。
「あたしじゃないですよ。彩夜です」
「アヤ?」
告げたところで、雪羽とさえ殆ど初対面に等しい先輩──真沢先輩にはピンとくるはずもない。
キッチンのほうを示すと、そちらを見てようやく、先輩は納得したような表情を見せる。
「ああ。あの子はたしか」
不知火や、あなたとよく一緒にいる子だ。そう、先輩の漏らすその印象で、概ね間違っていない。
「幼なじみなんです。あの子の家なんですよ、ここ」
「そう」
で、ここであなたはバイトしてるんだ。こちらを見上げ、言われて。傍らに佇む雪羽としては、とくに感動もなく頷くだけだった。
不意にやってきた、真沢先輩。……だっけ。
いったい何の用があって、彼女はこの店を訪れたのだろう。入ってきたときの雰囲気では、少なくともたまたま、ふらりと学校帰りにお茶をしに来たという感じではなかった。
十中八九、なにか話があるとすれば自分だろうな、とは思う。だからこそ、身構えてしまって。正直、今の状況を居心地よくは、雪羽には思えなかった。
忙しくしている時間帯、というわけでもないから、一度客席で彼女に呼び止められてしまうと、自分から黙って離れていくというのもやりづらかった。
実際、幾度かキッチンに戻ろうと試みてはいる。けれど、そのたびに見計らってかたまたまか、途切れがちな会話に新たな話題を、彼女は機先を制するように差し込んでくるのだ。
「不知火から、聞いてたの。ここで妹さんがバイトしてるって」
「はい、まあ。バイトというか、昔からの付き合いというか」
彩夜に助けを求めようにも、彼女は彼女で暇に乗じてか、仕込み作業に集中して、たった今先輩に紹介したその場所で、ひたすら包丁を握っている姿がこちらからも見える。
彼女の生真面目さが、こういうときには恨めしい。
いったい先輩はなにを言いに来たのか。なにを言いたいのか。警戒と、会話の行きつく先がはっきりしないことによるもやもやとした不快感に、とっととこの場を離れてしまいたかった。
「──なので。今、ちょっと仕事中で」
「お客さんの相手をしてもてなすのも客商売にとっては大事なお仕事でしょ?」
「う」
そう思って、切り出した。
直後ばっさり、切り捨てられた。
二の句を継げずに固まる雪羽を横目に、先輩はため息ひとつ。
「なんてね。ごめんなさい、今のはさすがに意地の悪い理屈だったわね」
「へっ?」
すまなそうな苦笑。椅子の背に体重を預けて、両腕で伸びをしながら、彼女は雪羽を見上げる。
「知りたかったんだ。私が好きになった子が、この世で一番大切に思っている妹さんって、どんな子なのかな、って」
「真沢先輩……」
まだ、なにも知らない。お互いに。それは雪羽だって同じこと。
姉が告白された。その相手とデートをしたり、近しかったり。面白くないばかりだった。まともに話したことも、なかった。
「自分の恋のライバルを知っとくのも大事でしょ? 敵を知れば、ってね」
「ら、ライバル?」
「そ。だってその人の一番になりたい相手がいて。その人には一番大切なものがある、妹さんがいる──それって立派なライバルでしょ」
年上って、やっぱり懐が広いのかな。あっちから歩み寄ってくることができるって、ことなんだろうか。
そうやって一瞬、相手を尊敬しそうになった。
ライバル、のひと言でもう、全部台無しだけれど。打算かい、全部。
「それは冗談だけど、知りたいって思ったのは本当よ」
「はあ」
どう言葉を返せばいいやら、ちょっと出てこない。相槌しか、さっきから返せていない気がする。
結局この人はあたしと仲良くしたいのか、競いたいのか。この邂逅が唐突だったこともあって、雪羽の側からは会話をうまく続けられない。
あちらが年上の余裕たっぷりだからか、掴みどころがないというのもある。いかん。ほんとうに──なにを話せばいいんだ。
「……そうやって戸惑うところ、なんだか不知火と似てる」
「え?」
「血は繋がってない、って言っていたけれど。その辺はしっかり姉妹なんだ」
いいよ。そういうところ、あの子みたいで、私は好きだな。
困惑に困惑を重ねる雪羽へと、先輩は笑う。褒められてるんだろうか? そう、なのかな。
あなたのほんとうのお姉さんのこととか。
あの子の、お兄さんのこととか。ごめん、聞いてるんだ。
続けてそのように頭を下げられて、少し、先輩への警戒心が薄らいでいくのがわかる。
その雪羽の感情に重ねるように、
「いいのよ、わからなくって。知らなくって。あなたも、不知火も。もちろん、私の側からも」
「真沢先輩」
懐柔されようとしているのだろうか、と思わないでもなかった。
でも、……その表情は、嫌いではなかった。
