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36.5話 焦り焦り焦り

 ウタゲは焦っていた。


 (クソッ!!私としたことが……例年貴族共が、平民の奴らに何かしらするとは聞いてたが試験官までもが貴族共の手先とはな。私が適当に選らんどいてくれって頼んだのがいけなかった。そのせいで……クソっ!!)


 ウタゲはこの試験の準備段階からもっと注意深くしておけば良かったとずっと同じ事をループしながら考え続ける。


 森の中を全速力で駆け抜けてゴールを目指す。


「たっく、なんで私もゴール目指さなきゃならないんだよ!!」


 叫ぶウタゲの後ろからシェルが追いかけて来て、ウタゲの隣までやってくる。


「ウタゲちゃん落ち着いて、何も全てウタゲちゃんのせいじゃ無い私も見落としてた!」


 そう隣から言われるがウタゲの耳にはまるで入ってこなかった。


「なんでそんなに焦ってるの〜!!」


 ようやく気づいたウタゲがシェルを見ると頬を膨らませ怒っていた。

 シェルは何よりも無視されることが嫌いな寂しがり屋なので、少しの無視でも相当言われる。

 だが、いつもならあとでお詫び何かしないとと考えるウタゲだが、今はそんな事を考えている暇はなかった。


「貴族の人達は多分ゴールをさせたく無いだけでそこまで危害を加えるつもりは……」

「いや、貴族共の方も下手したらやばいかもしれないがそっちよりアイツだ」

「あーウタゲちゃんが言ってたアキトくんだっけ?そんなにやばい子なの?」

「直感だからなんとも言えないが、前一度戦ったことがあってなその時は感じられなかったんだが昨日会った時明らかに強くなっていた」


 シェルは少し考え口を開く。


「前、戦ったのってあの子だったの!うぐぐぅ……そうじゃなくて確かにアキトくんってそんなに強そうに見えなかったよ〜まだあのウタゲちゃんと戦った子の方が強そうだった」

「そうだろうな、だが、私の勘はよく当たるんだ」

「それだけぇ〜絶対ウタゲちゃんの勘違いだよー」


 笑いながらシェルは話を流す。

 ウタゲだってシェルが言う通りにことが進むなら願ったり叶ったりだった。


 念じるようにウタゲはアキトに「やらかすなよ」と唱えていた。


 その瞬間ーー

 突如この辺り一帯の空気が振動し、いきなり体重が増えたようにウタゲ達の進む速度が落ちる。


「な、なんだこれ……」

「ウタゲちゃん大丈夫?」


 体が風邪を引いて出る症状の倦怠感のような感覚に陥り、次の一歩が徐々に重くなっていく。

 それも目的地に近くごとに徐々に徐々に重くなる。


「こりゃやばいな……」


 ウタゲは仕方なく、スキルや魔法を使い自分を強化し進む。



**



「おい……何だこれは!!」


 ウタゲとシェルがゴールに着いた時、異様な光景はそこに広がっていた。

 約百人の受験生と試験官(貴族共の執事)が地に突っ伏し、地面の隙間から僅かに入る酸素を頼りに生きながらえている。辺りからは呻き声やすすり泣く声がまるでスピーカーで音量を上げたように煩く聞こえた。


 ゴールしている生徒も何人かおり、その中に平民の受験者五人の姿も見える。


 ウタゲは何が起きているのか、一切の迷いなくその五人の元へ行く。

 後ろからシェルも着いてくる。


「おい、何があったんだ。これは誰がやった?」

「知らないぜこんなのーーアキトが勝手に一人でこの状態を作り上げたんだ。俺達も見ていることしかできなかったんだ」


 ウタゲに問われバルトは答える。


「魔法なのか?これは」

「分からない、ただ魔法ではないと思う。スキルの方が濃厚だと私は思う」

「魔法じゃないにしろ、何であの子達にかかっているスキルが解けないの〜?」


 シェルの質問に誰一人答えない……否、答えられないのだ。

 ここにいる誰一人知らないのだ。


「そういえば、そのアキトはいないじゃねぇか」

「アキトくんならさっき一人の貴族のスクロールを持ってスタート地点へ行ってしまいました」

「嘘だろ……面倒臭ぇ」


 ウタゲ達は移動し、まじかで生徒達を見る。


 これは、やはり重力のスキル……私に使ったものの別のやつだろう。私の時もそうだったがこのスキル嫌なほど持続時間が長い。だが、私の場合は大体二十分くらいで終わったーーだが、この子達はもう一時間はこの状態だ。

 ウタゲはつい考えてしまうが、今は考えることより、手を動かす方が先なので後にする。


「シェル!!回復を頼む。土は私が何とかどけるから」

「分かった〜」


 下手したら窒息死で死んでいたかもしれないと思うとウタゲは肝を冷やしながら後処理を急いで行う。


「クッソ!!あとで覚えておけよ!」


 今スタート地点にいるであろうアキトに向け、ウタゲは心の中で強く思う。


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