大人買い
ハイデンス王から金を受け取ったら、もう王に用はない。
次に向かうのは城下町にある錬金術師組合だ。
この城は厄介なことに侵入者を防ぐ仕掛けが大量にある。
その中の1つが階段。
1階から最上階まで繋がっておらず、同じ階の反対側まで移動しないと階段が無いのだ。
RTAをやる上でこの階段の存在は非常に厄介。
仕方がないから窓をぶち破って外から降ります。
どこぞのRPGでも人ん家に土足で踏み込んだ挙句、壺や樽壊して中の物強奪しても怒られないんだし、窓ガラスくらい笑って許してくれるさ。
ほら、ハイデンス王も口の端を釣り上げて笑っているよ。
とても苦々しい顔だね!
城壁を滑り降りて南に100メートルほど行けば錬金術師組合だ。
正面入り口は大通りに面していて、人通りも多いし、人気店だから列もできている。
割り込みをしたら喧嘩になって大幅なタイムロスになる。
だからここは、屋根を伝って組合まで行き、裏口から侵入するのがベスト。
「!? お客様!? 申し訳ありません、そちらは裏口ですので正面入り口へお回りください」
錬金術師組合の職員が申し訳なさそうに話しかけてくる。
そうか、召喚されて速攻でここに来たから俺が勇者だって知らないのか。
勇者が召喚された事自体知らないのかもしれないな。
今までだったら勇者ってことでVIP扱いされてたんだけど......まぁいい。
俺はハイデンス王から善意でもらった、王家の印が刻まれた短剣を袋から取り出して、職員に見せつける。
この短剣は外交の際に使者が持たされるもので、所有者は例外を除き王と同等の発言権が得られるという代物だ。
「......拝見してもよろしいでしょうか?」
先ほどまでの『何だこいつ?』といった雰囲気が掻き消え、うやうやしい態度に変わった。
俺は職員に短剣を渡すと、短剣に刻まれた印が赤く光りだした。
正式に王に下賜された人物以外が触れると赤く光る仕組みだ。
「先ほどのご無礼をお許しください使者様。申し遅れましたが、私の名は――」
「いや、名前はいい。それよりも強力な麻痺毒を作ってくれ」
一礼して名乗ろうとする職員を制止し、本題に入る。
失礼すぎるのはわかってるけど、RTAとはこういうものだ。
元々こういう性格という訳では無い。
ちなみに座右の銘は『毎日がエイプリルフール』です。
「麻痺のポーションでございますね。かしこまりました。
期限と量はどれほどをお考えでしょうか?」
「期限は次に俺が来るまでの約5時間後。量は全錬金術師が作れるありったけの量だ。それと、毒はポーション瓶ではなくマジックバックに直接詰めて渡せ」
「かしこまりました。それでは全作業を一時停止し、ご依頼を遂行いたします」
職員は深々と頭を下げると、店の奥に消えていった。
さすが絶対王政の国だ。
短剣を見せただけなのに、口約束で企業レベルの依頼を受けてくれる。
後はマジックバックの専門店で等級の高いものを買い占めれば、レベリングに必要な買い物は終わりだ。
マジックバックは簡単に言うとドラ●もんの●次元ポケットで、等級によって容量が変わる。
等級は5段階あって、5級で100キロ、4級で500キロ、3級は1トン、2級は3トン、1級ではなんと10トンも入る。
もちろん等級が上がるほど値段も跳ね上がる。
国家予算の半分を資金援助してもらった俺には怖くないけどな。
錬金術師組合に支払う分も含めると結構ギリギリかもしれないけど、魔王倒せば嫌でも景気よくなるからすぐに回収できるだろう。
結果的に3級以上のマジックバックを全て買い占めることができた。
1級5個、2級21個、3級177個、合計290トンのマジックバックを5級のマジックバックにしまって持ち運ぶ。
これで買い物は終わり。
次は町の外の湖に向かう。