「私はあの子のことも、あの子の好きな人や、好きなもの。全部、知っていきたいと思っている。私のことを知ってほしいと、思っているから」
* * *
「なるほど、ね。南風神社って、そーいうことか」
先輩と幾ばくか、語らって。別れを告げて、神社の石段を下った。
その、一番下に。妹が石垣へと背中を預けて、待っていた。
「歌奈ちゃん。どうして」
「どうしてもこうしてもないっしょ。家と反対側なのに、こっちに歩いてくのが見えたから」
柔道部の助っ人、今度頼まれてるからさ。ほら、道場の目の前ってすぐそこがテニス部のコートでしょ。
全部、見てた。
「南風先パイがひと足先に帰ってったし。そのちょっとあとにねーさん、先パイのこと訊きにきてたでしょ」
妹はいつになく、けだるそうにつま先で、小石を玩びながら。
つんつんした口調で、詩亜に言葉を投げる。
「先パイに、会いに来たんでしょ」
妹の様子に、即座の返事を詩亜は逡巡する。
だが今更、取り繕いようのないことだ──また別に、悪いことをしているわけでもない。
「はい。……お話が、したくって」
妹が、苦い思いを抱いていることはわかっていた。
詩亜と、先輩のこと。その推移を気にしている。そしてけっして好意的ではないということを、詩亜だって知っている。
木々が風に揺れる下で、詩亜は歌奈と向き合った。
きちんと、伝えあう必要があるのだと、思った。
「南風先パイのこと。好きなの?」
「歌奈ちゃん」
妹は目を眇めながら、詩亜に向かい歩み寄る。
そうして詩亜の横髪のひと房に、指先を触れさせる。
一度、二度。それを絡めて、外して。詩亜の前で、少し上から降ろした目線で俯いている。
「ねーさんは、好きなの」
その目線を、彼女は上げた。互いの息遣いが聞こえるくらい、すぐそばにある妹。その目は、もう細められることもなく、しっかりと開かれて、……不安げな光をしかし打ち消しきれぬままに、詩亜へと向けられている。
はぐらかしたりなんかは、できない。妹に対して。たったひとりの家族に対して、そんなこと、できるわけがなかった。
そういう目で見られたからじゃない。見られていなくても、いつかはこうして向き合わなくてはいけないことだ。
「好き、なんだと思います」
だから詩亜は答えた。今の自分に出ている、答えの範囲で。
つい、今しがたまで先輩の傍にいて。思ったこと。それまでの実感に、更に重ねられた気持ちを伝える。
「少なくとも、この人と一緒にいて穏やかでいられる。好ましく思える──そう感じられるくらいには。わたしは先輩を、好ましく思っている」
告白とか、そういう次元ではなく。
あの人と一緒にいることに、居心地の良さを感じる。
「──それ。好きってことじゃん」
「ええ。そうかもしれません」
男女間の恋愛感情に似たものかどうかはわからない。そういう経験、詩亜はもっていないから当然なのだけれど。
好きと嫌い、先輩に対してふたつに択一を分けるなら、間違いなく前者を自分は選ぶ。そう、今は胸を張って言える。
「……両想いなんじゃん」
「想いあう、って意味だったらそれは、わたしと歌奈ちゃんだって同じですよ」
「──え」
身長は負けていても、詩亜はお姉ちゃんだから。下から手を伸ばして、ぽん、と妹の頭に掌を載せる。伝えて、言い聞かせるのは自分の役目だ。
大事な、大事なもの。詩亜にとってかけがえのない、その護るべき大切な女の子を掌に、感じる。
「なにも変わらない。わたしにとって、大切なもの。好きなものがひとつ増えただけ。歌奈ちゃんを大切だって思うのと同じように、真波先輩のことをすごく、すごく大切に感じるようになった。それだけのことだから」
わたしを好きだって言ってくれた人を、わたしも好いている。
歌奈ちゃんがこうして心配して、気にしてくれるように。わたしもいつだって、歌奈ちゃんのことを大事に思っているのだから。
両者は本質的には、同じものだと思う。
「ねーさん」
「べつに、『好き』の絶対量が決まっているわけじゃないでしょう? むしろ、先輩を大切に思うようになって。むしろその容量と幅が増えただけなんです」
好き、と思える対象が増えて。
好き、と思える自分の総量も増えた。それぞれのかたち、それぞれに対する気持ちとともに。
「わたしは。それぞれに先輩も、歌奈ちゃんも好きですよ」
間男が言えば、それは最低な言葉になっていたろうな、とは自分でも思う。
だけれどこれは今の詩亜の、妹と、先輩である少女とそれぞれに対し抱く素直な気持ちで、想い。けっしてそれらは背反なものではないと胸を張れる。
「アタシは別に、ねーさんの交友関係に文句があるとかじゃなくって。嫌なわけでもなくって、……さ」
なんか、ちょっと。寂しくって。
アタシには、ねーさんしかいないから。たったひとりの、姉だから。
