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決戦準備完了

 レベリングの準備を終えた俺は、ハイデンス王国から北西10キロにある大森林に向かって馬を走らせていた。

 ............なんかデジャヴ? 馬に乗ってるだけだからデジャヴるのも当然か。


 戦闘も全くしてないし、平和だ。

 ゴブリン? 何のことやら。


 そろそろ大森林に到着する。

 ハイデンス王国がある草原はまだ人が占領しているが、森は完全に魔物の領域だ。


 魔王が現れる前は最大でもCランク、極稀にBランクが出現するかどうかという頻度だったらしいが、今ではCランクを超える大物がうじゃうじゃいる魔境だ。


 Bランク討伐には軍隊規模の戦力が必要で、その下とはいえCランクもかなりの大物。

 どれだけ人類が追い詰めているかわかる。


 レベリングには最適な場所だけど、今回は森には入らない。


 「たしかこっち側に......あぁ見つけた」


 森の外縁に沿ってしばらく進むと、目的のモンスターを見つけた。


 種族名巨大蟻(ジャイアントアント)

 今回のターゲットだ。


 全長1メートルの巨大な蟻で、1体の強さはDランク。

 俺にとっては雑魚だけど、一般人では太刀打ちできない強さ、それが何万匹という群れになっている。

 群れを束ねる女王蟻(クイーンアント)に至ってはBランク。

 いくら俺でも群れと真正面から戦うのは厳しい。


 だからこそ、レベリングになる。


 俺は巨大蟻の巣に近づき、水がたっぷり入ったマジックバックを取り出す。


 何をするか予想がついただろう? 巨大蟻の巣は地下深くまで迷路のように伸びている。

 つまり、水没させれば中の蟻を一網打尽にできるというわけだ。


 数個のマジックバックを破壊して、封じられてた水を一気に巣穴に流し込む。

 数トンの水量を食らった蟻は巣穴の奥に流されていった。


 「ふははははは 見ろ! 蟻がゴミのようだ!」


 大佐の真似をしながら蟻の巣をジョウロで破壊した小学生時代を思い出していると、他の入口から出てきたらしい数十匹の巨大蟻が俺に襲いかかってきた。

 運良く一緒に流した麻痺毒を食らわなかった奴らだろう。


 俺は水を流し込みながら、暇な片手ではたき落とす。

 たったそれだけで、地面に叩きつけられた蟻はぺちゃんこに潰れる。


 人間相手だったら戦意喪失する所でも、魔物である巨大蟻にはそんな言葉は存在しない。

 勝ち目が無くても玉砕覚悟で攻撃してくる。


 一斉に飛びかかってくる巨大蟻を回し蹴りでまとめて吹き飛ばす。

 風圧で潰され、鎌風に切り裂かれ、ほとんどの蟻が触れることすらできずに死んでいく。


 思った以上にレベルの上がりが良いようで、凄まじい威力の蹴りになった。


 こいつらが最弱の働き蟻(ワーカー)というのもある。


 巨大蟻は働き蟻(ワーカー)兵士蟻(ソルジャー)など役職によって強さが変わる。

 今俺が倒した蟻は全て働き蟻(ワーカー)だ。


 強い蟻ほど女王蟻の近くで守る習性を利用しているので、強い蟻は一緒に流した麻痺毒で動けないまま溺れ死んでいることだろう。


 そうこう言っているうちに蟻が出てこなくなったな。

 体感的に80レベルくらいにはなったか?

 まだ3級のマジックバックが少し残ってるけど、これ以上は意味ないな。

 時間ももったいないし充分だ、そろそろハイデンス王国に戻ることにする。


 今日1日走らせてきた馬とはここでお別れだ。

 このレベルになると馬に乗るより走った方が数倍早いからな。


 途中道を塞ぐ魔物を消し飛ばしながら、ものの数分でハイデンス王国に到着。

 階段で行くと時間がかかるので、城壁を駆け上って最初に割った窓とは違う窓を突き破って侵入する。


 レベリングも終わって、いよいよRTAの終わりが近づいている。

 本来魔王がいる魔王城へ行くには、四天王と呼ばれる強力な魔物を倒さなければならない。

 まさにゲームのような仕様だ。

 でもゲームには裏技があるように、この世界でも四天王を無視して魔王城に行く手段がある。


 それが次の標的、王の側に控えるハイデンス王国の宰相。

 いかにも好々爺といった風情の爺さんだが、その正体は魔王軍宰相・闇奇術師のペーテンだ。


 魔王軍ではNo.2に当たる実力の持ち主でありながら、スパイに勤しむ変人。

 本人曰く必死に抗う姿を真近で観察するのが面白いらしい。

 旅の途中にテレポートで散々嫌がらせをしてくる厄介な敵。


 本来なら最終局面で倒す敵だけど、テレポートで魔王城に行けるのは分かってる。


 あとはこいつに運んでもらえばいいだけ。

 さぁ、やるとしよう。

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