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めでたしめでたし?

 「勇者貴様ァアア!! 何故扉から入って来ぬのだ!? わざわざ別の窓を割って入って来おって......!

 それだけではない! なんじゃこの請求書は!? 貴様にはあれだけ金を渡したというのに、何故こんなものが送られてくる!? まさかこの短時間で全て使い切ったのではあるまいな!」


 温厚で知られているハイデンス王も我慢の限界がきたらしく、顔を真っ赤にして怒鳴っている。

 普段優しい人が怒ると怖いとよく言われるが、ハイデンス王の場合は子どもみたいに(わめ)くだけだから全く怖くない。


 むしろ笑える。


 日本でもキレると訛りすぎて何言ってるかわからない先生がいたけど、丁度あんな感じだ。

 訛りが面白くて笑うと、笑われた事にも怒った先生がさらに訛って、より面白くなったから笑って、怒ってさらに訛る。

 最終的に先生が職員室に帰るまで続いてたからな。


 やばい、思い出したら笑えてきた。

 堪えきれなかった笑いが中途半端に鼻から抜けてしまい、何やら勘違いした様子のハイデンス王がブチ切れてこっちに歩いてきた。


 お、丁度いい こっちから行く手間が省けたな。


 素早くハイデンス王の懐に潜り込み、腰に下げていた剣を奪い取る(借りる)

 流石にペーテンと丸腰で戦うのは危険だからな。


 「なっ!? 血迷っ--ぶげぇ」


 暗殺と勘違いしたらしきハイデンス王を蹴り飛ばす。

 別に恨みがあるわけじゃないぞ? ペーテンとの戦いに備えて安全な場所に避難させただけだから。

 本当ダヨ。

 2回目の人生で『国民のためじゃ』とか言って裏切ってきた事とか何の関係もないヨ。


 その場の全員が瀕死の王に気を取られている隙に宰相・ペーテンに突進する。

 ペーテンは火力の高い魔法に加えて、能力を下げる魔法やテレポートなどの補助魔法を使う。

 レベルのごり押ししかできない俺には相性が悪い相手だ。


 だから、一気に勝負を決める。

 不敵な笑みを浮かべるペーテンに肉薄し、剣を一閃。

 数秒遅れて右腕を失ったペーテンの悲鳴が玉座の間に轟いた。


 「なっ何故、今日召喚されたばかりの貴様がそんな力を!?」


 不敵な笑みが一転、脂汗を大量ににじませたペーテンが苦悶の表情で聞いてくる。


 なるほど、俺を舐めてたから何もしてこなかったのか。

 まぁ普通のレベリングだったら良くて2、30レベが1日で上げられる限界だから、油断するのも無理はないか。

 圧倒的強者感を出して威圧していこう。


 「魔王軍宰相・闇奇術師ペーテン、単刀直入に言うぞ。俺を魔王の所に連れて行け。

 返事は『はい』だけだ。それ以外の事を言ったら左腕も斬り落とす」

 「ふざけ--」


 激昂して魔力を練り上げるペーテン。

 魔王軍のNo.2なだけあってとてつもない早さで魔法が構築されていく。


 「無駄な抵抗はやめろ。次は右足だ」

 「............は、はい......」


 宣言通り左腕を斬り落として魔法を中断させると、ペーテンは敵わないと悟ったらしい。

 魔王城に送る事を約束してきた。



 魔王城に到着した俺はペーテンを経験値に変えて魔王の玉座への扉を蹴破った。


 「わっ! ビックリした〜誰〜? もう〜ちゃんとノックしてよ〜!」


 めっ! と叱ってくる魔王。

 ん? こんなキャラだったっけ? もっとこう......「フハハハハよく来たな勇者よ!」って感じじゃなかったか?


 戸惑いを隠せないでいると、3メートルはある魔王が屈みこんで顔を覗き込んできた。


 「見ない顔ね? 新人さん? 知ってると思うけど、私はこの城の主よ。魔王様って呼んでくれればいいわ」


 やっぱり魔王だった。


 「それにしても......アナタ人間? 同族を裏切ったの? 悪い子ねぇ。気に入ったわ。アナタ私の側近になる気はない? ただのお世話係みたいなものだから気負う必要はないわよ。どう?」


 なんか知らないうちに歓迎されちゃってるんだけど......すごい倒し辛くなってきた。

 いや、そんな事言ってられない。

 知りたくなかった魔王の一面を知ってしまった後悔、それを打ち払う様に魔王に斬りかかる。


 「ちょっと! 何するのよ! 魔王の椅子に興味あるのかもしれないけど、状況を考えなさい! 勇者が召喚されたって全魔物に通達したはずよ! いーい? 今は一丸となって勇者と戦わなきゃいけないの。身内で争ってる暇はないわよ」

 「......すいません」


 反射的に謝っちゃった。

 普通の魔王より妙な迫力があるのは何故だろうか。

 というかこの状況どうすればいいですか?


 「そ。わかってくれたならいいわ。アナタは人間だから、勇者もすぐに殺そうとはしてこないだろうけど気をつけなさいね? 勇者はアナタみたいに黒髪で、アナタみたいに中性的な顔で、アナタみたいに黒い見たことない服を着てるらしいから、気を......つけて............」


 おっと? 勇者だって気づいたか?


 「アナタ......もしかして勇者......?」


 目頭を抑えて考え込んでいた魔王が恐る恐る聞いてきたので、黙って頷く。


 「フッ、フハハハハ! よく来たな勇者よ! 数々の試練を乗り越えてないくせによく我が元に辿り着いたな!? 褒めてつかわすと思ったら大間違いだ!」

 「今さらキャラ変えても遅ぇよ! どのツラ下げてそんなセリフほざいてんだ!?」

 「うっさいわね! アンタが急に来るからでしょ!? 勇者が召喚されるってペーテンから聞いてたから、こっちはアンタのために徹夜で準備してたのに......何で全部すっ飛ばしてこっち来るの!? バカなんじゃないの!?」

 「誰がバカだバーカ!」

 「アンタに決まってんでしょバーカバーカバーカ!」


 お互いの間で高レベルな剣戟と低レベルな罵り合いが暫く続いた。

 キャラは変だけど、攻撃手段やクセは何度も戦った魔王と同じ。

 魔王の戦闘スタイルも俺と同じ高ステータスを活かした肉弾戦が主軸。

 経験もステータスも上の俺が負ける事はあり得ない。


 ジリジリと追い詰め、魔王の心臓を貫く。

 さすがの魔王も魔力の生成源である心臓を潰されたら無事では済まない。

 

 これにてRTAは終了だ。


 それではお楽しみのタイム発表......タイム発表............?

 ............そういえば時間測ってなくね......?

 急ぐ事に必死になって時間を測るのを忘れていた。

 正午に召喚されて、今夜だから7、8時間くらい?

 ダメだ、ハイデンス王の魔力時計奪ってないから正確な時間がわからない。


 「......仕方ない。もう一回やろう」


 魔王に驚いて時間もかけちゃったし、丁度いい。

 RTAは満足のいくタイムが出るまで何度もやり直すものだからな。

 そして俺はもう一度自分の首を切り落とした。

この小説は夏公開予定の長編の練習として書いた物ですが、楽しんで頂けたら嬉しく思います。

では次の機会に。

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