おじさんたちや、雪羽たちが歩み寄ってくれた今でも、一番はねーさんしか、いないから。
「──ゴメン」
詩亜の撫でる妹は、その手首に掌を重ねながら、少し潤んだ瞳で、恥ずかしげに頬を赤らめている。
彼女の言葉に、詩亜は頭を振る。
「わたしも、歌奈ちゃんが。たったひとりの妹ですから」
だから、欲張りなのかも。
ふたりだけだった世界に。しーちゃんたちが来てくれて。
わたしたちふたりの過ごす世界に、もっといっぱいの大切なものを求めたくなったんだと思う。
大切なもの。大切な、人を。
「わたしが幸せだなぁって思えるものを。歌奈ちゃんにもたくさん、たくさん分け合ってほしいって、思ったんです」
だから、ごめんなさい。寂しがらないで。
詩亜の言葉に、歌奈ははにかんで、笑ってみせる。
とりあった手を下ろして、繋いだまま。ふたりどちらからともなく、歩き出す。
ふたりで暮らす家へと向かって。
その中に詩亜は思う。
歌奈の手をとる、左の掌とは反対側に。誰かの掌を握り、三人で歩く日があったら、それはとても素敵なことだ。
──それにしても、ねーさんが彼氏じゃなくって、彼女つくるなんてなぁ。
歌奈が悪戯っぽく、不意に言った。
──そういうのじゃ、ないですよ。少なくとも、今はまだ。
妹の言葉に、くすりと笑って、返しながら。
親友は親友で、今どうしているかと思い、そして歩く。歩いていく。
* * *
ありがとう。仕事中に、邪魔したわね。──そう言って、コーヒーを飲みほして。真沢先輩は帰っていった。
店の外まで、その後ろ姿を見送りに出る。
やれやれ、と。なんだか手玉にとられちゃったな、というけっして不快ではない、してやられた気持ちとが同居する中で、雪羽は腕時計を見た。
時間的には、もうすぐシフト上がり。おじさんが戻ってきたら、入れ替わりでお疲れさまだ。
先輩の姿が角を曲がったのを見届けて、踵を返す。
──そうしたところで、長身の影がふたつ、こちらに歩いてくるのを見た。
「……お姉ちゃん?」
それは姉。そして、弟分。
「ああ、ゆき。まだバイト中だったんだ」
背の高いほうの影は、──夕矢はなぜだか、少し足をひきずっていた。
その肩を支えるように、それより少し小さな背の姉は、彼に寄り添い歩幅を合わせている。
ふたりとも、ところどころ制服が汚れていて。擦り傷があって。姉のほうは穿いているストッキングが伝線している。
「ちょっと、どーしたのさ、ふたりして。盛大に階段から転げ落ちたとか?」
「んー、似たようなもん」
そんな大したけがはしてないよ。俺がちょっと、足首ひねっただけ。
夕矢が言うと、隣でしきりに姉が頷いている。
「つーか、遅くなるとは聞いてたけど。夕矢と一緒だったん?」
「うん、ちょっと彼のお手伝いを」
とりあえず、中に入れて。家に帰るより、不知火さんもこっちで一緒に手当てしたほうが早いと思って。
夕矢に促され、雪羽はガラスのドアを押し開く。そのまま、ふたりを迎え入れてやる。
タイミングを合わせて、二人三脚のように店内に入っていくふたり。
背の高いふたりだから、足元が悪いとなんだか、その動作のぎこちなさがより目立つ。
「──なんか、いい感じだね」
「は? なにが?」
その背中に、素朴な感想を投げる。
「よくないでしょ。けっこう膝とか、ひりひりしてるのに」
「ああ、いや。そうじゃなくって、バランスがさ」
「バランス?」
ふたり、そうやって寄り添ってるの見てると、ほんとの姉弟みたいに。家族みたいに似合ってるなって思って。やっぱり家族のあたしとしてはなんだか嬉しいわけですよ。
雪羽としては、他意のあった言葉ではない。
だけれど両者はなんだか一瞬、息を呑んで。『姉弟』『家族』。そして、『お似合い』。そんなワードをそれぞれ、ぼそりと呟き虚空に霧散させていく。
「なに、なに。どうしたの。ふたりして」
入口の様子に、弟たちの姿を見つけて、彩夜もキッチンから出てくる。
店には今、この四人だけだった。
そのうちのふたりが、顔を見合わせる。
「──あのね、ゆき。今日の用事は、また別の用事だったんだけど。私、ゆきに伝えなくちゃいけないことがあるんだ」
「え。なになに」
そう。そしてこの中でまだ、雪羽だけが知らなかった。
とりあえず先に座ったら。救急箱、持ってくるし。そんな他愛のない応対が、喉の奥から今まさに出てこようかというところだった。
「私。──夕矢くんにも、告白されたんだ」
だからちょっと、姉の発した言葉がすぐには理解にまで届かなかった。
「答えはまだ、返してない。でも彼に、好きだって。そう、言われたんだ」
え?
夕矢と、お姉ちゃんが。
──え?
告白、って。
(つづく)




