26.5話 試験管という仕事
真っ暗な、木陰でウタゲは一人の女性と試験を見張り終え、就寝時間を迎えた。
「今回の試験どんな感じだ?」
「ぼちぼちって感じかな……あの子達大丈夫なの?」
「まぁなんとかなるだろ、六人で共闘するっぽいからな」
そう言いながらウタゲはその綺麗な真紅の髪を結ぶ。もう夜中だが、試験官は寝ることはできない。この試験中いつ何が起こっても対応できるように万全の状態じゃないといけないのだ。
「ふーん。貴族連中はほっといていいの?」
「はっどうせあいつらは誰かしら受かるんだ。こっちはあの六人の内何人かは絶対受からせないといかんからなーー面倒臭い仕事だ」
「意外と面倒見がいいのね」
「だから仕事だっていってんだろ茶化すな。まぁだからといってこちらができることは何もない、あいつらが自力で受かるしかない。こちらが介入できるのはあからさまな殺しを目的とした行為に及んだ時だけ……」
お酒を飲んでいないのにも関わらずウタゲは顔が少し赤い。
「そうよね。こっちは平民を何人かは入れないといけないと必死になるけど受験生はそんなこと知らないものね。」
「ああ、だから毎年平民からの応募がどんどん減っているんだ。試験を受けたものが色々な仕打ちを受けそれを広めてる……その内誰一人来なくなるだろうな」
ウタゲは真紅の髪をかき上げくっきりと映る星空を見上げる。今日は満天の星空だ。
「明日からは本格的に始まるだろう。ちゃんと準備しとけよ」
「分かってるって。明日は私はウタゲちゃんと一緒にいるからね」
「はぁ……別に構わんがちゃんと仕事はこなせよシェル」
ため息をつくがいつものことなので受けこなす。
明日からはこの森の各地で試験官と生徒との間で試験が始まる。
確かに不安要素はあったがウタゲの横でシェルはどんな生徒が入ってくるか少し楽しみだった。
「あ、あと当日に申し込みに来た平民の子がいたんだけどどうかしらね〜すっごい服装ボロボロだったんだよ〜」
「ふーん……興味ない」
「ウタゲちゃんはほんとそういうの興味ないよねぇ〜この間はびっくりしたよーあんなダメージを受けたウタゲちゃん初めて見たんだから」
「その話はもうするな。思い出すだけでイライラしてくるんだ」
そう言うと目つきが変わる。全身に力が入り、危うく火がつくとこだった。
「ごめんごめん〜」
そう言ってウタゲにシェルは抱きつく。こうやって抱きついてうりうりするのがシェルの癖だ。
「は、離れろー!シェル」
ウタゲはバタバタ暴れるがもう何度もやっているうちにシェルの抱きつきは、簡単には抜け出せないように精度が上がっていた。
だが、これが苛立っている時のウタゲを落ち着かせる方法でもあった。
「おい、シェル」
シェルは、ウタゲに言われはっ!と気づきウタゲを解放する。
「ほらっ仕事はまだあるんだ行くぞ」
そう言うと、ウタゲは森に入って行く。
シェルは、ウタゲの様子を見てあれだけ傷つけた人は誰なのか気になって仕方なかったが、ウタゲにとってはあまり掘り返したくない話題らしく、仕方なくシェルはウタゲをこれまで以上に気にかけようと頭を切り替える。




