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32.5話 腕の代わり

「ウタゲちゃんいいの〜全員合格にしちゃって……」


 シェルは不安そうにウタゲに問いかける。

 今だにお姫様抱っこ状態だが、ウタゲはもう諦めて運んで貰っている。


「心配すんなって、別に不正に合格させたわけじゃないし、あのじじいに歯向いたいだけだから……」


 そう言うと、またシェルは歩き出す。


「腕は大丈夫なのか?シェル」

「大丈夫だよ〜、明日には治ってるから」


 ウタゲはシェルの右腕を見る。

 シェルの右腕全体からこの辺り一帯の気温が上昇するほどの熱が発せられている。今もシェルの右腕は火傷とは比べ物にならない程燃えている。


 シェルはバルトの発動しようとしたスキルを海水属性スキル<深海の右腕/デップスハンド>で瞬時に押さえ込もうとした。

 このスキルは相手の魔法、スキルに関わらず相手が発動した瞬間その技を海水に覆われた右手で掴むと抑え込むことが出来る。

 効果範囲は相手との距離が五十メートル以内ならどこからでも使え、至近距離でない場合は水の手を飛ばすことでも発動する。


 今回はバルトが発動しようとした火の玉を右手で握り混んだが、威力が強すぎて抑えきれなかった。


 あの小さな火の玉はどれだけの威力があったのか……

 ウタゲは、シェルの腕を見ながら想像してしまい、興味が湧いてしまう。


「ウタゲちゃんはまったく反省していないんだから〜もし私の右腕が無くなってたらどうするつもりだったの」

「冗談きついよシェル。シェルはそんなのダメージの内に入らんだろ」

「これでも痛いんだからね〜」


 シェルは頬を膨らませ珍しく怒っている。

 シェルが頬を膨らませたら真剣に怒っている証拠だ。


**


 試験官室に戻る最中、はっとシェルが何かを思い出したかのように慌て出す。


「あー!!あの子達のスクロールに印押すの忘れてたじゃないウタゲちゃん」

「それなら心配いらん、あいつらにスクロールを渡した時に既に印は付けておいたからな」

「え?じゃあウタゲちゃん最初から合格にするつもりだったの?」


 ぽけーっとしたシェルの顔を小突いてウタゲはお姫様抱っこの状態から抜け出す。


「ばーか、そんなわけあるかよ。私の炎を受けたら印が浮き出るように細工しただけだ」

「なるほど、ウタゲちゃんに炎のスキルや魔法すら使わせないレベルだったら落としてたわけか……」

「そゆこと、ほら行くぞぼーっとしてるなよ試験はまだ続いてるんだからな」

「あぁ〜待ってよ〜ウタゲちゃーん」


 チッ!今回は見逃してやったが次は覚えてろよーあいつ……

 自分の腹を摩りながら、前出会ったアキトのことを思い出し、ウタゲはイラッとする。


 その様子を見て、突然その大きな胸と共にシェルがウタゲの後ろから抱きついて来る。


「おい!そろそろやめんか!」

「えーいいじゃん!!」


 シェルは懲りずにウタゲに抱きつき、二人は今日も業務をこなす。


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