最速レベリング
短いです。
錬金術師組合に依頼を済ませ、マジックバックの買い占めも終わった俺は、ハイデンス王国から南西40キロにある巨大な湖に向かって馬を走らせていた。
湖までは見渡しのいい草原が広がっている。
湖で獲れる魚もハイデンス王国の重要な食料として輸送されているので、草の生えていない道が湖まで続いている。
迷う心配は無い。
とはいえ安心できるかというと、実はそうではない。
魔王軍に攻め込まれているこの国では、魔物がそこら辺にいる。
王国軍と冒険者の手で駆除されてはいるが、魔王がいる限り魔物は増え続ける。
駆除しきれなかった魔物が道を塞ぐことは日常といってもいいだろう。
時間短縮のために湖まで直線で向かう。
邪魔をする魔物は魔力を込めた石を投げて撃退し、ゴブリンだけは縄で縛って捕獲する。
輪っかになった縄を投げてゴブリンを捕まえていると、気分はカウボーイだ。超楽しい。
馬に引っ張られて地面を引きずられるゴブリンの悲鳴を聞きつつ、湖に到着。
補助魔法で馬を強化したおかげで思ったより早く着くことができた。
さて、ここからが大変だ。
持ってきた190個のマジックバック全てに湖の水を詰めなければならない。
1人が1度に扱えるマジックバックは1つだけだから、俺1人じゃ時間がかかる。
そこで登場! ゴブリン奴隷〜!
30匹くらいの奴隷に手伝わせることで大幅な時間短縮が可能!
さっそく奴隷どもの縄をほどき、マジックバックを配る。
「全てのマジックバックに限界まで水を詰めろ。逃げたら殺す。サボっても殺す。適当な仕事をしても殺す。1番遅かった奴も殺す。......分かったな? 始めろ」
俺の頼みを快く受け入れてくれた奴隷達は、ガタガタ震えながら必死に作業に没頭していた。
敵対してるのにこんなに素直に言うことを聞いてくれるなんて、とても良い種族じゃないか!
見せしめの必要はなさそうだ。
そして全てのマジックバックに水を詰め終わったので、絶望している1番遅かったゴブリンを無視して王国に帰った。
1番遅い奴を殺すって言うのは作業を早くするための冗談のようなものだ。
RTAだぜ? 殺してる時間がもったいない。
さて、毒薬はどのくらい作れたのかな?
「お待ちしておりました勇者様。品物のご用意はできております。どうぞ奥へ」
組合に戻ると、待ってましたとばかりに職員が飛び出してきた。
使者様から勇者様に変わってるし、なにやら興奮した様子だ。
王家の印を持つ勇者って分かったからだろう。
「ここでいい。商品を持ってきてくれ」
ここで言われるままに奥に行ったら、お茶とか世間話に付き合わされるのが目に見えてる。
時間をかけるわけにはいかない。
職員は若干寂しそうな雰囲気になったが、俺の意を汲んで3つのマジックバックを持ってきてくれた。
「1級が1000本、2級が6000本、3級が13000本。計2トン分の麻痺のポーションとなっております」
「......すごいな。まだ1日も経ってないってのに」
「恐縮です」
国中のエリートが集まっているだけあって素晴らしい仕事ぶりだ。
残ったお金をまるごと職員に渡す。
「釣りはいらない」
俺的1度は言ってみたいセリフ第3位を使って満足気に立ち去ろうとしたら、職員が申し訳なさそうに引き止めてきた。
「あの......500金貨足りないのですが......」
俺はRTAの最中だから時間が............え?
「足りない......?」
何も言わず、こくりと頷く職員。
考えてみたら、この国は魔王軍と戦争中、しかも勇者に希望を託すほど追い詰められている。
そんな国にお金があるわけがなかった。
「あの、どうされますか......?」
まさか足りなくなるとは思わなかった。
しかも釣りはいらないとかカッコつけたんだけど、クソ恥ずかしい。
タイムリープし直そうかと真剣に考えて、面倒くさいという結論が出た。
「ハイデンス王につけといてくれ。なんか言ってきたらアイディーって言えば黙るから」
「かしこまりました」




