63話 本
アキト、トルス、エルの三人各々自分の部屋の扉の前に立ち、深呼吸をし、学園カードを扉に翳すと扉が開閉する仕組みなので全員利き手にカードを持つ。
最初にエルが扉に学生カードを翳す。
すると、目の前の扉がマンゴーにナイフを入れたような滑らかな動きで扉が開く。扉は両開きになっていてそれが左右にスライドして開閉する仕組みになっている。
そのままエルは歩みを進め部屋に入って行く。それを見てトルスも続いて部屋に入る。二人が入ったのを確認してアキトも扉に学園カードをを翳す。
アキトも二人と同じように扉が開き中へ入る。入った矢先に迎えてくれるのが学園の校章の入った玄関マットとその上に置いてあるスリッパだ。 玄関マットが置いてある所と靴置き場の間には段差があり、この辺りは見慣れた景色だった。
そのまま靴を脱ぎスリッパに履き替え目の前に続く廊下を歩く。
まず、目についたのが二人で寝れるくらいの大きさがあるシングルベッド。シルクのような肌触りの生地で日本にいた時でもアキトはこんなベッドで寝たことはない。
掛け布団の生地も同様で保温性、排熱性両方に長けており、夏と冬両方いける。
アキトはベッドで大の字で仰向けになりながらこの部屋を見渡す。
部屋の大きさはざっと十八帖、一人用と考えると大きい。
今乗っているベッドは角に置いてあり、部屋に入ってすぐ右の壁にクローゼット、左には高さ一メートル以上ある本棚。ベッドの向かいに机と椅子がある。
「は〜い、一旦みんな集合〜」
シェルが三人を招集する。
「一旦説明することがあるので一階に行きましょう〜」
シェルは一階に着くと、その他の説明事項を十五分ほど話した後解散となった。
アキトは解散した後、いつものランニングペースで学園内を走っている。学園内の地図を頭に入れたいのと早朝トレーニングをどこでやるかの選定、そしてもう一つ行きたい場所、魔導書館だ。
魔導書館は図書館のようにこの世界の情報が記された書物等が保存されている場所で、調べ物をするのにぴったりな場所だった。
アキトには魔法やスキル、この世界の地図、転生者など調べたいことは山ほどある。
アキトはシェルに魔導書館の話を聞き、描いてもらった地図を元に走っているが、本当に見つけずらく、三十分程かけやっと魔導書館を発見した。
探し回った挙句、寮の近くにあって探し損だった。
この学園の魔導書館は二つあり、一つはすぐに見つけることが出来たが人が多く、使用率が高いが資料の質はアキトが探しているものとそぐわない。
そしてもう一方が今アキトがいる場所だ。
お化け屋敷という名が付いているくらい人気が全くなく、外観は殆ど自然と一体化していて、洋館のような雰囲気。自然と一体化していてわかりづらいが奥行きがかなりあって見た目より建物が大きい。
アキトは真っ赤に染まった若干錆びている扉の前に立つ。そして寮と同じ要領で魔法陣に学園カードを翳して扉を開ける。錆びているからか扉が開くのに時間がかかる。
扉を抜けた先にすぐ見えるのが二階へ続く階段。そしてその中央にある階段の左右には所狭しと本棚が並んでいる。
二階にもかなりの数本が置かれており外からは想像も出来ないほど清潔感が保たれており、辺りを照らす光は明るすぎず暗すぎずと読書するには最適の場所だった。
だが、この本の数は凄いが建物の奥行きからもっと奥に行けそうなのだが道が無かった。アキトは隠し扉でもあるのかと仕掛けがないか本棚をいじってもみたが何にも反応しない。
約一時間ほど探しているがアキトはなかなかお目当のものが見つからない。地図やスキル、魔法関連のものはたくさんあり逆に迷ったが、転生者についてのものだけはいくら探しても見つかることはなかった。
だが、時間も時間なので今日一旦借りるためにカウンターに向かう。
この学園の魔導書館は無人だ。
カウンターに置かれている魔法陣の描かれた辞書のような本の上に借りたい本を数秒置くだけで貸し出しとなる。返す時も同様の作業をしてその本の横にある箱の中にいれるだけだ。
来た道の茂みを抜けるとアキトの視界に黒い棟が入る。
なぜ棟が色分けされているのか。
これは学園内のクラスの色を示しており、アキト達の配属しているクラスが黒色すなわち黒聖という。
他には白聖、金聖、銀聖がある。
一番成績の良いクラスが白聖ともかく強いやつがいるクラス、二番が金聖どちらかというと戦略や後方支援など幅広く、白聖よりは少し実力が劣るクラス、三番という訳ではないが銀聖は特殊な属性を持った人が配属する。
そして、黒聖はただ単純に実力とかではなくただ単純に平民と変人が集まったクラスだ。
ちなみに二次試験で優勝したバルト、推薦で入った平民の二人だけが今回黒聖クラス以外に入った。バルトは二次試験で優勝しているので一番上の白聖クラスに入っている。
アキトも二次試験で勝ち残っていたので白聖クラスをウタゲから誘われていたが、シロネを見ておく必要もあったため辞退した。
アキトは部屋に戻り、借りてきた本を一旦本棚に置き椅子に座る。
明日から魔導学園生活が始まる。
「風呂でも入るか……」
アキトは借りて来た本を読もうかとも思ったが、軽く走って汗をかいて気持ち悪かったので風呂を選択し、部屋を出る。




