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85話 遅刻

 昨日は雨で黒聖の寮に寄りかかるように生えている木々や葉に朝露が溜まり重さに耐えられなくなった露が弾く。中には弾く者もいればそのまま何の不自由なく落下していくものなどもいて様々で、朝露に光が反射し余計に朝の日差しが眩しく感じられ、その光がカーテンを閉め忘れていた窓から入射し部屋を鮮やかに彩る。


 その光がちょうど寝ているアキトの目元に近づき覆いかぶさるとその光を感じていつもの時間より早く起床してしまう。


「目覚めは良いがもう少し寝たかったなぁー」


 ここは自室なのでアキトは誰の目も気にすることなく独り言を喋れる。

 今日は学園での本格的な授業が始まって二日目、一日目はバルトが休んでいたのであまり異世界らしい授業をしなかった。


 殆どウタゲの愚痴で終わった……


 アキトはベッドから起き上がり、水で顔を濡らし目を覚ます。そのままいつものルーティンを終え汗を流した後に朝食を食べに一階の食堂へ向かう。

 お盆を取り、移動しながら食堂のおばちゃんに皿にご飯をよそってもらい席につく。


 他の人達はまだ寝ているのか食堂で朝ごはんを食べているのはアキトだけだった。ルーティンの時間を合わせてもまだ全体の起床時間にはならないくらい早かった。アキトはそのまま一人でそそくさと朝食を食べ終えて自室に戻る。


「さて、ここからどうするか……」


 早く起きすぎてちょうどみんなが起床する時間に全てを終えてしまった。

 時間的にまだ余裕があり本でも読もうと思ったが朝ごはんを胃に入れ満腹にしたおかげか睡魔が襲ってくる。

 アキトはそれに逆らわずにそのままベッドにダイブする。

 超久しぶりの二度寝だった。


**


 二度寝というのは怖いもので夜に寝た時よりもぐっすり眠ってしまう。アキトは起きる自信があったのだが久しぶりだったせいかその感覚が脳から消えていた。

 

 ベッドに寝っ転がったままアイテムボックスを開き時計を見ると授業開始十分前だった。

 まだ、制服に着替えておらず身だしなみも整えていない。身だしなみはこの際どうでも良いとしても制服には着替えないといけない。

 アキトは急ぎたいがいつも通りのスピードで制服に着替えて逆にゆったりとしたスピードで準備する。

 

 元の世界では寝坊をするということがまずなかったのでこういうことに慣れていない。

 殆ど初めてみたいな経験で急いだ方が良いのかどうするのか感覚がうまく掴めていなかった。


 アキトは制服に着替えながら自分でそう推測する。

 そして、制服に着替え終えてからジワリジワリと今起きている恐ろしい自体の実感が湧いて出てくる。

 

 それから教室までの約三百メートルを全力で走っていた。

 三百メートルといっても真っ直ぐな直線ではないのでおおよそだった。

 着替え五分で取られたので残り五分なんとかギリギリ着く。

 アキトは一先ずは安心といってもいいだろうと思った瞬間ーー


 後ろから肩を組まれる。


「よぉ久しぶりじゃねーか」

「どういうつもりだ」


 肩を組んできた腕を少し嫌悪感を顕にして突き返す。

 クロムは嫌がるアキトを見て半笑いで少し距離を取る。


「なんで走ってんだ?」

「見てわかんないのか。時間ギリギリなんだよ」


 アキトは少し迷惑そうに返すとクロムはふーんと頷く。


「そういえばこの間はすまなかった俺の前方不注意で……」

「あ?ああそんなことあったっけな。まあそんなことはどうでもいい俺と学校まで残り約二百メートル競争しようぜ」


 小学生のようなノリでクロムはアキトを誘う。


「いいけど……」


 アキトは競争などせずとも結構全力で走っている最中なのでただただ鬱陶しいだけだったがつい受けてしまう。


「いいねぇ〜!じゃあゴールは棟の入り口に先にタッチしたやつだ!」


 そのままクロムはいきなり加速する。アキトは置いてかれ一瞬ぼーっとしていたが我にかえり加速する。

 クロムは普通の道を走らずより近い道を選択し壁を駆け上がり木々を跨ぎながら異常な速度で向かっていく。

 アキトはクロムの背中に張り付きともかく離れないよう集中する。 背中に張り付いて最後に抜けばいいという考えだった。


「へぇ〜良いねぇ」


 するとクロムは分かったかのようにさらに加速しアキトは少しずつ息が乱れてくる。勿論何の属性の魔法もスキルも使っていない。

 その直後、クロムは壁の上に駆け上がり一瞬膝を深く曲げ跳躍する。だが、この跳躍が通常の跳躍とは違い約五十メートル以上跳ぶ。


 もうこのまま跳んだ先に本棟があるなのでアキトはこの跳躍中になんとかしないといけない。

 さらにクロムは跳躍する瞬間足の裏で少しだけ身体強化魔法を使用して跳んでいた。この精密な魔法、スキルのコントロールは冴えるものがあるとアキトは関心していたが今はそんな場合では無い。


 すかさず壁を蹴る瞬間に身体強化魔法を発動する。クロムにあの精密な技を見せつけられたのでアキトはさらに精密な跳躍に必要となる筋肉を細胞から強化させ飛び上がる。

 この身体強化魔法は一瞬の効果しかないので落下は落下で使わないといけないので結構面倒臭い魔法だ。


 アキトは少しやりすぎてしまい跳躍というよりかは弧を描くように空を飛んでいるような感覚だった。


 そしてそのままクロムを追い抜かし本棟前に着地する。


「やるなぁ」


 着地はアキト一人かと思っていたが同時にクロムも着地していた。


「追い抜いたはずじゃ……」

「ああ抜かれたぜ。まさか抜かれるとは思わなかったから空中でもう一度跳躍したんだよ」


 アキトはクロムに肩を軽く叩かれそのまま本棟の中へ入っていく。


「うーむ……やるなぁ……」


 まさかハヤト並にやれそうなやつがいるとは思わなかったのでアキトは少し楽しかった。


「やっべそういえば時間!」


 そのまま教室まで階段を駆け上がり到着する。

 勢いよく扉を開けるとすでに皆席に付いていてウタゲもちょうど話出す瞬間だった。


「1秒遅刻だな……」


 遅刻のようです。

 一秒だったので今回は許してくれたが次はないとウタゲに笑顔で警告されたので次やったら確実に死が待っている事をアキトは痛感する。


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